見出し画像

『スメルズライクグリーンスピリット』4話を見た原作既読のネタバレ雑感…ひとりごとぶつぶつ

スメルズ ライク グリーン スピリット
原作が大好きなので。
実写化どうなるのかなと不安半分期待半分で見てるけど。
今のところとてもいいなと思う。
原作に対するリスペクトも愛も理解も感じらるし、丁寧に作られたドラマだという印象です。

で、桐野ね。桐野の家庭苦しいですよね。
愛されてはいるんだろうけど母親の自己都合の押し付けがすぎると思う。
息子の幸せより自分の幸せが大事な母親だもんね。
そんなのは本当の愛じゃないよ。
あの母親を大好きと言い切れる桐野いい子すぎて泣ける。
母親の幸せのために本当の自分を殺す桐野が心配でたまらない。
女の子になりたい気持ちはどこに行くんだろう。
あんなにキラキラと解放した本当の自分をまた殺すんだろうか。
いや、分かる。分かるんだけどな…
年取ってやっとできたひとりっ子で、不誠実な父親に捨てられた母親には自分しかいない。
その母親の幸せが自分の幸せ、と言い切る桐野は、いい子というより、義務感が勝ってるように思える。
そんな義務感に縛られた愛で自分の本当の気持ちを殺す未来に幸せはあるのかと思ってしまう。
そもそも母親はいつか自分より先に旅立つんだし。
母親のいなくなったその後はどうするんだろう。
今度は自分の血を分けた子供という存在に幸せを見出すんだろうか…
それも一つの幸せの形かもしれないけど、でもどこまでも他人に依存した幸せの形のような気がして辛い。

屋上でのあの宝物のような楽しい時間を最後の思い出に、本当の自分を捨てる、とかだったら切なすぎる。

現実には、結婚して子供も儲けてノーマルに人生を歩んできた人が、熟年になって自分を解放しゲイの道を謳歌、みたいな話もよく聞くし、桐野もゆくゆくそういう人生になるじゃないかな、なんて思う。
やっぱり自分の本性を殺すことなんてできないよ。
桐野の場合は、母親のためだけじゃなく自分の容姿が自分の望むものとどんどんかけ離れていく絶望とあいまってのあの選択だから、ただ安易に自分を殺しただけではないとは思うけど、だけど、いずれ容姿なんてみんな衰えていくもんなんだし、そんなの関係ない!生きたいように生きる!ってどこかで自分を解放して、母親からも解放されて、自由に生きて欲しい。と願ってしまう。

原作ではラストの桐野の真っ直ぐに現実を見据える力強く澄み渡った瞳で全てを語らせていて、その迷いのない力強さに、私ははっと胸を打たれるくらい感動したんだけど、ドラマでそれをどこまで描いてくれるのか、どういう風に見せてくれるのか、怖さ半分期待半分不安半分…みたいな。
だって眼差しだけで桐野の心情を語らせるあのシーンは相当技量のいることだと思うので。

あと欲を言えば三島はやっぱりもう少し華奢な方がいいなと思ったりする。
いや、荒木くんは可愛い。顔もとても綺麗に整ってるし、ボブカットもすごく似合ってる。
女装は好きだけど女の子になりたいわけじゃなくて、中身はちゃんと自立しようとする男の子だというキャラもよく体現できている。

でも夢野が、三島は男だと頭では分かりつつも三島に男性器がついてないと妄想したり、三島のそれを目の当たりにして我に返ったりっていうシーンってめちゃくちゃ大事だと思ってるんだけど、それによって三島のアイデンティティがひどく傷付いたり、それを知った桐野が自分の痛みのように共感して泣くとかにも繋がってくる大事なファクターだし、
あと桐野が、三島の可愛さと比較して、それとは程遠い自分の容姿に絶望して自分の夢を諦めることも考えると、やはりもう少し女性みのある雰囲気というか、誰が見ても一瞬美少女と見まごう説得力がやはりもう少し欲しかったかなぁ、とか思ったり思わなかったり…
荒木くんの身体は結構ガッシリしててちゃんと男性だもんね。白雪姫のたおやかさまではちょっとないかな、とは思う。
ま、その辺はなかなか難しいか…
あの演技力と可愛らしい顔面で充分ですよね。
すみません。

