あの2文字は禁句! NHKアナウンサーから学んだ感じのいい話し方
ラジオ番組などで、これまで、たくさんの方のインタビューをしてきましたが、「この人と話すとすごく気持ちいいな」、「つい色々と話してしまう」と思う方の共通点を探っていくと、思い当たることがあります。
それは、こちらが投げかける質問の答えが必ず「はい」から始まることです。
たとえば、こんなやりとりがあったとします。
「Aさんって、カバンの中にいつも本が入ってますよね。読書家ですよね」「はい、なかなか読む時間がないんですけどね」
こちらでは、どうでしょう。
「Aさんって、カバンの中にいつも本が入ってますよね。読書家ですよね」「でも、なかなか読む時間がないんですけどね」
自分の質問に対して、答える側の第一声が「はい」だと、聴感上、まずはこちらの発言を受け入れてくれた印象となります。「はい」と答えると、全体的なトーンが明るく前向きになるのに対して、「でも」は後の内容も不満、愚痴のような印象が強くなります。
私を含めて、口癖で「でも」と言ってしまう人は意外とたくさんいます。しかも、「but」の文脈でもないのに、単なる接続語として反射的に「でも」や「けど」を口にしてしまう。
ビジネスでの交渉術の一例として、反論するときは「yes, but法」を使いなさい、とよく言われます。「yes, but法」とは、いったん「イエス」と相手の言い分を認めてから、反対意見を言うことで、こちらの言い分を受け入れてもらいやすくするテクニックです。
これももちろん有効だと思いますが、私は、できるだけ「but」は使わないようにしたいと思っています。なぜなら、結局は「でも」と相手の言い分を否定することになるから。相手に「この人ってやたら『でも』でかぶせてくるなあ……」と気づかずにネガティブな印象を与えているかもしれません。
相手と自分の意見が異なるとき、いかに「でも」を使わず自分の考えを伝えるか。
この悩みについて、ひとつのヒントをくださった方がいます。それは、NHKの真下貴(ましも・たかし)アナウンサーです。以前、真下さんと一緒に金曜お昼どきのゲストトーク番組『BSコンシェルジュ』を進行していたときのことです。
真下さんは、相手の意見に対して「そうですね、でも」と返すのではなく、「そうですね、一方で」と、「一方で」という言葉を使っていたのです。
「そうですね。でも、私はこうだと思います」ではなく、
「そうですね。一方で、こういう意見もありますね」
こう言い換えることで、かなりソフトな雰囲気になりませんか? やや書き言葉のような硬い響きがありますが、声に出してみると意外に違和感なく使えます。
ある言葉を別の言葉に置き換えることを英語で「リフレイズ(rephrase)」と言います。もっと良い言い方はないかな、より良く伝わる表現はないかなと、街の中、メディアなどを、素敵なリフレイズを採集する気持ちで見回してみてください。「そんな小さなこと」と思うかもしれませんが、日々意識して言い換えていくことで、あなたの印象や話しやすさが柔らかく変わっていきます。「あれ、いつもより多めに返してくれている?」と相手の反応からも実感できますよ。
(編集協力/長瀬千雅)