町中華のオムライスとカレーはなぜうまいのか?人気店の取材でわかった秘密
■ケチャップ✕豚の脂で中華のオムライス
町中華なのにオムライスの名店とされるのは、東京・浅草の「中華料理 ぼたん」だ。実際に訪ねると、入り口には江戸紫のパリッとしたのれんにぼたんの文字。1948年に創業し、70年以上のあいだ町の中華料理店として地元民の腹を満たしてきた。現在は三代目の店主と四代目の息子が店を切り盛りする。
昼飲みにもぴったりの餃子や、スープを毎朝仕込むラーメンなど、定番メニューの中で近年人気が高まっているのがオムライスとチキンライスだ。芸術点高めの懐かしい見た目もあってか、昔からの常連客に加えて20代の若い層からも支持されている。
中華料理店らしさを感じるチキンライスの味わいは、ラードを使って強火でしっかり炒めることで生まれていた。まろやかなケチャップの酸味と豚の脂のうま味をまとい、一口食べれば頬がゆるむ。上にかかったケチャップとの味のコントラストで、飽きずにペロッと完食。店主の川瀬茂高さんが、惜しげもなく教えてくれたレシピは、『ひみつの町中華レシピ』に収録している。
■まかないから生まれたカレーチャーハン
「ぼたん」の70年には及ばないものの、カレーの名店も創業55年を超える老舗。初代店主が長崎県出身ということから看板商品はちゃんぽんや皿うどんだという東京・西大井の「美華飯店」だ。この美華飯店に、「カレーチャーハン」なるメニューがある。カレー味のチャーハンではなく、チャーハンにカレーをかけたものだ。
約10年前、美華飯店二代目の井手智之さんが気まぐれで、まかないのチャーハンにカレーをかけたことで誕生した人気メニュー。チャーハンはかまぼこなどを入れて甘めに仕上げた既存のものではなく、カレーチャーハン用にアレンジしている。こしょうはカレーのスパイシーさを引き立てるホワイトペッパー。カレールウは市販品だが、「フォン・ド・ボー入りでコクを足し、鶏ガラスープでまろやかに」とこだわりがある。
『ひみつの中華レシピ』は、このカレーチャーハンの作り方も収録。女将の芳さんが「町中華は、どんなメニューも作ってもらえる可能性を感じさせる」と話すように、今後もアイデアを盛り込んだ新メニューが生まれる予感だ。
(構成:ライター・福井晶、団野香代/生活・文化編集部)