ドラマ「ハッピー・オブ・ジ・エンド」7、8話の感想
とうとう終わってしまいましたね。ドラマハピエン。
最終話が放送されてから10日。皆様いかがお過ごしでしょうか。
…なんつて。
最終回から10日。
なぜこんなに感想を書くのが遅くなったかというと、
仕事がとても忙しかったからです。
…とか言いたいところですが、すみません違います。
単純に死んでました。余韻に殺されてました。
最終回を配信と同時にFODで見た後、頭痛くなるくらい泣いて、あまりの余韻と感動に頭が真っ白になり、完全に放心状態。
すごいものを見てしまった、という感動と戸惑いでどうしていいか分からない状態からなかなか立ち直れないでいました。
あ、これは無理だと思いましたね。とても私の貧困な語彙力では言葉にできないと。
こんなすごい感情を言葉にするなんて到底できない。本当にすごいものを浴びると人は語彙力を失くすのだという事実を身をもって体験していました。
なので今回はもう書きません。
と、本気で思っていたんですが。
しかし。
やはりどれだけ下手でも及ばなくても、何とかこの感動を言葉に残したい!形に残したい!という未練がましい欲望が捨てられず、金欠の大学生よりも貧困な語彙力と文章力をなんとか駆使し、よたよたと書いてしまいました。
どこまで書けるか、ちゃんと解釈できてるか、不安しかないけど、まぁこんなに感動したバカもいるんだよ、と。
そんな気持ちが少しでもお伝えできれば幸い。
一話一話書き綴ってきた感想文ですが、今回は7,8話一気にまとめて書いていきます。
少し長くなりますので、お時間と忍耐力に余裕のある時にお付き合い頂ければと思います。
あと推敲する時間も体力も力量もなく、乱筆乱文はどうかご容赦ください。
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とにかく、冒頭の千紘からひりひりしましたね。マヤの脅しに気圧されて車に乗り込んでしまう千紘。あかん!乗ったらあかん!と思わず画面に向かって叫んでしまいました。
ハオレンを助けるためでもあるけど、たいして親しくもないバイト先のJKを守るために自ら乗るなんて、千紘かっこよすぎますよね。
またマヤが自分でドアを開けて車に乗らせるのも怖すぎました。
無理やり拉致したんじゃなく千紘が自分の意志で乗り込んだって事実を作るなんてプロ。
この周到ぶりが本当に恐怖でした。
そしてマヤから酷い暴力と屈辱に合う千紘だけど、私は千紘よりもここのマヤになんだか釘付けでした。
何を考えてるか分からないあの不気味マヤが、まぁよく喋る喚く暴れるわで、これね、普通の力量の役者さんなら安っぽく見える危険性があると思うんです。
弱い犬ほどよく吠えるじゃないけど、あんなに喚き散らかして暴れたら、下手したらめっちゃ小者に見えかねないですよね。
あ、この程度ね、と怖さの底が知れてしまうかもしれないところを、これがまぁ見事にマヤが狂気なんですよね。あかん、こいつもうどうしようもない、こんなん手に負えんっていう狂気がすごかった。
浅利さんの役の作り込みがすごすぎる。
そんなマヤに対して、「てめぇに親友なんていねぇよ」とか言うんだもん千紘。あかん!!なんてこと言うんだ!!!