あと夢野のとーちゃんですよね。
アメリカかぶれのちょっと風変わりな陽気な日本人として描かれていたけど、できれば本当にアメリカ人の方がよかったなと思う。
だってあれは「人種」とか「文化」とかが大事な気がするから。
一見陽気で偏見なんか全くなさそうな、自由の象徴!みたいなアメリカ人がこそが、実は幼少期から植え付けられた偏見にがんじがらめだったりして、その無意識の偏見や差別心に殺されるマイノリティの苦しさがあるんだってところを、忠実に描いて欲しいと期待してしまう。

ホモフォビアなんて言葉もあるし、実はアメリカの方がホモには厳しいという話も聞いたことがあるし、あんなに自由で理解のありそうなとーちゃんが自分の息子がホモだという事実を全く受け入れられないっていう絶望感が大事だと思ったりする。
そこをただ「陽気で明るくて風変わり」という表面のキャラをだけなぞっただけだと本質がズレる気がしないでもない…とか。

ま、その辺もきっと上手く描いてくれると期待してるけど。

自分のアイデンティティやセクシャリティに悩む10代の男の子の葛藤やら成長やらが物語の主軸だけど、田舎の息苦しさや狭い価値観、無自覚な偏見などの残酷さをリアルに描いてるからこそ、その悩みや葛藤がより真に迫る、そんな描写の深い作品だと思うから、そこは大切にして欲しいかな、と思う。

個人的にはこの作品は、BLのカテゴリーだとは思ってはいません。
いや、じゃいったいBLってなんやねん、みたいな深い話になると、そこはそんなにしっかりした思想や強い信念がなくてほんとすみませんなんだけど。
ま、強いていうなら萌え。とか?ファンタジー性。とか?
やっぱBLって萌えてなんぼだと思っているので。
萌えが多かろうが少なかろうが、萌えをちゃんと意識して作られているものはBLだと思うし、
対して、萌えはとりあえず置いておいて、ストーリーや人物の描写、社会背景などに重点を置いているものは「BLではない」と、個人的ななんとなくなカテゴライズです。すみません。

つまり柳田の尻叩きを、「ドS攻めの歪んだ性癖やば…」とか「変態攻めに調教される受け最高」みたいに萌えや滾りに変換できるのがBLで、
対して、尻叩きをパワハラや性暴力として捉えて加害者や被害者の心理や闇や社会背景を描こうとしているものは「BLではない」と、そんな風な基準が個人的になんとなくあるんだけど。
それで言うと、この作品はBLのカテゴリではないとよね。と、言いたいだけでした。

それにしてもめっちゃ柳田回だったな。柳田先生の狂気と闇がヤバすぎた。
最初から死んだ魚の目とか、じっとりと三島を追う目線の不気味さは随所に現れてたけど、三島の尻を叩く時の完全にバキバキにイった目はすごかったし歪んだ性癖で興奮しきった表情もヤバかった。
すごいですね、阿部顕嵐さんの演技。
「BLドラマの主演になりました」の大真面目でコミカルな演技がよくて、何となく気になってた俳優さんだけど、まさかこんなに演技力のある方だとは知らなかった。

あとちゃんと柳田の隆起した股間を映してくれたのがよかったな。
生々しく性的に興奮してるんだと、そこを濁されると柳田のヤバさが薄れるもんね。

トラックで体調の悪そうなフトシの母親を心配したり、基本的にはいい人かもな面も匂わされてるので、あの張り付いた笑顔の下の苦悩や闇をどこまで掘り下げて描いてくれるのか、楽しみでもあり怖くもあり。
多感な思春期に性癖を否定されたことで歪んでいった、ある種時代の被害者的な側面もある柳田だとおもうので、その悲しさ苦しさも、ちゃんと描いて欲しいなとは個人的には思う。
でもその辺は、原作でも番外編的に描かれてる部分なので、本編ドラマではそこまで掘り下げる必要はないのかもしれないけど、柳田をただの変態教師としては終わらせて欲しくないとは強く望みます。

「雑に括られるけどみんな違うしね、こっちだって」
ってほんとそれで。
多様性とかなんとか言いながら、結局は自分が理解できないものをただLGBTという枠に雑に押し込んでるだけの人って多いよね、って自戒も含めて思う。

その「雑に括られてる人達」の苦しみや葛藤やそれぞれの思いを丁寧に炙り出して、ひとりひとりの人間性や生き方として描いてるのがこの作品の素晴らしさだと思うので、その辺はBLの萌え的なものでなんとなく誤魔化さないで描いて欲しいなとは切に思う。

原作に忠実に、リスペクトと熱量を持って作られた良質なドラマだなという印象は間違いないので、これからの展開に期待したい。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集