やること3、父と暮らす
血便が出た。
もしかしたら、バリウム出すのに力んで切れ痔になっただけかも。
検査結果来る前に肛門科行くか…いや、もう少し材料集まってからにしよう。
5:48。父は起きてお茶をしばいてた。
「お父さんおはよう」
「おはよう。お茶いる?」
「うん、ありがとう。」
天気雨がしとしと降る音をBGMに、
お茶をすする音、新聞のパラパラめくれる音が縁側に落ちる。
子どもの頃はこのBGMに公文の宿題を解く鉛筆の音が混じっていた。
これが1番落ち着く。
退去希望の連絡を管理会社に伝えると
「同じ建物ですし、お時間よろしければ事務所で書類書いていかれます?」
ありがたい。4月上旬のタイミングだったのもありゴールデンウィーク入る直前退去、家賃は4月分のみで良しになった。
元々家具はそんなに持たない方だったのと、コインランドリー併設物件だったのもあり、冷蔵庫さえ運べれば引っ越しの山場は越える。
レンタカーではなく父の車を借り、すべて実家に持ってきた。
「これで全部?」
「ううん、一応、寝袋と1泊分の宿泊セットを残してきた。」
「そうか。ずいぶん少ないな。」
「コートとか羽毛布団クリーニングに出してるから」
マーケティング本や作業効率系、実用書数冊を収めるカラーボックスは置いていたが、お気に入りの数冊だけ手元に置く生活だった。
この本の処遇はしばらく保留にしよう。
それ以外はびっくりするくらいすんなり引っ越しできた。
「お昼は引っ越しそばでも食べに行くか。鴨南蛮そばが美味しい店ができたんだ。」
「引っ越しにカモがネギ背負ってきたそば…」
「そうなっちゃうのか…他にも季節の山菜そばも美味しいよ。」
「父のおすすめだったら基本から順番に味わいたいな。」
父の奢りだったが、かけそばにした。
本音を言えば、できるだけ内臓に負担をかけたくなかった。
「家事分担どうしたい?私朝起きて掃除するのが日課だったんだけど。」
「自由でいいよ。ひとつ屋根の下で同居してるだけだからね。」
お互い不干渉で自由気ままに過ごすことになった。
「ルームシェアだ。時々美味しいものとか、面白かった本とか共有するくらいはするよ。」
そう言うとさっそく本屋大賞の本を渡してきた。
私の対人関係や距離の取り方は父由来が多い。
父のねらいとしては、本の感想を話す場を作ることで、私とコミュニケーションをとるということだろう。
いきなりプライベートを聞く方法のは手っ取り早いが壁も作りやすい。それでは尋問になってしまう。一方で共通の話題は帰属意識や仲間意識が生まれやすい。それが敵でも味方でも。
だから本はとても良い潤滑油になる。内容を良く言おうが悪く言おうが、書物は私たちに反応しない。どこかに記録しない限り誰も傷つかない。
明日の朝から電車で通勤することになるので、帰りに駅に寄って3ヶ月定期を購入した。
本屋大賞の本は電車に揺られながら読むことにした。
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