千紘の純粋な正義感がもう怖くて怖くて;なんて怖い者知らず;マヤ怒らせたら地獄見るよ…
それにしても舎弟の間宮。自分の意志がなくてとりあえず長い物には巻かれろ、怖いものには思考停止で従え精神の小者感がめっちゃリアルでしたね。
「まじっすか」とヘラヘラ笑うだけで、特段マヤに忠誠心があるわけでもない。とりあえずマヤを怒らせたくない。マヤに気に入られておけばとりあえず安心だろというちんぴら根性がほんとリアルでした。
そんな側近の舎弟にすら全然慕われていないマヤ、自業自得といえど気の毒…
なんとか命拾いをした千紘。嵐の後の静けさのように、ぼーっと魂の抜けた顔でベッドに座ってる姿に心が痛くてたまりません。
ここで病室に入ることすらできないハオレンが切ないんですよね。
涙を堪えてるような悲痛な面持ちで、言葉もなく千紘の手を握る姿に胸が苦しかった。
ここで下手に泣き叫んだり、ごめんと頭を下げたりしないところに、ハオレンの悲痛さがより伝わってきました。
謝ってしまえばハオレンの心は少しは楽になれるんですよね。謝れば「いいよ。大丈夫」って千紘はきっと言ってくれます。そしたらハオレンは自分の罪悪感が和らぎ楽になれるんです。
でも、だからこそ敢えてそれをしない。安易に自分を許させたりしない。
全部引き受ける。この千紘の姿を自分の目に脳に焼き付ける。自分の罪から逃げない。そして絶対に千紘を守る。
そう決意するように千紘の頭を胸に抱き寄せるハオレンには、悲しみ以上の強い覚悟が伝わってきて胸が詰まりました。
そんなハオレンに、ネックレスを失くしてごめん、なんて謝るんだもん。そんなのいいよ;お前どれだけあんなおもちゃ大事にしてんだよ・・・;
そんなハオレンの気持ちを代弁して、私が代わりにどばどば泣きました。
そして部屋に帰ってきた2人。
本当は触れられそうになるだけで反射的に身を避けてしまうほどの恐怖だったはずなのに、俺はなんにも気にしてないよ、全然傷付いてないよと、全身でアピールするような千紘の振る舞いがとても辛かった。
「怖いの?」と聞かれて、「ちょっとだよ」と笑う千紘の強がりは、男のプライドとハオレンを不安にさせたくないという思いやりに溢れてて泣けるんだけど、私にはこの言葉がものすごく絶望的に響いてしまいました。
ラブホの風呂で「俺がついてんだろうが」「あんなチビぶん殴ってやる」と笑ってくれた頼もしい千紘が、たった一回マヤに会っただけで、あれだけボコボコにされて、触れられる手を反射的に避ける程に恐怖を感じてるなんて、あぁやっぱり千紘でもだめだったって、ハオレンを守れないのか、とそんな絶望感に襲われました。
手を握ろうとした千紘を反射的に避けた1話のハオレンの姿が、この時思い出されてしまいました。
まさか、千紘までハオレンと同じようなトラウマを抱えるのか・・・
ハオレンにとって千紘は絶対に侵されたくない、いわば桃源郷なんですよね。安全シェルターであり、命綱であり、実り豊かな楽園であり、絶対に守りたい宝物。ハオレンが人間として生きるための最後の砦なのだと思います。
そんな大切の場所をとうとうマヤの汚れた足で踏みにじられてしまった。
幻聴が聞こえるほどに追い詰められていくハオレンが辛すぎてたまらない。
千紘を傷つけたのは俺だ。泣かせたのは俺だ。そのせいできっと千紘は俺を恨んでる。そんな俺に愛想を尽かしてきっと千紘は俺から離れていく・・・
もうこの辺のハオレンの表情が凄かった。闇に囚われ沈んでいくようなハオレンが辛すぎる。
そんなふたりを気にかけて助けてくれる加治にどれだけ救われたか分かりません。
怪我を負った千紘ではなく、ハオレンを心配する加治にやられました。
加治は分かってるんですよね。ハオレンが千紘を傷つけられてどれだけ苦しんでるか。
「帰れ」と頑なに拒否するハオレンに、昔の姿が蘇ったんだと思います。
他人を強く拒否し自分の殻に閉じこもる姿は、きっと昔からのハオレンの自己防衛の手段だったんだと思います。
千紘と会って、柔らかい表情が増え、感情豊かになってきたハオレンが、昔の死んだ心に戻りかけてるのが分かったんだろうな。
そんな加治に「俺は大丈夫」と答えるハオレン。
古今東西有史以前より、大丈夫と言う人は大丈夫ではないと決まっています。酔っぱらいが頑なに酔ってないと言い張るあれと同じです。
パンダの交尾に生唾を飲み込んで見入ってる千紘がいなかったら私の心はとっくに限界だったかもしれません。
あのシーンなにげにすごい息抜きでした。ぱんぱんに張り詰めていた苦しい気持ちがふっと抜けました。
千紘にたばこを咥えさせて火をつけてあげたり、レシピを見ながら慣れない手つきで節約料理を頑張るハオレンにもすごくほっとさせられました。
しかしそれはほんの一瞬のオアシスでした。
ちょっと気を許したらまた死ぬほどどん底に落とされるのがドラマハピエンなんですよね。
きました。悪魔からの手紙。マヤからの動画ですよ。
あぁもうその通知絶対開けたらあかん!!すぐ削除して!!
