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「教育・保育要領」と「プログラミング的思考」

はじめに

「プログラミング的思考」という言葉を耳にすることが増えてきましたが、これはコンピュータを使うことだけに限定されません。むしろ、幼児期における「試して考え、もっと良くする」という遊びや生活の体験こそが、プログラミング的思考の基盤となるのです。

今回は、幼保連携型認定こども園の教育・保育要領に着目し、幼児期の保育環境や教育方針が、プログラミング的思考の育成とどのように結びついているのかを探ってみたいと思います。


プログラミング的思考とは?

まず、プログラミング的思考力とは、「課題に対して、論理的に考え、試行錯誤を通じて改善していく力」と仮ですが、今のところこのように考えています。

この力は、コンピュータに限らず、日常生活や遊びの中で自然に養われます。特に幼児期は、このような思考力を伸ばす基礎を築く大切な時期です。

こちらの記事で詳しく解説しています。


教育・保育要領におけるプログラミング的思考のヒント

幼保連携型認定こども園の教育・保育要領には、プログラミング的思考の基盤となる内容が多く含まれています。具体的なポイントをいくつか挙げてみます。

1. 試行錯誤の体験

教育・保育要領では、「自分で考え、試し、解決策を見つける経験」が重要視されています。例えば、遊びの中で次のような活動が促されます:

  • 素材を使った遊びの中で「どう組み合わせたら安定するか」を試す。

  • 他の子どもたちと話し合いながら、役割分担を決めて協力する。

これらの活動を通じて、幼児が「考える」「試す」「改善する」というサイクルを自然に学ぶ環境が整えられています。


2. 興味を引き出す環境づくり

教育・保育要領では、「環境が子どもの興味を引き出す応答性のある場」であるべきだとされています。

  • 工夫された環境:
    子どもたちが自由に手を伸ばせる高さに素材や道具を配置し、自分で選べるようにします。

  • 直接的・具体的な体験:
    実際に手を動かして作ったり試したりする活動が、思考力を育む基礎となります。

こうした環境は、子どもが自ら行動を起こし、失敗や成功を経験する重要な場となります。


3. 振り返りと見通しを持つ活動

活動を始める前に「どうやるか」を話し合い、終わった後に「どうだったか」を振り返る指導が推奨されています。これはまさに、プログラミングの設計とデバッグのプロセスと同じです。

  • 見通しを持つ力: 活動前に「どんな形を作りたいか」「何が必要か」を考えます。

  • 振り返る力: 活動後に「うまくいったところ」「もっと工夫できるところ」を話し合います。


「育みたい資質・能力」との関連性

幼保連携型認定こども園の教育・保育要領では、「知識及び技能の基礎」「思考力・判断力・表現力等の基礎」「学びに向かう力・人間性等」の3つの資質・能力をバランスよく育てることが求められています。これらは、プログラミング的思考の構成要素とも深く結びついています。


1. 知識及び技能の基礎とプログラミング的思考

  • 関連性: プログラミング的思考は、課題解決のための基本的な知識や技能を必要とします。幼児期の遊びを通じて、素材の使い方や動きの仕組みといった具体的な知識が身につきます。

  • 具体例:

    • 積み木遊びでは、「大きい積み木を下に置くと安定する」という構造の知識を実際に体験します。レゴブロックなどの玩具においても同様なことが体験できるかもしれません。

これらの活動は、プログラミング的思考における基盤となる知識と技能を自然に身につける場となります。


2. 思考力・判断力・表現力等の基礎とプログラミング的思考

  • 関連性: プログラミング的思考は、課題を分解して筋道を立てる「思考力」、最適な解決策を選ぶ「判断力」、そしてその結果を形にする「表現力」を統合的に活用します。

  • 具体例:

    • 紙ヒコーキをより遠く飛ばすには、「翼を広げるべきか、細くするべきか」といった判断が必要です。その試行錯誤の結果を形として表現します。

    • 集団遊びでは、役割分担を考えたり、意見を出し合いながら課題を解決していきます。これは論理的思考と協働的な表現力の両方を鍛えます。

こうした活動を繰り返すことで、子どもたちは「考えて実行する力」を養うことができます。


3. 学びに向かう力・人間性等とプログラミング的思考

  • 関連性: プログラミング的思考は、失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢や、他者との協力を通じた学びを含んでいます。これは「学びに向かう力」と「人間性」の育成に直結します。

  • 具体例:

    • 試行錯誤を重ねる遊びでは、失敗を「やり直すきっかけ」と捉え、次の挑戦につなげるポジティブな態度が養われます。

    • 他の子どもと意見を共有しながら遊びを進める中で、協力や共感、そして認め合う心が育ちます。

このように、プログラミング的思考を幼児期に育むことは、未来に向かって学び続ける力や、他者と調和しながら成長する人間性を基礎から支えるものと言えます。


プログラミング的思考が資質・能力を支える理由

「知識や技能」「思考や判断、表現」「学び続ける姿勢や人間性」は、それぞれが独立しているわけではなく、相互に関連しています。プログラミング的思考はこれらを統合的に育てるための基盤となります。

具体的には、遊びの中で試行錯誤を繰り返し、結果を振り返るプロセスが、以下のように結びつきます:

  • 知識を使いこなし、思考や判断を通じて課題解決を目指す力

  • 自分の考えを表現し、他者と共有しながら学び続ける力

このように、幼保連携型認定こども園の教育・保育要領が掲げる資質・能力とプログラミング的思考の育成は、深くリンクしているのです。

この視点を取り入れることで、幼児教育の現場でより具体的なカリキュラム作りや環境整備のヒントになるでしょう。


遊びを通じたプログラミング的思考の育成

プログラミング的思考を育む活動は、特別な教材がなくても可能です。幼保連携型認定こども園の環境では、以下のような日常的な活動を通じて子どもたちが自然に学びます:

  • 積み木遊び: 高く積む方法を考え、崩れた原因を探る。

  • 紙ヒコーキ作り: 飛ばし方や形を工夫して、より遠く飛ばす挑戦を繰り返す。

  • 集団での役割遊び: 他の子どもたちと相談しながら、物語を展開させる。

これらはすべて、「試してみる」「直してみる」「もっと良くする」というプロセスを含んでおり、プログラミング的思考の基礎となります。


保育者の役割

子どもたちが主体的に活動できる環境を整えることはもちろん、保育者自身も大切な役割を担っています。

  • 見守る: 子どもが試行錯誤する時間を尊重し、すぐに助け船を出さない。

  • ヒントを与える: 必要に応じてヒントを出し、自分で考えるきっかけを作る。

  • 成功や失敗を共有する: 子どもたちの努力を認め、振り返りを支援する。

  • 環境作り: 子どもたちが試行錯誤に没頭できる環境を整える。

保育者の姿勢が、子どもたちの「もっとやってみたい」という意欲を引き出します。


おわりに

幼保連携型認定こども園の教育・保育要領は、子どもたちが「考える」「試す」「工夫する」プロセスを自然に学べる場を提供しています。これらの環境や活動は、プログラミング的思考力を育む基盤そのものです。

未来を生きる子どもたちにとって、「課題を解決する力」や「試行錯誤を楽しむ姿勢」は、デジタル時代のどんなスキルにも勝る重要な力です。ぜひ、日常の保育活動にプログラミング的思考の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか?


この記事は、幼児期の教育現場における新しい視点を提供し、プログラミング的思考の可能性を広げる一助となることを願っています。

参考文献


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