「キレる」なら戦略的に「キレる」 グローバル人材に必要なのは“わきまえない素質”
■不満をその都度表明する“わきまえない”人になれ
これからの時代が必要とする「グローバル人材」になるためには、周りの空気をあえて読まずに、言いにくいことをどんどん発言していく“わきまえない”人間になることが重要であると思う。
なれ合いながら、なあなあで社会を維持してきた日本人は、自己主張が苦手である。また、“空気を読む”という題目で、同調圧力をかけて、相手の欠点を指摘することなく、相手の行動を変えようとする。思ったことを口にする“わきまえない”人は、そうした集団から排除されてしまうからだ。
しかしそれは、国際社会では通用しない。多様性のある集団では、「言わなくてもわかる」ことなどない。考えていることを口にしない人間は軽視されるし、アホと見なされる。国際社会では「言いにくい」ことでもしっかりと発言することで、一人の人間として認められることになるのだ。
もう一つ「言いにくいこと」を口にする理由がある。自分の人生の主役は、自分自身であるべきだからだ。
「こんなことを言ったら嫌われるかも」「意見が否定されたら恥ずかしい」と物怖じするのは、全ての評価基準が他人になっているからである。しかも、口にする前の段階では他人の評価ですらない。他人から見た自分がどう見えるかの「妄想」でしかないのだ。
人は社会的な生物ではあるが、今際の際を迎える時は一人である。その瞬間を、自分の意思で生きてきたと振り返れる人間こそが賢者なのではないだろうか。
礼儀正しく穏やかなことと、不満をその都度的確に表明することは、見事に両立する。日本人の傾向に関して、海外でよく耳にする点が、「不満があるのに、それを表明するのはみっともないという思いから、耐えて耐えて耐えて最後に爆発的にキレる」だ。
私も日本の地方都市生まれ。そういう傾向を持っていたが、海外で仕事を始めると、このスタイルは本当にまずいと思い直した。なぜなら、海外では「耐えて耐えて耐えている」ところはほとんど理解されないからだ。それどころか何も言わないことは、「納得しているんだね」と思われる。
そして、日本人が我慢の限界で突如キレると、海外の人は驚く。耐えていたことに評価どころか不信感さえ抱き、キレるところに人間としての安定性のなさを見つけ、その日本人の評価は下がる。
不満は最初から、表明すべきだ。その時に気をつけるのは、「穏やかに」「トーンを変えず」「堂々と」「理路整然と」表明すること。これを守れば、不満を口にしても、礼儀正しく穏やかな印象は全く損なわない。
■戦略的ちょいギレのススメ
突然キレるのが駄目ならどうすればいいのか? そこでオススメするのが、戦略的にちょっとだけキレることだ。
大事なポイントは心の中は「平静」であること。
感情的になってキレたらそれは単なるアホになってしまう。敵をつくり未熟な人間だと評価を下げるだけだ。なぜ戦略的にキレることが大事なのか? それは都合よくコントロールされないためだ。注意すべきポイントは、次のとおりだ。
感情的には全然怒っていない
ごくたまに
ここぞというタイミングで(あなたの立場がやや強い時がいいキレ時だ)
ターゲットを絞って(キレる意味がない対象は無視)
あくまでリスペクトフルに(無礼にはならない)
相手のため、全体のため、という大義名分を感じさせる
普段は感じよく。普段穏やかな人がキレるから、ちょいギレでも劇的な効果がある(ギャップ効果)
日常でキレる必要が全くなければちょいギレも必要ないが、世の中はそんなに甘くないだろう。アホの日ごろの態度に「なめんじゃないよ」と思うこともあるだろう。嵐が過ぎればいいように時が解決することは放っておけばいい。
しかし、キレないと中長期的に都合悪くコントロールされそうな事案は、時が過ぎるのをただ待っていてはまずい。その事案への対処法のスキルが、ちょいギレだ。
ちょいギレを有効活用するためには、まず普段から心を鍛え、何事にも感情を乱されないようになろう。感情的には全く怒っていないのにキレたふりをするのは高等技術だ。心を訓練していないと、とてもじゃないができない。
普段はさりげなく不必要なほど過剰ではない範囲で感じがいい人であり続けよう。超天才でもない限り、感情がコンスタントであることが現代そして今後のビジネス社会であなたの価値をあげる最低限の素養だ。そしてコンスタントな人がごくたまにちょいギレすることほど恐ろしいことはない。いわゆるギャップ効果だ。
感情がコトンロールされたちょいギレでもしょっちゅうキレていては、効果も薄れ、評価も下がる。これ以上我慢していたらまずいという限界点で、タイミングをみよう。伝家の宝刀は一回しか抜けないのだ。
いいタイミングは、あなたがやや立場が強い時だ。「あなたに断られた相手が困る」というタイミングがベストだろう。「あなたの代わりがいくらでもいる」というシチュエーションでは相手は「おーそうか!」と対抗心むき出しになる。またはあなたが耐えながらあなたの代わりがいないポジショニングを創り出せていたら最高だ。
キレる時は上品に、キレ過ぎないように。相手へのリスペクトは不可欠である。呼び捨てや不謹慎な言い回しは厳禁。相手を感情的にしない、追い詰めないことを心がけよう。
それがアホと直接対決せずにアホに勝つ手段だ。