そんな私の必死の叫びが届くはずもなく、千紘のフェラ動画を見てしまうハオレン。
まさかこんなことまでやらされていたなんて…
自分を心配させたくなくてなにも言わなかった千紘。それを見抜けなかった自分にもハオレンは絶望したと思います。
マヤの怖さを舐めてた。このままではもっとひどいことをされる。きっとマヤがいる限り千紘はもっと傷つけられて踏みにじられる。止めなきゃ。もう止めないと限界だ。マヤを止められるのは俺しかいない。
ここの表情がすごかった。すっと感情が心の奥底に沈む感じ。殺してやる。殺してやる。とうとうハオレンの精神が崩壊するんですよね。もう我慢ならない。
私はバカなのでマヤに「会いたい」「謝りたい」とのハオレンのメールを見たときは、まじで謝るのかと一瞬思いました。謝ってもう千紘に手を出さないでとお願いするのかと。そんなことしたらマヤの思う壺じゃん、どんどん図に乗らせるだけだよ;
とハラハラしたけど、そんなわけなかった。
ふらふらとなんの罪悪感もなく、むしろ楽し気に、昔馴染みの親友に会いに来るがごとくハオレンに会いに来るマヤが、あまりに常軌を逸していて不気味でした。
「マヤ、お前さえいなければ俺の人生違ってた」
覚悟を決めたハオレンの目がすごかった。真っ黒な闇の深淵を覗くような、ブラックホールのように感情を全て封印したかのような瞳。
すごいのが、この時沢村さん、一度も瞬きをしないんですよね。瞳孔の開ききった目がただごとじゃない。
瞬きひとつまで完璧に管理された表情作りがすごすぎて目が離せない。
だめ!ハオレン!そっちの世界にいったらダメ!!
なんて私の悲痛な叫びなど届くわけもなく、とうとうマヤを刺してしまうハオレン。
あぁ・・・やってしまった・・・とうとうそっちの世界にいってしまった・・・なんてこと・・・
もう私は苦しくて苦しくて息をすることもできませんでした。
でもその一方で、そうだよね、もうそれしか方法がないよねっていう救いのないような気持ちもありました。
マヤさえ殺せば幸せになれる。こいつさえいなえればすべてがうまくいく。そうだよね、もうこれしか方法がないよね。
この時のマヤの、「やめて、やめて、助けて」とみっともなく命乞いをする姿が意外でした。
マヤなら、「なんだよ、もっとやってみろよ、殺してみろよ」と狂気の目で煽ってきそうと思ってました。
ここでマヤの弱さを見せらえて私の心はひどく動揺しました。まさかマヤも本当は人間の心があったなんて今更言わないよね…?
そんなマヤの予想外の反応にハオレンも我に返ったんだろうか。それともやはりどこかに情があったんだろうか。
抜いた刃物に一瞬力を籠めるも、とどめを刺さずに走り去るハオレン。
よかった・・・ハオレンが殺人犯にならなくてよかった・・・かろうじてぎりぎりとどまってくれた・・・
もしかしたらここでとどめを刺した方がよかったのかもしれない。下手に情をかけて生き延びてしまえば元も子もない。なんのための決意だったんだ。
そんな意見もあると思う。
でもやっぱりハオレンが殺人犯にならなくてよかったと心から思います。
それは刑罰の問題じゃない。
殺人と殺人未遂ではマヤが今後の人生で背負う重みが全然違う。この手で人の命を奪ったという事実と未遂とでは心の傷が大きく違う。
救いのない最悪の現実の中でギリギリこっちの世界に留まれた。そんな気持ちになりました。
逃亡を決意し、ハオレンがどうしても見てみたかった海に来る2人。
現実の過酷さと全くちぐはぐなハオレンの明るさが不憫でたまらないのです。
初めての海ではしゃぐハオレンも、イルカショーでびしょびしょになって笑い転げる2人も、アシカの手に触れてきらきらと目を輝かせるハオレンも、2人が楽しそうに笑えば笑うほど、その刹那に胸が苦しくてたまらない。
この時間が終わればそこにはもう地獄しかない。行き場のない現実を無理やり忘れるかのように、刹那な楽しみに身を投げる2人に泣けて泣けてたまらない。
もっと早くにこの普通の楽しさをハオレンには知って欲しかった。こんな形じゃなく、もっと普通に当たり前にこんな笑顔をして欲しかった。
ここで普段以上の食欲を見せるハオレンが心配でたまらなかったです。だってそんなわけないもん。殺人未遂の罪を背負って逃亡中だよ?
