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30.ギャップと逆手

メルトは、アクアからの助言で刀を使ったパフォーマンスを通じて、観客に対して「完全に下手とナメてた役者が、いきなりめちゃくちゃ凄い事始めたら」というギャップを利用して周りを驚かせました。

推しの子57話より
推しの子57話より
推しの子57話より

ギャップというものは、エンタメに関わらず大きな注目を集めたり、変化を生じさせます。ギャップ萌えという言葉もあるくらい、ギャップをうまく利用することは色んなところで行われています。

たとえば、漫画でよく出てくる例としては「素行不良な少年と思っていたら、意外と優しい一面があった」とか、「おとなしいと思われていた子が、意外と積極的な行動に出た」など、意外性が良い結果をもたらすということが描かれています。

もちろん意外性/ギャップはポジティヴにだけでなく、ネガティヴにも作用します。「素敵な人だと思っていたのに、店員さんへの態度が悪くて一気に冷めた」「勤勉で真面目な人だと思っていたのに、犯罪を犯して捕まった」などが挙げられます。

「どちらの側面が本当のその人のことを表しているか」というよりも、実は人には色んな側面があり、その中で部分的にしかその人のことを見れていなかったに過ぎません。人は他人のことを認識する際に、「この人は◯◯な人だ」と単純化することによって、脳の使うエネルギーを節約します。そのため、このようなギャップを感じやすくなるといえるかもしれません。

他人のことを完全に知ることはできません。自分のことすら完全に知ることはできません。「この人は◯◯な人だ」という印象が形成されると、その印象そのものがバイアスとなり、その後の認識を歪ませてしまうことがあります。つまり、たとえ最初の印象に異なる側面が垣間見られても、その認識にとって都合の悪い情報は意識から排除されてしまい、合理的に説明可能な情報が優先的に採用されてしまいます。このことを確証バイアスと呼びます。

メルトは、「今日あま」での演技や、「東京ブレイド」における最初の一連の演技から「下手な役者」という印象ができてしまいました。メルト自身、短期間で努力できる限界があったので、そのことで悩んでいました。そこで、アクアはそれを逆手にとって利用することを提案したのです。

その後、アクア自身も「東京ブレイド」において、姫川大輝との共演において自分自身も、対比構造に持ち込むことで「逆手にとる」ということを行っています。

推しの子62話より

このように「ギャップをあえて作る」「自分の弱点を逆手に取る」ということは、何らか困難な事態を打開する決め手になるのではないでしょうか。


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