見出し画像

牛がみていたはずの夢

 帰りの混み電車の中で凝った肩甲骨あたりを、電車の手すりと程よい振動を使ってマッサージしている。絶対に違うんだけど、なんだかいかがわしいことをしているみたいな背徳感がある。
 仕事が疲れた。どうやら姿勢が悪いらしい。あまりデスクワーク向きの脊髄を持っていないようだ。

◯平常運転中

 ニュートラルに戻って来た感覚がある。よかれ悪しかれ。
 なんでもすぐにこなしてしまえそうなヤル気のワシワシは無くなってしまったが、感情の起伏が落ち着き、地に足がついている。このまま下落しつづけないといいのだが。

 やるべきことには明確に締切がついている。これはありがたいことだと思う。あと1週間で書いてしまいたいモノがある。あと2週間で推敲を終えて提出すべきモノがある。それらが終わったら次の締切は7月末で、それまでにZINEとステッカーを作れるだけ作りたいし、ギターで練習したい曲がある。

 どれくらいこなせるだろうか。

 明後日のお休みには、食料品の買い出しがてらデカスーパーのフードコートでミタラシとコーヒーを食べながら作業をしよう。そのあと恋人の家に行って、借りていた榎本俊二を返して、まんが道を借りに行くのだ。

 榎本俊二は絵が上手い。昔の分裂的な漫画しか読んだことがないから知らなかった。

 恋人が初夏用のプレイリストを作ってくれた。とても趣味がいい。みなさんに共有して、恋人の趣味の良さを自慢したい気持ちもあるが、これは私だけのものだ。
 毎日、祝福みたいな呪いをかけている気がする。幸せを願っている。

◯位置エナジー

 あした仕事が終わったらミニシアターへ映画を観に行く。ずっと観たかった映画なのだが、ぐずぐずしているうちに馴染みの映画館では公開が終わってしまった。

 なんとなく劇場情報を見ていたら、まだ名古屋でやっているではないか。しかも職場から徒歩10分のところで。

 見逃してしまって配信で観なきゃなと思っていたから、ありがたい。都会に住んでいると色々と潤いがある。こんなところで都会なんて、と、ここら辺が出身の人は笑うだろうが、だったら人生一回ぶん、越前海岸沿いに住んでみたらいい。この、程よい都会のありがたさが身に沁みるだろう。

 だったら私も人生一回ぶん、23区内に住んでみなさいよと怒られてしまうかな。もういい歳だ。もういい歳なのに、あまり色んなところに住んだ事がない。

◯旅夢(たびーむ)

 とはいえずっと引っ越しがしたい。職場に、喋ると元気がなくなるタイプの人間が何人かいる。そういう人と喋る度に辞めたらァと思うのだけど、まあ実行に移す気力も新しいことをやり直す元気もなく、日々ぼんやり過ごしている。
 19時の特別快速を6両編成にしたウツケモノは出て来なさい。乗ってみなさい、これに。インドかよ、ここは。名古屋だよ。デリーじゃないのよ。

 疲れた。とにかく疲れた。職にあぶれていた頃は感じなかった疲労感。職にあぶれていると、別の心がヘトヘトに疲れる。この溝は分かち難いな、と思う。
 スーパーカブに乗って、キャンプ用具を積んで、旅に出たい。7月は1週間くらい休みを取って、長崎の五島列島に行こうと思っている。それまで何とか、表面張力で耐えなくては。

今月のスパカレ

◯金欠

 物持ちがいいタイプだ。高校生くらいのときから使っているものがたくさんある。フェルラーベンのカンケンバッグは、13年使うと穴が開く。まだ使えるんだから立派だ。こいつは自転車で10分くらいの激安スーパーに買い物へ行くときに背負っていく。いつか破けて道に米袋をぶちまけるつもりだ。

 中学生のときにサンタさんにもらった電動コーヒーミルも、まだまだスパイスミルとして活躍している。

 古着屋で買ったアディダスのジャージはもはやボロ布だ。縫えばまだ着られるかもしれないが、ソーイングセットを買ってくるのが面倒くさい。もういい加減新しいジャージを買った方がいい。買うか。