千紘みたいに食欲無くすくらい不安に怯えるのが普通なんです。
絶対無理してる。無理に今の楽しみを食い尽くそうとしてる。
そんなハオレンに、最後の晩餐、なんて言葉が不吉にも思い浮かぶ。もしくは死刑前のご馳走。
不穏感しかない。
腕が完治したら仕事してお金を貯めてカメラを買ってカメラマンを目指すと、笑顔で未来の夢を語る千紘。
そんな千紘に
「お前はなんにだってなれる。どこへでも行けるしどこに行ったて生きていける。お前をどこにも行けなくさせてるのは俺だ」
そう。ハオレンにはもう未来なんてないんです。一度は夢みた幸せ。手放したくないと泣き崩れるほどに神様にお願いしたささやかな幸せ。
それすらもやはり贅沢な願いだったんだと。夢見る事はやはり許されないんだと。再び思い知らされるんです。
あるのはただ漫然と口を開いて待ち受ける真っ暗な現実だけ。
未来を夢見る千紘。
未来を恐れるハオレン。
この二人の対比が決定的でした。
海に誘われるように入水するハオレンは、もう辛いとか苦しいとか死にたいとか過激な感情はなく、呼吸するのと同じくらい自然に、日常の同一線上に死ぬ選択肢が当たり前にあるのが辛くてたまらないです。
死にたい人って、死ぬぞ!やるぞ!今日死ぬぞ!ではなく、日常のふとした瞬間に死に誘われるんですよね。
明日食べるご飯を考えながら、明日の仕事のこととか考えながら、そういえば通勤定期きれてたわ買わなきゃ…そんなことを考えるその並列に、ごく当たり前にうん、死のう。
そんな感じでこの世から消えた人を知ってる私には、ハオレンの生と死が当たり前に混在している日常がもう辛くて辛くてたまらなかった。
マヤがいる限り2人に平穏な幸せはない。でもマヤを殺したところで犯罪者になるか一生逃亡生活。
大切な人を守るためにはもう死ぬしかないっていうハオレンの選択が、分かりたくないけど分かり過ぎて他に方法が分からなくてしんどすぎる。
でもハオレンにはそこに抱きしめてくれる手があるんです。死に向けて歩む足を止めてくれるあたたかさがあるんです。
だから生きて。
そして駅のホームです。
近づいてくる電車の音がこんなにも辛いと思ったことはありません。
来ないで。電車が来たら終わってしまう。この逃亡の旅が終焉したらそこには別れしかない。
非情にもホームに到着し扉をあける電車。
この列車を見送ったところで何がある?この列車に2人で乗ったところで何がある?
2人にはもう他に選択肢はないんです。
面会で会えるよな?連絡しろよ?とハオレンの肩を掴む千紘は、きっと逃亡生活の限界に気付いていたんだと思います。明るくはしゃぐハオレンの、心の底の決意にも気付いていたんだと思う。
自首するハオレンについていってあげて欲しかったけど、それはハオレンが絶対に望まなかったんだと思う。それも分かって千紘は身を引いたんだろう。
衣食住や身の安全が守られていることが当たり前の私たちには想像できないけど、後にも先にも行き場がないハオレンには刑務所に入ることはむしろ最良の逃げ道なのではないかとすら思えました。
世の中には、刑務所に入りたくてそのためにわざわざ犯罪を犯す人がいるらしいと聞いたことがあるけど、本当に限界超えて追い詰められた人には刑務所はもしかしたら最後の砦なのかもしれない。
そこまで追い詰められなければならなかったハオレンと千紘が悲しすぎる。
まるで雪山で滑落する自分を仲間から切り離すかのように、千紘という命綱を自ら外すハオレンの決断が悲しすぎる。
死ぬのは自分だけでいい。道連れになんかできない。千紘はその誰も踏み入れていない未踏の積雪をどんどん歩いて夢を叶えてくれ。頂上まで行ってその目で未来を見て欲しい。
「いっぱい思いだして。そして忘れて」
この一見真逆なように思える言葉にハオレンのどうしようもない千紘への愛が集約されている気がしてもう涙が止まりませんでした。
「忘れないで」でもない。
「忘れて」でもない。
千紘をもう苦しめたくない。だから俺なんかのことなんか忘れて欲しい。
でもせめて。せめて俺との時間を、笑いあったあの日々を、一度は生かせて欲しい。その日々に一度は命を吹き込んで欲しい。
そして笑って。俺を愛して。そして、もう過去に縛られずに自分の人生を生きて欲しい。
