脳味噌探し
「脳味噌が盗み取られてる?」
小田島誠也が奇声を上げた。
「なんだ、そりゃあ」
「つ、つまりそういうことだよ」
紙正人がどもりながら答えた。
紙は大学の研究員で、主に脳科学を
専門に研究していた。
「つまり、どういうことなんだよ」
小田島が食って掛かって来た。
「脳は身体の内部機能に指令を出すわけだ。
脳は知覚インパルスと情報を統合して、、知覚
思考、および記憶を形成している。そして」
紙が熱弁をふるっていると、
「わかった、わかった。また、後で聞くよ。
それじゃあな」
小田島は製薬会社のセールスマンで、大学に
試験薬を提供していた」
紙は仕方がないので、研究室に戻ることにした。
「先生。先生の脳の正常な機能が何者かに
阻害されているっていう論文、アメリカの
脳科学学会でも話題になっていますよ」
紙の助手、無向鳥(むこうどり)霞が
パソコンの画面を見ながら報告した。
「まっ、まだ断定したわけじゃないんだ」
紙が頭を搔きむしって呻くと、
「イーッ、なのにアメリカの脳科学アカデミーに
報告しちゃったんですか」
「なんせ、お金と名誉がほしかったもんで」
「呆れた」
「冗談だよ」
紙もパソコンの前に座った。
「ねぇ、霞ちゃん、今度デートでもどう」
紙が誘うと、
「先生、それ、セクはらですよ」
霞が軽く躱した。
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