 カネがあんまりないのだ。そのくせ、ほしいものがほしいの、と思う。極めてラカン的示唆に富み。

 チャれえスピーカーでも買ったろうかと思ったら90万円とかでスマホ投げた。馬鹿。300年使えるわ。

◯First cow

 ファースト・カウを観てきた。滑り込みだ。年始あたりから観なきゃ観なきゃとは思っていたのだ。映画館で観られてよかった。
 おもしろかった…………………………。

 変な角度からぶっすり柔らかいところを突かれた感じがある。

 私はもともと映画をあまり観るタイプではないので、「映画」というコンテクストで映画を語ることはできない。

 ケリー・ライカートはとても好きだが、真に「よさ」を享受できているのかというと、おそらくまったくそうではないのだろうな。私は崇高な「思想」が言えない。非常に「ツーリスト」なのだ、映画に対して。真摯に向き合っていない。観光客のガヤガヤをやっている。

 『リバー・オブ・グラス』を観た時は「全然うまくいかない『水曜どうでしょう』じゃん(笑)」って思ったし、「道の駅の土産屋でオモチャのピストル構えてリバー・オブ・グラスごっこしたいな〜」と呑気に夢想した。ミーハーだから、映画のシーンは真似したくなる。You talkin’ to me?
 『オールド・ジョイ』を観たときはもっとシンプルで、「いや、めちゃめちゃ素敵な『水曜どうでしょう』じゃん(笑)」って、思った。語彙や文脈に乏しいと、残念な感想しか言えないという良い例だ。

 それらを踏まえて趣のないことを言うが、『ファースト・カウ』は、超素敵で画面構成のイカした『イチジョウ』だった。

 『イチジョウ』、大好きなんですよ。スピンオフ作品とは思えない情緒がある。なんだろうな、あの趣、あの輝き。
 あの類の「よさ」に直面すると、途端に私は、うまく喋れなくなってしまう。何を言っても少し違うような気がする。いつかうまく喋れるようになるといいのだけれど。
 とにかく、電子書籍で持っているけど、紙の本で買い直したいと思っている。それくらい好きなのだ。

 つまり、そういうことです。『ファースト・カウ』、たまんないぜ。絶対にもう一回見たい。DVDを買おうと思う。

 「少し休もう。私がついてるぜ」ごっこ、したい。しよう。

◯盗んだミルクでビスケット

 『ファースト・カウ』が素敵すぎたので、バターミルクビスケットを作った。揚げドーナツじゃないんかい、という話ではあるんだけど、揚げ物って片付けが面倒くさいし、バターミルクビスケットのほうがおいしいから、ね。

 トッピングに、ハチミツとシナモン。お代は銀貨5枚か同等の価値を。ペアリングするのは中国茶。

 最高!

 大袋の強力粉・薄力粉、それからベーキングパウダーを買った。これからもペストリーを作るという決意表明だ。実家にいたころはよく作っていたけど、まさかこの狭いキッチンの1Kでもやり始めるようになるとはね。引っ越してきたばかりの私は夢にも思うまい。ありがとう、ファースト・カウ。

 次はキッシュを焼こう。


◯メーシ

 やっと名刺ができた。半年くらいずっと、そろそろデザインしなくてはなと背中を突っつかれていたのだが、やっとだ、やっとできた。フィルム・ネガからインスピレーションを得て、それっぽくしたかったのだが、割とうまくいった。お気に入りだ。

 印刷の出方が未知数だったので一番お気に入りの写真を使わなかったのだが、こんなにくっきり出るのならばそっちを使えば良かったな。次作る時はデザインそのままに別の写真を使おう。

 ビスケット然り名刺然り、何かを作っているときが一番楽しい。

 素材にこだわった上に小ロットで刷ったので、原価がとんでもない。あんまり考えてなかった。しまった。

◯今日の音楽

 来週は東京へ行く。ボードゲーム会に参加して、写真展を見て、友達に会う。高円寺の本屋へ行き、吉祥寺でコーヒー豆を買おう。楽しみだ。

いいなと思ったら応援しよう!