こんなにも矛盾して悲しくて愛に溢れた言葉初めてです。
まさにハピエンの世界観そのものを表してるようなこの言葉、その言葉を紡ぐハオレンの泣き笑いの表情にもう胸が苦しくて苦しくて・・・
そしてここですごいのが電車のカメラワークです。長回しの臨場感すごくて身震いしました。
叫びながら走る千紘の後ろ姿を追いかける映像から、開いた窓から千紘の顔のアップを見せるカメラワークが本当にすごかった。
走る千紘、立ちすくむハオレン、窓から顔を出して叫ぶ千紘、みたいに細かくカットを入れるような撮り方だったらこの臨場感、感情の爆発は表現できなかったと思います。
画面から感情の揺れが伝わってくるような撮り方が、まるで自分もその電車に乗ってるかのような錯覚を起こし、画面の揺れがそのまま自分の感情の爆発となって大号泣しました。
こんなところまで作りこんでくれるハピエンすごすぎない?
そして3年後。
すっきりと束ねた髪と身綺麗な服装でしっかり社会人になってる千紘。
センスと才能が全てのカメラマンの世界にたった3年で生計を立てられるほどになるなんて、やっぱり千紘が持ってたポテンシャルはすごかった。
まじで千紘のなにがクズだったのか、どうゴミだったのか、もう私は思い出せません。
ハオレン、君が命がけで守った宝物はちゃんと夢を叶えてキラキラと輝いているよ。
しかしそれをハオレンに伝える術はどこにもないんです。
刑期を終えて出所するハオレン。黒のイメージしかなかったハオレンの白シャツが悲しくも眩しいのです。
なんだかつきものが落ちたように、静かに礼儀正しく頭を下げるハオレン。
塀の中で何を思っていたんだろう。3年の日々はハオレンに何を与えたんだろう。
「ひとつだけどうしても知りたい。夢は叶った?」
千紘の未来のために別れを決意し、自首したハオレン。
千紘を守るために罪を犯し、千紘を守るために別れを決意し、千紘を想い、千紘の未来のために過ごした3年の日々。
ふとしたきっかけで千紘の現在を知り、震える手でそのアカウントを開きます。
そこには夢を叶え、眩しい程の笑顔の千紘。生き生きと今を生きている千紘の姿を見つけるのです。
無駄じゃなかった。自分の塀の中の3年間は無駄じゃなかった。
そんな声が聞こえてきそうなハオレンの泣きじゃくる涙がもう尊くて、私も呼吸ができないくらい泣きました。
会うつもりはない。ただ知りたいだけ。千紘があれから何を見てきたか。なにを目にして何に心を動かしどうやって夢を叶えてきたか。
きっとそれを知れたら、ハオレンの3年間が救わる気がしたんだろう。
千紘がいない時を見はからって写真展に足を運ぶハオレン。
ここであの時千紘に貰ったマフラーをするのに泣けるんです。
3年間、ずっと大切に持ってた。もうこれ以上ない、死にたいとまで思ったほどに幸せだったあの時の忘れ形見。宝物。
ひとつひとつ千紘の写真をみながら千紘の3年間に想いを馳せる。千紘の見てきた世界を自分の目にも入れる。心で再生する。
そして最後に見つけるんです。あの写真を。あの日、初めて撮られたあの写真。思わず顔を手で隠したあの日の自分。
それが、片隅にひっそりと、しかし確かな存在感で展示されているんです。まるでこれが自分のスタートであり全てであるかのように。
自分がいない3年間も千紘の中にはずっと自分がいたことを知るんです。
その写真を見たハオレンの心は走り出します。
あの時の場所へ。初めて千紘が自分にシャッターを切ったあの場所へ。きっと千紘がいるあの場所へ。
そして再会した2人。
この時の千紘の顔です。この表情にやられました。
まさか…と信じられない気持ちから、そこに間違いなくハオレンがいる驚き。それが現実と確かめるようにカメラに手を伸ばす千紘。今度は確実に、しっかりハオレンをカメラに収める千紘。
そして最後の笑顔です。泣きそうなほどに嬉しそうに笑う千紘。ずっと会いたかった人。その人が今目の前にいる喜び。
ここの笑顔が最高すぎました。
そしてそんな千紘を見て、少しだけ、ほんの少しだけ顔をほころばせるハオレンにまた泣けるのです。
初回のシーンを見事に回収する構成も、ラストの2人の感情を一切台詞なく表情だけで担える俳優力もあまりにも見事すぎて、私はもう泣きながらの大拍手でした。
え…こんな綺麗な終わり方ある?
