やること2、祝福せよ
結局実家に着いたのは夕方6時で真っ暗だった。
「おかえり、何かあったの?」
「私の誕生日祝って欲しくて帰ってきた。お父さんの好きなモンブランにしたよ」
祝福してほしいのは本音だったのかもしれない。
思えば祝福どころか、誕生日だったのに散々だった。
「何歳になったんだっけ?」
「34かな。」
「そっか。じゃあ刺身で一杯やるか。」
語呂合わせで刺身になった。
31って言ってたらサーティワン祭りだったかもしれないのか。
35だったらなんだろう。サイコロステーキかな。
私のためにとっておいてくれたかのように
キンキンに冷えた精米歩合34%の大吟醸が振舞われた。
洋梨のような上品な香り。スッと淡雪のように口の中に溶けるような飲みごこちに感動した。意外とケーキとの相性が良かった。
真鯛のダシ〆、タコのカルパッチョ、ヒラメ、塩漬けにした鯨の脂身、
ハタハタ寿司が並んだ。
こういうお祝いも悪くない。
「お父さんさ、サトシって覚えてる?」
「ああ、なんか薄気味悪いやつだっけ?」
「昨日人間ドック行った病院に勤めててさ。その時に書いた問診票から私の電話番号とか住所とか入手してて、今朝、最寄駅からストーカーされた。」
「なんか本当に気持ち悪い奴になったな。警察に被害届出したか?」
「その場で鉄道警察に突き出して、届け出てきた。」
「そっか。ご苦労だったね。しばらく実家から会社通って良いからね。」
こうなると話が早い。さっそく郵便局に転送依頼をした。
実家と職場は遠いものの、片道1時間電車に揺られるだけで着く。
個室はいくつかあるので、父と2人でシェアハウスも全く苦ではなかった。
明日レンタカーを借りて部屋にまとめた段ボールを回収し、管理会社に退去申請をしよう。
3連休だから最後の祝日はのんびり休養日に充てよう。
久々の実家に泊まった夜、イカロスの夢に異変が起きた。
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