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第18章 大学受験の総合型選抜の拡大と大学に行く意味を考える


2025年度の入試から、東洋大学が「学校推薦入試 基礎学力テスト型」を全学部に導入したことは、大きな注目を集めています。

この方式は、基礎学力を問う2教科のテストに加え、学校推薦を条件とした総合型選抜です。こうした試みは、受験生に柔軟な選択肢を提供する一方で、日本全体の大学入試のあり方に対する議論を深めるきっかけにもなっています。



一方で、AIの台頭や社会の急速な変化により、私は「大学に行く意味」自体を問い直すべき時期が来ていると感じます。


特に、中学受験を考える家庭にとって、大学受験の動向は非常に重要なテーマです。本章では、総合型選抜の拡大についてのメリットとデメリットを整理し、これからの大学教育や人材育成の方向性について考えてみます。





1.総合型選抜が拡大する背景

総合型選抜(旧AO入試)は、学力試験だけでなく、面接や小論文、課外活動の実績を基に、受験生の多面的な能力を評価する入試方式です。2023年度には、総合型選抜が大学全体の入学定員の約15%を占めるまでに増加しました。この背景には次のような理由があります。

① 多様な人材の確保

大学が画一的な学力試験だけでは測れない「個性」や「適性」を重視し、多様な背景を持つ学生を受け入れようとしています。


②少子化による学生確保の必要性

少子化が進む中、大学側は幅広い受験生に門戸を開き、志願者を確保する戦略を取るようになっています。例えば、2024年度の大学入試において、志願者が前年比で大幅に増加した大学もありました。このような動きは、総合型選抜や推薦型入試の導入による効果といえます。


③社会の変化への対応

現代の社会で求められるのは、単なる知識の詰め込みではなく、創造性やコミュニケーション能力、問題解決能力です。これを育むためには、大学入試自体が変わる必要があると考えられています。例えば、海外の大学ではポートフォリオやリーダーシップ経験が入試の重要な評価基準とされており、日本でもこの流れが進むと予想されます。



2.総合型選抜のメリット

①多様な才能の発見

課外活動やリーダーシップ経験が評価されるため、学力試験だけでは評価しにくい能力を持つ学生にチャンスが広がります。例えば、スポーツや芸術で卓越した実績を持つ学生が、得意分野を活かして進学できる道が開かれます。


②受験生の精神的負担を軽減

総合型選抜は一般選抜よりも早い時期に合否が判明するため、受験生はその後の準備を効率的に進めることができます。面接や自己推薦文を通じて、自分自身を深く振り返る機会が得られるのも大きな利点です。


③社会の多様性を反映

企業や社会が求める「多様な価値観を持つ人材」を育てる基盤となります。特に、AI時代にはチームで問題解決を行う能力が重要視されるため、個々の学生が持つ多様性が強みになります。


3.総合型選抜のデメリットと懸念

①学力不足による大学での苦労

総合型選抜では基礎学力が十分でない場合があり、入学後の授業についていけない学生も見受けられます。この問題は、特に専門性の高い理系や医療系学部で顕著です。


②情報格差の拡大

課外活動や自己推薦文のノウハウは、進学校や塾に通う生徒が得やすいため、環境に恵まれない受験生に不利となる場合があります。これが結果的に受験格差の一因となる可能性があります。


4.AI時代における大学の意義を考える

①AIでは代替できない力を磨く

創造性や人間関係を構築する力、価値観の形成といった、人間ならではの能力は、大学教育が培うべき重要な資質です。これらはAIには真似できない「人間らしさ」として、社会において価値を持ち続けます。


②人材育成の「多層化」

一部の高度専門職は少数のエリートによって先導される一方、多くの人々が新しい社会の中で柔軟に適応する力を求められるでしょう。大学はこの「多層化」に対応する学びを提供する場として進化する必要があります。


③学びの目的を問い直す

「大学卒業」が目的化してしまうのではなく、学生一人ひとりが大学で何を学び、どのように成長するかを重視するべきです。大学は「学問を追究する場」であると同時に、「自分を知り、未来を描く場」であるべきです。


5.中学受験ご家庭へのメッセージ

中学受験を選ぶ家庭の多くは、その先の高校・大学進学を視野に入れています。しかし、大学入試のあり方や、これからの社会の変化を早い段階で知っておくことは非常に重要です。


子どもたちが進む社会では、学力だけでなく、創造性や柔軟性、倫理観といった「人間力」がより一層求められるでしょう。


今後の教育改革や入試制度の動向を注視しながら、早い段階から「大学で何を学ぶべきか」を親子で考えていくことが大切だと私は思います。


6.まとめ

総合型選抜の拡大は、受験生に多様な進路の可能性を提供すると同時に、学力評価の重要性を見直すきっかけにもなっています。そして、AIが進化する社会では、「大学に行く意味」や「大学で学ぶべきこと」を再定義することが求められます。


私たちは、目先の結果だけでなく、子どもたちの未来を見据えて教育を考えるべき時代にいます。これからの大学入試や社会の変化を理解しながら、親子で一緒に進むべき道を探っていきましょう。



朝ジュクの管理人



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