1話であれだけ無機質で感情の死んでいた2人が、こんなにも柔らかく暖かい笑顔をみせる。
多くの人がなんの苦労もなく当たり前に手にしてるもの。安全な住処、美味しい食事、安心して寝れらる場所、笑うこと、泣くこと、愛すること、愛されること…
そんな私たちが当たり前に手にしているもののために、彼らはどれほど傷つきどれほどのものを失くしただろう。
長い長い道のりの果てに2人がやっと手に入れたほんのささやかな幸せが尊くて涙が止まりません。
再会を喜びあって、涙ながらに抱き合ってキスして・・・そんなありきたりじゃない、胸にじんわり響くような余韻たっぷりのラストがあまりにも最高すぎました。
そして最後。
漆黒の背景に白文字のタイトルが出た瞬間、頭を殴られたような衝撃と心臓が鷲掴まれたような感動で、一瞬呼吸困難になりました。
振り返りの映像とともにエンドロールが流れるような定番じゃない終わり方に心が全部持ってかれました。
実は私、この「HAPPY OF THE END」の意味がいまいち分かってなかったんです。
「終わりの幸せ」だと、色々あったけど最後は幸せになりました。というハッピーエンドの意味になる。
でも、「幸せの終わり」とも受け取れる。これだと悲しい終わりです。2人は結ばれていない。バッドエンド、もしくはメリバ。
私はそこが分からなかった。2人は確かに笑顔だったけど、ハオレンの笑顔がもう一つ晴れ晴れしていない感じがして、再会はしたものの恋人としての関係は再開できなかったんじゃないか、ハオレンはただ千紘に会いたかっただけでやはりあの電車で別れたときの気持ちのままで恋人に戻る気はもうないんじゃないか。
そう感じたんです。
だから衝撃だった。え?どっち?ってもう軽くパニックになって感情が迷子になりました。
結果、私のハッピーオブジエンドのタイトル解釈は、
「終末の世界から見つけた最後の幸せ」
つまり、あのど底辺の掃き溜めの世界からやっと見つけた幸せ。
そんなふうに解釈しました。
この最後はあえて描かずに、見るものに最後は委ねる感じにやられました。
おかげでずっと心を捉えられて離れられない。
(でも原作を読んでどうやら2人は再び恋人として一緒に暮らし始めているとのちに知れて私の精神は安定しました)
いやすごかった。本当にいいドラマでした。
一話を見た時に、これはただごとじゃないぞと、その異質感に心を掴まれ、思わず感想文なんかを書き始めてしまい、とうとう最終回まできましたが、最後の最後まで裏切られることなく、見事に原作の世界観を体現してみせてくれました。
緻密な筋運びも本当に見事でした。
4話が一番つらくて過酷なシーンだったと思うんですが、あそこでハオレンの過去を容赦なく描いてくれたからこそ5、6話の2人のかけがえのない時間が際立ったし、2人の楽しく幸せな時間を丁寧に描写してくれたからこそ7、8話の2人の感情がめちゃくちゃ伝わってきて泣いたし、限られた時間の中でものすごく丁寧に感情を積み重ねて描いてくれた作品だと思います。
クズだゴミだド底辺だと散々ダメを描かれてきた2人だけど、結局最後に私の心の残ったのは千紘とハオレンの「強さ」でした。
なにも与えられず、ただ奪われるだけの人生の中で、生きるのを決して諦めなかった。
愛を諦めず、未来を諦めず、やっと見つけた愛にも依存したりもたれかかったりせず、しっかり自分の足で立とうとする2人の逞しく眩しい姿。
大切な人を守ることを何より考えて動ける2人だったことに、そんな2人の成長に、私は死ぬほど感動したし、ここに男性が男性を愛するというBLの素晴らしさを見た気がしました。
様々な実写BLが所狭しと肩を並べる昨今。こんなに骨太で攻めた作品を見れて私はとても嬉しいです。
この作品に出会えてよかった。
すみません。すっかり長くなりましたが。
ただ最後にひとつ。
どうしてもお話ししたいことがあります。
それはマヤのことです。
マヤの最後を知った時、私はもしかしたら一番泣いたかもしれません。
