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光野朝風
2017年12月9日 09:00
中瀬が病室に姿を現すと付き添っていた母親は瞳を潤ませた。 六年ほど、ろくに実家と連絡を取っていなかっただけに、母親も帰ってくるとは思わず少し驚いたように目を見開いたがベッドに眠る父親に目をやる。「容態」 母親への言葉は、あまりにもぶっきらぼうだった。「父ちゃん、医者嫌いだろ? だからずっと体痛いの黙ってたんだよ。大腸ガンが体中に転移していて脳にまで転移してるって。もう手の施しようがないっ