サステイナビリティってなんだ?
(この記事は以前、2019年2月8日にNoteの別アカウントに掲載したものです。)
最近よく耳にするようになったSustainable(サステイナブル)やSustainability(サステイナビリティ)という言葉は、「持続可能性」と訳されますが、私としてはあまりしっくり来ない、わかり辛いと思っています。大辞林 第三版では「生物資源(特に森林や水産資源)の長期的に維持可能な利用条件を満たすこと。広義には、自然資源消費や環境汚染が適正に管理され、経済活動や福祉の水準が長期的に維持可能なことをいう。サステイナビリティー」と解説されていますが、まだちょっとわかりにくいかな…。簡単な言葉で言えば「その方法でずっと出来るの?」ということです。
汚染されていないキレイな空気、水、食料を得られる権利は、私たち人間の生命の維持、また健康的な生活に欠かせない基本的な人権です。しかし、世界では数多くの人々が、工業化などがもたらした公害などによる大気汚染や水質汚染に脅やかされていたり、安全な飲料水をも入手し辛い環境での生活を強いられています。世界には水汲みのために毎日数十キロの距離を往復する人もいるかも知れませんし、大気汚染の中で微粒子も防ぐマスクをしながら生活する人もいるかと思います。しかしそれは「ずっと継続できる(生活)方法」なのでしょうか?
食に関する所では、世界の自然環境は食糧生産に使用される化学肥料や農薬によって汚染され、私たちの身体も農薬や化学肥料などの薬剤のみならず、商業化や大量生産、長期保存を可能にするための保存料、添加物、安定剤などによる影響を少なからず受けています。また環境汚染や温室効果ガスに起因する異常気象や干ばつも、農産物の生育に影響し、飢餓や食料不足を引き起こす原因になることもあります。日本で販売されている食材でも、広大な中国やアメリカの農場で大量生産された農産物は、世界中の市場で比較的安価で販売されていますが、環境への影響を考慮せず多くの農薬を使っている場合が多く、環境のみならず私達の身体への健康被害をももたらさないとは言い切れません。これもまた「ずっと継続できる方法」ではないのかも知れません。
市場主義のデマンドの偏りから規格外の農産物は新鮮さや味が同じでも廃棄される事が多く、結果として消費されない食品の生産や流通にかかる資源が無駄になるだけではなく、廃棄の段階で再度環境問題に発展すると言った問題もあります。水産資源は年々減少傾向にあったり、海洋汚染による海のプラスチックの量は2050年までに魚の量を超えるとの試算が発表されていたり。アメリカでは、食卓に並ぶ夕食の材料のほとんどが2400キロ以上の輸送距離を経てテーブルに届いているという統計もあり、最近ではアメリカで、カリフォルニア産のローメインレタスでO157が発生する事件があり、アメリカ西海岸ではレタスの入ったサンドイッチやサラダなどが店舗から姿を消しましたが、これも一箇所集中でレタス栽培をしているから起きた事件かと思います。また例えば私の住むシアトルのあるワシントン州は、全米4〜5位の小麦の生産地ですが、90%以上の小麦が日本や韓国などのアジア圏各国に輸出されるため、私たちワシントン州住民が地元産の小麦をスーパーで見かける事はほぼありません。アメリカから日本への長期に渡る船旅の途中で発生する腐敗やカビから小麦を守るために、輸出される麦は防腐剤まみれのことも。利便性や値段でこのような私たちの健康や自然環境を脅かすかも知れない現在の 食糧システム(フードシステム)は、本当に「ずっと安定的に食糧を供給出来る」方法なのでしょうか?長距離輸送をされてきた食品を、地元産の食品に比べ安価で購入できるという仕組みは、大量生産・大量購入が成せる利点(?)かも知れませんが、これも本当に「ずっと継続できる方法」なのでしょうか?
多くの人々が食物の安全性を気にかけ、健康にも気を使っているものの、市場に溢れる食品を正確に判断するための情報は、広く知られてはいません。今の時代に”ヘルスフード”と呼ばれる加工食品の多くを、私たちの祖父母の時代の人々は食べ物とみなしたのでしょうか?一体何が変わったのでしょうか? 本当に便利になったのでしょうか?健康食品を食べながら身体を維持する事は、本当に「ずっと継続できる方法」なのでしょうか?
もう少しわかりやすい説明をすると、お肉。美味しいお肉は私も私の家族も大好きですが、しかし世界の温室効果ガスの約51%が畜産が原因と言われており、温室効果ガスに関しては車の排気ガスや、エアコン、冷蔵庫が問題とされていますが、畜産による温室効果ガスの問題はあまり知られていません。農業や畜産、精肉を起因とする環境への影響は非常に大きく、石油系燃料の使用や冷却設備に使われるエネルギーによる温室効果ガスの問題、畜産の副産物であるメタンの問題(*1)は、地球温暖化や気象変動に大きな影響を与えていると言われています。また、お肉の食べ過ぎは、成人病や生活習慣病に繋がるとも言われていますね。お肉を食べることが不健康であるとか、環境破壊に繋がるので、肉食を辞めるべきだと言っている訳ではありませんが、きちんと将来の地球環境の事や、身体の事を考えずにお肉を食べ続ける事は、人によっては「ずっと継続できる方法」ではないのかも知れません。
ではどのようにお肉を食べるのが「ずっと継続できる方法」なのか?という課題を、みなさんと一緒に考えて行きたいというのが私達のプロジェクトです。私の家族は多分、絶対にベジタリアン(菜食主義)にはなれません。よって極端にベジタリアンになることは、逆に「ずっと出来ること」ではないのです。ではどのようにお肉を食べることがサステイナブル=「ずっと継続できる方法」なのか?➖私達のプロジェクト "The Sustainable Collective"とオリジナルブランド"Local Food Works"は、そんな「地球と身体と心に優しいキッチン生活」を提案したいという理想の元に発足しました。材料の仕入れはもちろん、原材料、製造方法、パッケージング、販売方法、廃棄方法など、様々な面から「地球と身体と心に優しく、ずっと継続できる方法」をテーマに食と生活に関するご提案をして行きたいと思っています。
ちょっと長くて、情報量が多いかも知れませんが、これから徐々に詳しくお話して行きたいと思います。今後ともお見知りおきを。ご質問などはEメール info@thesustainablecollective.org またはFacebookページ https://www.facebook.com/localfoodSEA/ までお気軽にどうぞ。環境と身体と心の健康にご興味のある方はみなさん同じ志のコミュニティーメンバー!一緒に学んで行きましょう。(麻子)
(*1) メタンガスは温室効果ガスとして知られている二酸化炭素(CO2)と比べて約25倍の温室効果があると言われている。全国地球温暖化防止活動推進センター ”地球温暖化係数(GWP;Global Warming Potential)について知りたい” (http://www.jccca.org/faq/faq04_05.html)
(*2) 「2050年までに魚の量を超える(重量ベース)との試算が、2016年の世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)で示された」ナショナル ジオグラフィック ”2050年には海のプラスチックの量が魚を超える!?”(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/18/053000010/053000002/)
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