ここに至ってまさかあのマヤに、こんなに泣かされるとは思いませんでした。
マヤの「俺悪いことしてないのに」の言葉は、はったりでも悪ぶってるわけでもなく、本当にマヤは悪いことをしてる自覚が全くないんだと思います。
きっとマヤは善悪の心が育っていないんですね。そして感情をコントロールする力もない。そんな人間として当たり前の事を教えてくれる人も学ぶ環境もなかった。
ハオレンの生い立ちで、ここまで酷い経験をしてよくぞ綺麗な心でいてくれたと以前の感想で書いたけど、それと真逆で、そのまま心が歪みきってしまったのがマヤなのかなと思います。
進む方向こそちがったけど、マヤの言う通り、マヤとハオレンは心の底に流れる孤独と空虚さは確かに同じかもしれないと思います。
だからマヤはハオレンに勝手に同族意識を抱きハオレンに執着したんでしょうか。
そんなたったひとりの心の友(と勝手にマヤが思ってるだけ)のハオレンに殺されかけて、もうこの世になんの未練もなくなったのかな。
まぁマヤの心情をガチで探ると心が病みそうなのであんまりやりたくないのですが。
でも、やはりマヤの最後はあまりにかわいそうでした。
孤児で育ったマヤは、きっと寂しくて寂しくて、心の中ではずっとずっと母親を求めていたんだと思います。
汚い字で、誰も読めない遺書を、誰かも分からない母親にあてて、まるでごみでも捨てるかのよう粗末に自ら命を絶ったマヤ、他人も自分も愛することができなかったマヤ、愛し方を教えられなかったマヤ。
だからと言ってマヤがやってきた悪行が許されるわけでは決してないです。恐らくマヤが死んで、やっと厄介払いができた、とほっとした人が殆どだと思う。
実際私も死んでくれてよかった。これでハオレンと千紘は幸せになれると素直にホッとしました。
それでも。誰からも何も与えられず、孤独で寂しくて寂しくて、心の穴を埋める方法もわからず、ただみんなに嫌われて死んでいったマヤのために、今日くらいは泣いてあげたい。
そんな気持ちになりました。
あとそれからもうひとつ、加治についてですが。
のちに原作を読んで知ったんですが、加治の年齢設定を見て驚きました。
てっきり40代くらいかと思ったらなんと29歳の設定なんですね!なんとハオレンのたった3つしか年上じゃないじゃないですか!!
ということはハオレンをマヤに売った時は加治もまだ19,20歳くらいだったんですね。
加治がハオレンをマヤに売りさえしなければ…と何度も思ったけど、その時は加治だって自分が生きることで手一杯の子供だったんだ。
加治もやはり過去の過ちにずっと苦しめられてる不器用で生き辛い人間のひとりだったのかなと思います。
どうか幸せになった2人を見て、罪悪感という肩の荷を下ろして楽になって欲しい。
そんなことを思ったり。
あとマツキさんですよね。
登場するだけで癒されました。
登場時こそ怖かったけど、逃亡した千紘を今でも気にかけて部屋の紹介したりなにかと手助けしてくれるいい人。
マツキと加治には本当に最後まで救われました。
脇も含めて、とにかく役者さんがよかった。
沢村玲さんがあまりにもハオレンで、ハオレンのあの雰囲気を出せる佇まいに驚かされました。
沢村玲さんは彼活の春名でしか存じ上げなかったけど、これだけの演技ができる方だったなんてほんとびっくりです。
原作のビジュアルとそっくりかと言われるとたぶんそこまでではないんだけど、でもそこにいるのは間違いなくハオレンでした。
寡黙な中に繊細な感情を織り込ませる難しい演技がお見事で、綺麗な顔と緻密な表情作りときめの細かい演技に引き込まれました。
そして別府由来さん。
全くお初だったけど、本当に演技がお上手で驚きました。
原作のまま飛び出たかのような容姿から、千紘のどクズからハオレンを守る騎士になるまでの難しい感情変化、ひとりの人間の成長を見事に演じ切られていたと思います。
若手の登竜門なんて言われて久しいBLドラマだけど、こうやって力のある俳優さんをしれるのがとても嬉しいです。
