ラテンの風に吹かれて
古代には地中海周辺全域を制し、最強の帝国であったローマ。
ローマといえばこの人、カエサル。
ローマを建設した主要民族のひとつであるラテン人の言語から公用語がラテン語となり、現在もイタリア、スペイン、ポルトガルは民族的言語的にラテン系と呼ばれる。
ざっくりラテンの特徴は、
黒髪で毛深く濃い顔立ち。
長い昼休憩(シエスタ)をとる風習があり、必要な時に店が営業しておらず不便。
ヨーロッパなら英語が通じると思われがちだが、英語はラテン語とは系統が異なるゲルマン系なので、ラテン界では英語の通用度は高くなく、特に田舎の方だとまったく英語を話せない人も多い。
この辺のヨーロッパより、イギリス植民地であったアフリカ南部や東部の方がよっぽど英語が通じる。
ギリシャが東方に正教会を広めたのに対して、ローマは西方にカトリックという社会構造を確立した。
歴史を見れば、宗教が国をまとめるための道具であることがよくわかる。
みんなで同じ神を信じて、みんなで同じ教えを守る。
それによって国に結束感が生まれる。
権力者が民衆をコントロールするのに宗教を利用しない手はない。
ローマカトリックはまさに絶対的権威そのものであった。
エジプトで見たオベリスクがこんなところに。
世界に現存するオベリスクは30本で、うち13本がローマにあり、エジプトには7本しか残っていない。
オベリスクはワンピースの巨大な石柱で、古代エジプトの太陽信仰の象徴であったが、ローマ帝国によるエジプト侵攻で戦利品として持ち去られ、十字架まで突き刺されて、現在もその略奪の歴史が街のあちこちで見られる。
アートの街バルセロナでピカソ美術館へ。
僕は美術に関してたいした感性もないし知識もないが、ピカソの絵には理屈抜きでグイグイ引き込まれた。
どんな魔法を使っているのかわからない、こういう力を持つ絵というものが存在する。
残念ながら館内は撮影禁止。
教会でスパニッシュギターコンサート。
マイク無し、生音とは思えない鳴り。
卓越したギター、ユーモアあふれるパフォーマンス、実に楽しめた。
8~15世紀にイスラムに支配されたイベリア半島。
悲願のレコンキスタを果たしてスペイン王国として独立。
まもなくしてコロンブスがアメリカ大陸を発見し(コロンブスはイタリア人だがスペイン王室に仕えた)、大航海時代の火蓋が切られた。
スペインは中南米を主な植民地とし、北アフリカからフランス、ベルギー、オランダまでも領有し、フィリピンやグアムなどの太平洋の島々まで股にかけ、「太陽の没することなき帝国」として君臨した。
しかしその栄華は長くは続かず、16世紀にイギリスがスペインの無敵艦隊を破ったことから、世界はイギリスが覇権を握る時代となっていった。
ジブラルタル。
ジブラルタルは、スペインの中のイギリス。
18世紀にイギリスがこのイベリア半島の南東端を占領して以来300年、スペインに返還されることなく現在もイギリス領となっている。
ジブラルタルの面積はわずか6.5k㎡。
イギリスがこの狭小な土地をあくまで手放さないのは、地中海の出入口を監視する上できわめて重要な軍事的要衝だからだ。
他ならぬオフショアバランサーのイギリスならなおさらだ。
海の向こうにモロッコ、アフリカ大陸が見える。
地中海を通過する船はすべてここでチェックできるというわけだ。
一方でスペインは、モロッコ北東部にあるセウタを領有している。
セウタは、アフリカの中のヨーロッパ。
ヨーロッパ側の要衝がジブラルタルなら、アフリカ側の要衝がセウタ。
スペインはイギリスに対してジブラルタル返還を求めているが、それならセウタをモロッコに返還すべきだと言われる。
世界中どこでも、領土問題はダブルスタンダートもお構いなしのエゴのぶつけ合いだ。
リスボン。
大航海時代、スペインよりも早く先陣を切って海外進出したのがポルトガルだった。
ディアスの喜望峰到達、ヴァスコ・ダ・ガマのインド洋航路開拓、カブラルのブラジル発見、マゼランの世界一周、さらに東南アジアや中国のマカオまで手を伸ばし、香辛料貿易によって巨万の富を得て、未曾有の繁栄を遂げた。
当時のリスボンは世界最大級の都市であったという。
日本に初のヨーロッパ人としてポルトガル人が到来したのもこの時代。
フランシスコ・ザビエル(スペイン生まれのバスク人だがポルトガル王の命令でやってきた)によって日本にキリスト教が布教され、火縄銃が伝わり、100年にわたって南蛮貿易が行われた。
この時代にポルトガルから日本に西洋文化がもたらされ、豊臣秀吉や織田信長もその影響を受け、南蛮文化が大いに流行した。
ポルトガル語が由来となっている言葉の例として、カッパ、ボタン、テンプラ、カボチャ、パン、カステラ、バッテラ、コンペイトウ、タバコ、シャボン、ジョウロ、ブランコ、ミイラ、カルタ、ピンキリ、などがある。
ポルトガル人と話すと必ずと言っていいほど、日本語の「ありがとう」とポルトガル語の「obrigado」は似てるね、という話題を振られる。
似てるかもしれないけど、そこまで一致感はない。
現在のポルトガルはヨーロッパでも存在感の薄い小国。
その美しい街並みにはかつての栄華が香るもののすでに古く寂れており、ゆったりとした時の流れに妙な安心感に包まれる。
栄枯盛衰。
ポルトガルはエッグタルトの発祥地。
これがもうおいしくて、20個一気食い。
これは1パック4個で€1.35、1個40円ぐらい。
ここではパステル・デ・ナタと呼ばれる。
アジアでは、ポルトガルの植民地であったマカオがこれをエッグタルトという名で広めた。
ユーラシア大陸最西端ロカ岬。
西の果てで黄昏。
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