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7.有馬かなと心理社会的発達段階(前編)

重曹を舐める天才子役…
じゃなかった。
「10秒で泣ける天才子役」有馬かな。芸能界は他の仕事と比べ、かなり特殊な業界のため、「子役」という名のもとに、年端も行かない子どもが現場で仕事をしています。

今回と次回では、その有馬かながアニメや漫画内で描かれている幼少期(4歳頃)〜高校生(17〜18歳)を中心に、臨床心理学的に「エリク・エリクソンの心理社会的発達段階」という発達の観点から考えてみたいと思います。

心理社会的発達段階とは

精神分析家エリク・エリクソンが、精神分析の祖であるジグムント・フロイトの提唱した心理性的発達段階より発展させた、生涯発達における発達課題を示した段階(理論)のことです。
以下のように、年代で8段階に分けられており、それぞれの時期(発達段階)に獲得すべき発達課題を設定し、それを乗り越えながら人は生涯にわたって成長していくと考えました。

心理社会的発達段階

乳児期(0歳〜1歳半頃):基本的信頼 対 不信
幼児期前期(1歳半頃〜3歳頃):自律性 対 恥・疑惑
幼児期後期(3歳頃〜5,6歳頃):積極性 対 罪悪感
学童期(5,6歳頃〜12,13歳頃):勤勉性 対 劣等感
青年期(12,13歳頃〜20,21歳頃):(自我)同一性の達成 対 拡散
成人初期(20,21歳頃〜40歳頃):親密性 対 孤立
壮年期(40歳頃〜65歳頃):生殖性 対 停滞
老年期(65歳頃〜):統合 対 絶望

有馬かなの幼少期(4歳頃)の発達段階は、幼児期後期「積極性 対 罪悪感」

推しの子のアニメや漫画で描かれている有馬かなの初登場シーンは、アクアやルビーが3歳頃、有馬かなが4歳頃と推察されます。4歳頃ということは、上記の心理社会的発達段階でいうところの「幼児期後期」にあたり、発達課題は「積極性 対 罪悪感」にあたります。
この時期は、外界に好奇心を持ち、自発的・積極的に外界を探索していく時期です。積極的に活動をしてうまくいけば自分の能力を確認し、それが自信につながっていき、またその行動が周りに迷惑をかけたりしてしまうと、親を含めた周りの大人に叱られ、罪悪感を抱きます。

有馬かなは、天才子役として周りから持ち上げられてきました。親や周りの大人に褒められ、積極的に芸能活動を行ってきたことから、その態度は傲慢なものとなり、自信が過信へとつながっていったのかもしれません。
また、その前の発達段階「幼児期前期」の発達課題「自律性 対 恥・疑惑」は、自分がうまくやれば褒めてもらえる(自律性)が、うまくできなければ恥を感じたり、自分に対して疑惑を持つとされる時期です。
天才子役として自律性をひとよりも手に入れた有馬かなは、幼児期前期の強力な自律性を基に、幼児期後期の積極性を発揮していたのではないかと考えられます。

強力に獲得されていった自律性積極性は、幼少期のアクアとの出会いで、アクアの演技が評価されたことにより、鳴りを潜めていた恥・疑惑がその姿を現しはじめ、その後の罪悪感や、学童期の「勤勉性 対 劣等感」の劣等感へと、その後の人格形成にかかわっていったとも考えられます。
これは、アクアが悪い影響を与えたというよりも、アクアの演技後に有馬かなが「監督、撮りなおして。(中略)やだ!もっかい!お願いだから、次はもっと上手にやるから!」と泣きながら監督に訴えかけていた後、

監督「小さいうちから天狗になって、大御所気取りしてたら未来はねぇ」
アクア「あの子にお灸をすえたかったの?」
監督「そんな偉そうなことは考えちゃいねぇけどよ。こういうのも栄養だ」

アニメ「推しの子」第一話

と話していたように、こういった経験が有馬かなの一つの成長につながったのでしょう。

有馬かな「アクア…一人前に芸名なのね。覚えたわ。次は絶対に負けない…」

アニメ「推しの子」第一話

次回は、有馬かなが成長後、アクアやルビーと再会した17歳時のことについて、この心理社会的発達段階に沿って見ていきたいと思います。


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