そうそう。あと古厩監督ですが。
古厩監督って、飴パラの監督さんでもあるんですよね。
知った時は驚きました。飴パラは結構軽めで甘いテイストの作品でしたもんね。
これほど違うテイストの作品を撮れるなんて、ひとりの監督さんが生み出す無限の可能性にとても感動しました。
古厩監督の他の作品も是非見てみたいです。
長くなって申し訳ないのですが。あと、もう少しだけ。
ちょっと気になったことなど少し書きたいのですが。
まずハオレンの刑期。
3年が妥当なのかどうか。あれだけひどいことをしたマヤがたった4年でハオレンが3年の刑期っていうのに納得がいかず、果たして妥当なのか。ちょっと調べてみました。
ハオレンは恐らく殺人未遂罪が適用されたと思うんだけど、殺人未遂の刑期って、だいたい3年~5年らしいですね。
自首してきたこと、その背景に十分同情の余地があるなどの理由から殺人未遂罪の量刑では一番短い3年の実刑となってるんだと思います。
でも初犯だし、そもそも一回逮捕されてるマヤの被害者の子供ってすぐ分かるはずだし、本当なら5年程度の執行猶予がついてもおかしくないと思うので、やっぱりちょっと厳しい量刑なのかなと思います。
あれだけ苦しんだハオレンは全然助けてくれなかったのに、罰だけは容赦なく与える日本の司法、マジで嫌い。
なんて思ったりしました。
それから、最後に大事な問題。
ハオレンは本当に攻めなのか問題についてです。
再三ハオレンが受けにしか見えないと言ってきましたが、この度フォロワー様から貴重なご意見を頂き、また原作を読み直して、無事答えが出ましたのでご報告いたします。
結論を言うと、
千紘はリバ。
ハオレンはトラウマ攻め。
ということになりました。
おめでとうございます。
いやつまり、ハオレンは愛されたがりだし、言動も仕草も、やはりどう見ても受けなんですよね。
ただ、おそらくハオレンは過去にどMの受けをやらされていたトラウマから、精神的に受けができないんじゃないかと思います。
だから私生活では敢えて攻めをやりたい。
そしておそらく千紘は攻めよりのリバ。
ドラマでは元カレ駿一との時は受けっぽい感じだったけど、原作で確認すると元カレの時、攻めでした。
1話で「やられるの慣れてない?」なんてハオレンが千紘に言う台詞もあったし、マツキも攻めっぽくないし、千紘は攻めよりのリバで間違いないと思います。
そんな千紘が、トラウマを抱えて受けができないハオレンの為に受けをしてあげてるんです。
あぁなんという大きな愛!!
まさにケツで恋人を抱く千紘、カッコ良すぎます!!
リバも地雷じゃないけど、どっちかというとと左右固定派な私ですが、これはいい。相手に合わせてポジション変えてあげるのめっちゃ滾ります。
しかもそれがただの性癖じゃなくて相手を想ってっていうのがめちゃくちゃいいですね。ほんと愛だ。泣ける。
これは新しい扉開いたかもしれない。攻め受けひとつとっても一筋縄ではいかないハピエン、ほんと大好きです。
ということで。
あまりにもとりとめのない文章になってしまいましたが💦
ドラマハピエン、本当に最高でした。
私のBLドラマ歴の中でもかなり上位に食い込んできた作品になったと思います。
原作に高いリスペクトと熱量を持って作品を作り上げて下さった沢村玲さん、別府由来さん、古厩監督、スタッフの皆様、そして何より生みの親であり神様でもある原作者おげれつたなか先生、こんなに素晴らしい作品を届けて下さってありがとうございました。
一生忘れない作品がまたひとつ増えました。
2話づつ配信の感想を毎週書くのは思った以上に大変で、己の力のなさを痛感させられましたが、スローペースながらも最後までなんとか書き終えることができてよかった。
ここまでお付き合い頂いた方、もしいらっしゃったら心よりありがとうございました。
ではでは。
またどこかで。
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