「ほめ上手」上級者が“ちょい足し”する最強のことばとは
日本人はほめるのが苦手、とよく言われますが、“食わず嫌い”をしていませんか。SNSの「いいね!」ボタンを押すように、いいなと思ったことを、素直にことばにするだけです。お互いにちょっと照れくさいかもしれないけれど、その瞬間が豊かなひとときになりますよ。
■相手との距離を瞬間で縮めるひとこと
「はじめまして」「こんにちは」などのあいさつの「次」にくることばを、「第二のあいさつ」と呼んでいます。なかでも、次に紹介することばはよく使うことばなので、覚えておくと便利です。
はじめて会う人や久しぶりに会う人と一般的なあいさつを交わしたあと、「お目にかかれてうれしいです」とひとこと添えるだけで、「あなたに会えるのを楽しみにしていました」という自分の思いを伝えることができます。
すると、相手もその思いを素直に受けとめて、うれしくなります。そうなれば一気に距離もぐんと縮まります。
「どんなふうに話を展開しようかな」「どんな会話になるかな」と、その後の時間が楽しみになるでしょう。
あいさつは形式的な表現になりがちですが、そこにちょい足しする相手の立場に立ったひとことが「第二のあいさつ」。お決まりのあいさつを一気にオリジナルに変えるひとことなのです。
■出身地、縁のある土地の話題は最強!
以前に話したことや、前に会ったときの自分の様子などをおぼえていてくれて、さらにそこに「ほめ」が加わると、非常にうれしいものです。このちょい足しことばは、そのなかでも最強の和やかムードを演出できる、相手の出身地をからめたひとことです。
相手の故郷がどこか、または学生時代に住んでいた、留学していた、あるいは勤務したことがある土地を聞いたら、それを覚えておいて、関係がありそうな話題でさらりと出します。
お気づきかもしれませんが、この例文は3つの効果が隠れています。
愛着のある土地に対して一家言ある人は多く、情報もたくさん知っています。興味を持って話に耳を傾けてくれて、そのことに感心してくれたら、相手は満たされた気持ちに。
出身地だけでなく、相手に会ったときに聞いた話やこだわりのありそうな持ちものなど、印象に残ったことは名刺や手帳にメモしておくといいでしょう。
■周りを見渡せば何か見つかる
相手のことをまだよく知らないとき、どこをほめていいのかわからなくなることがあります。そんなときは、その人を取り巻く環境に目を向けるのも手です。
私も以前、仕事のコンペなどで先方に向かう場合は、事前にその会社のホームページを熟読していました。その会社の社長が本を出版していたら、読んでおくのは必須です。でも、期待する情報が得られない場合もあります。
そんなときは、当日、先方のオフィスの最寄り駅から社屋に向かうまでの道で、目を光らせます。素敵な公園やレストラン、個性的な建物があるなとか、社屋の入り口に置いてある、座り心地のよさそうな赤いソファがおしゃれだな、生き生きとした観葉植物がたくさん置いてあるな、などなど……。明るい話題にできそうなもの・こと、相手や相手の会社を間接的にほめられそうなもの・ことを探してみるのです。
そして一言、ちょい足しします。
相手の心をつかむ、第二のあいさつに使えるネタはきっと見つかります。普段から周りを観察するようにしてみると、いざというときにスッとことばが出てくるようになりますよ。しかも、これがなかなかおもしろい。ぜひ一度試してみてください。
■もっともシンプルなほめことば
素直に心から出たことばは、どんなにシンプルなひとことでも胸に響くものです。
本当に「いいな」と感じたことは、そのまま「いいですね」と伝えてみましょう。
「いい」はほめことばの基本。ひねりがないとか、カッコいいことを言わなきゃなどと考える必要はありません。しかも人や動物、ものなどすべてに使えて便利です。
応用しやすいさら足しとしては、「とてもいいですね」「想像以上にいいですね」のように「どのくらい」いいのかを加える方法がひとつ。
もうひとつは、「この水色がいいですね」「使いやすいサイズがいいですね」と「何が」いいのか、「どんなところが」いいのか、その対象ならではのよさに着目する方法があります。このさら足しでは、ほめたいことを「いいですね」の前に持ってくればいいのです。
独り言のように「いいですね。」だけ小さな声で言うのもおすすめ。やや控えめな印象になるので目上の人にも使いやすく、心の声が思わず漏れてしまったようなリアリティもあります。
ほめると、お互いにうれしい共感が生まれます。あまり人をほめることに慣れていなくても、このことばなら簡単ですし、シンプルだからこそ相手の心にも届きます。
(構成/三宅智佳)