スカトロ

 私の尿をペットボトルで保管し、テレワークで仕事をしながらずっと鼻からすすると言う彼はどんどんおかしくなっていった。尿では飽き足らず、便を食べたいと言い始めた。
 一回だけでいいから、口からあふれるほどいきんで出してほしい。便は当然汚物だから、出したらすぐさま流したいので、そのうちねと先延ばししていた。
 しかし彼は抑えきれない欲望を持て余し、自分でも操縦できない様子でいる。ほんとうに一度あふれるほどしなければ黙らないだろう。タイミングよく便が出たらね、と言って数日、彼といるときに便意を催した。それを伝えると彼は目の色を変えて、どこでしてくれる?と迫る。
 紙皿を携えてふたりで浴室に入る。狭い洗い場に脚を曲げて彼が仰向けになる。私は彼の脚の方を向いて口の上にしゃがみ込み、口に入るように彼が私のお尻を動かして、固定した。
 私は一息に出した。
 出しきって立ち上がり振り向くと、便にまみれてうなる彼がいる。目は閉じている。さわっていないのに硬く立っている彼のものを右手で握って上下に動かす。うなり声は大きくなる。彼の顔は寝顔より遺体に近く見えた。快感に耳を澄まし、ゆっくりと口の中で便を味わっている。
 遺体をじっと見ていると左目が3ミリほど開いた。やわらかい虫がさまようように、黒目が上下に動いている。彼の人格はすでにそこにはなく、欲望だけがそこにある。動かす手に反応して黒目はうろうろし続ける。
 変態だね、と吐き捨てて私は右手を上下する。もう鼻が慣れて臭いは気にならないが、口の周りをべたべたに汚したおぞましい生き物が横たわっている。薄く開いた目に光はなく、黒目がうごめく。
 遺体の瞼の裏側の、やわらかな粘膜に卵を産み付けるという蝿の執念を思い出しながら、私は眺める。
 声が大きくなるにつれて彼はさかんに鼻の下を伸ばす。鼻息を荒くして、臭いをかいでいる。食べても足らずにさらに臭いをかいで興奮を集めている。その度に硬くなっていく。変態だね、と心底思い、何度も打ちつけてやる。

 なめて、とお願いされて私は所狭しと身体を屈めて頭の部分を口に含む。右手は動かしながら、舌も使う。彼の声は大きくなっていき、身体全体ががくがくと勝手に動く。
 あっ!という声の始まりから液が出て、ああああ!という高まりにがくがく揺れながら液がさらに出る。全部吸い上げて飲み込む。彼の欲望が喉の奥に消えていく。

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