エンタメ的ボデぃ〜その3

エンタメと身体運動の関係性についてあるいは、エンタメに認める身体の動きの面白さについて語るのが、この「エンタメ的ボデぃ」です。

今回は、ちょっとエンタメとは違うかなぁ?というお話しをしてみようと思います。

世界政治史上世紀の初対面!と全世界の注目を浴びた米朝首脳会談のお話しです。

半ば政治ショーの部分は否めませんが、想像しづらい二人の指導者、トランプ米大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長の会合は、世界の平和を期待したい多くの人々にとって、それなりに意義のある1日だったとも思います。

さて、
政治的な意義については今後の動向をじっくり検証していくとして、

身体運動、エンタメ的ボデぃワークに注目している私にとっては、全然別のところに着目したいと思います。

トップダウンで物事を決めていくタイプの両者にとって、いろいろな場面でどちらが優位に立つかという心理的な駆け引きが様々な動作に現れている、というのが着目点です。

両者が歩み寄るそのテンポ、歩くテンポや握手をした時の手の引き具合。

もともとトランプ大統領は、握手する際に一旦強く自分側に引き込む方法をよく取ります。

自分の優位性を表す絶好の場面なんですね、これが。

カナダのトルドー首相だったでしょうか?これを上手くかわして引き込まれる前に自分が体自体を寄せて、逆に上手く対応していたのを思い出します。

今回もまたトランプ大統領は何度か金委員長との握手で、この引き込み手法を取っています。

金委員長もすぐにその手を自分側に戻して対応していましたね。

年齢からすると親子以上の年の差なので、必ずしもトランプ大統領にしてやられたという感じはしませんでしたし、金委員長もなかなか簡単にはしてやられないぞ、という意志をそこに感じました。

二人が会場から出て歩きながら談笑している場面では、どちらも悠然とした態度を取るが故の、ゆったりとした歩き方をしています。

ここで面白いのは、二人の体格差です。もちろん二人ともガッチリとした体格で、やや金委員長は太りすぎかなという感じですが、背の高さがかなり違います。

ということは、
腕や脚の長さも異なるわけで、同じテンポで歩くということは通常ないことになります。厳密に言えばですが。

しかし、
歩いているところを見ていると、自然と二人のテンポ(周期と言ってもいいでしょう)がピッタリと会う場面が何度か生じます。むしろ合致した時間の方が長いのではないでしょうか。

これは面白い現象で、このシリーズの2回目で書いたように、腕や脚の長さが異なるということは、もともと固有の振動数が違うので、同じ動きになるということ自体原理的には考えづらいのですが、

実は様々な同期現象というのが報告されています。

詳しくは、「非線形科学 同期する世界」蔵本由紀・著、集英社新書、2014. という図書をご覧になってください。

ここには、吊り橋を渡っている多くの人々がそれぞれ同期した歩きになってしまい、吊り橋が想像以上に大きく揺れてしまった現象や、

蛍の発光やカエルの鳴き声が、ある周期に同期していく(あるいはきっちり半周期遅れて発せられる)現象、ロウソクの炎が同期してとても大きな炎になっていく現象などが紹介されています。

皆さんも自分と誰かが歩いていると、二人が自然と同じ周期で歩いてしまう、といったことを経験されたことがあるのではないかと思います。

トランプ大統領とキム委員長も、この同期現象が体格の異なる二人の歩調を合わせる結果になったのではないかと考えられます。

世界観や平和への取り組みもこのような同期現象で、現実的に実質的な平和が達成されればいいなと思いながら、二人の歩調をテレビで眺めていた1日でした。

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