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「あなただからこそ」のスペシャル感が伝わる! 相手をほめる時に“ちょい足し”したいことば

 コミュニケーションに悩みがある人にぜひ試してもらいたいのが、「ちょい足しことば」です。TBSアナウンサーとして活躍後、アナウンサーや有名企業などの重役から新入社員まで、さまざまなビジネスの現場でコミュニケーション法を伝授してきた今井登茂子さんの著書『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)から、感謝の気持ちが伝わり、相手がさらにうれしくなる褒め言葉の“ちょい足し”を特別に紹介します。(タイトル写真:ulkas / iStock / Getty Images Plus)

今井登茂子『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)
今井登茂子『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)

■苦労話を聞いてもらうのはと「ほめ」と同じ効果

 対等な関係性の相手や、部下や後輩などの仕事が「何も言うことなし!」「パーフェクト!」と感じる出来であったときにちょい足ししたい、惜しみない賛辞を紹介します。

今回のイベントはすばらしかったね!

\ちょい足し!/

今回のイベントはすばらしかったね! 完璧!

 さらに、そこから「今回のイベントは、設営が大変だったんじゃない?」「どれくらい前から準備をしていたの?」などなど、「完璧」だと感じたポイントについて質問をして、相手に存分に語ってもらいましょう。なぜなら、自分の経験を人に聞いてもらうことは、ほめられることと同じくらいうれしいものだからです。

 ほめ上手の極意は「聞き上手」。高揚感や達成感があるときは話を聞いてほしくなるもの。そこにじっくり耳を傾けてくれたら、ほめられている以上に満たされた気持ちになるでしょう。

 類義語としては、「満点!」「文句のつけどころがないね」「何も言うことがないよ」などがあります。思いついたら臆せず、ぜひ口にしてみてください。きっと相手を嬉しくさせられますよ。

■あなたの実力を知っていたからこそ

 次に紹介するのは、相手が何かをしてくれたとき、ほかの誰でもなくあなたにしてもらってよかった、という気持ちと、その出来栄えに敬意を示すちょい足しことばです。また、あなたが何かをしてもらったわけではなくても、相手の仕事の成果を目にしたときなどにも使えます。

わかりやすいです!

\ちょい足し!/

わかりやすいです! 深田さんがやると違いますね。

「お客様、納得してくださってよかったです。◯◯さんが話すと違いますね」「今日のネクタイとシャツの組み合わせ、とてもおしゃれです。◯◯さんが選ぶと違いますね」など、さまざまなシーンで活用できます。

 さらに、応用テクニックをひとつ。「◯◯さんが作ると違いますね」とほめたあとに、「コツはなんですか?」と質問してみましょう。会話がさらに広がりますし、もしかしたらあなたも参考になる「私にしかできない」貴重なコツを伝授してくれるかもしれません。

 ふだんからその人の実力や仕事の仕方、出来を信頼し、認めているからこそ、「やっぱり、期待通りでした」と言えるわけで、あなたがいつも関心を持っていることも伝わります。

■頻繁に使うと逆効果

 テレビでインタビューなどを見ていると、「リスペクトしています」ということばがよく聞かれますが、それを社会人が使う日本語で言えば、「尊敬」。まずは特に上司や先輩など目上の人の言動や姿勢に対して「すごいな、さすがだな」「リスペクトしてる!」と思ったときに使いたいちょい足しことばを紹介します。

ずっと勉強されているのですよね。

\ちょい足し!/

ずっと勉強されているのですよね。尊敬しています。

 さらに足して、「みんなが気がつかないところに目を向けてくださって、◯◯さんのそういうところを尊敬しています」という具合に、「◯◯さんの」と相手の名前を呼びかけたうえで、「どんなところ」を尊敬しているかを具体的に伝えると、より「濃い」ほめことばになります。

 とはいえ、頻繁に、誰に対しても「尊敬しています!」と連発していると、ことばが軽くなってしまい、ただのご機嫌取りに聞こえてしまうこともありますので、口癖にするのは避けたいことばでもあります。

 そして、もちろん、誰にでも使えます。「どんなときも明るく応対しているね。私、◯◯さんのそういうところを尊敬していますよ」と上司や先輩から言われたら、やる気も倍増するはずです。

著者の今井登茂子さん(写真:本人提供)

■社外で使うときは気をつけて

「あっ、なるほど! それは考えつかなかった!」といったことばはよく使うのではないでしょうか。そこをグレードアップして、「私」という主語を明確にすることで、より強く感心の気持ちを伝えることができるちょい足しことばです。

Aさん:この方法だと、コストが2割カットできそうなんです。
Bさん:名案ですね。

\ちょい足し!/

名案ですね。私では思いつきませんでした。

 そして、このことばは、ぜひ、ちょい足しならぬ、さらにことばを足す“さら足し”をおすすめしたい!

「どうして」「どんなふうに」「いつ」など5W2H(「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」「How much:数・量」)を意識して、相手のアイデアの背景を質問していくのです。相手はきっと気持ちよく話してくれるはずです。するとより深くそのアイデアの内容を理解できますし、会話も弾みます。そして、あなたの今後にもきっと役立つはず。

 このひとことは、使う場面を意識してください。たとえば、社内のチームで仕事をしているときはシンプルに個人の賛辞として伝わります。しかし、社外の人たちがいるところで使うと、「会社」として思いつかなかった、と見られてしまうこともあります。プレゼンテーションやライバル社もいるコンペの場で発言したら、会社代表としての敗北宣言になることも……。自分の立場を考えて使いましょう。

■能力だけでなく、努力や気づかいに対しても使える

 さらりと他者をほめるのは、とても品を感じる行為です。しかしながら、ことばを選んだり照れくさくて躊躇しているうちに、タイミングを逃すこともしばしばです。

 そこで、さらりと口にできる“ちょい足し”ことばを紹介します。

お祝いでいただいた花束、花瓶に活けておきました。センスいいですね。

\ちょい足し!/

お祝いでいただいた花束、花瓶に活けておきました。センスいいですね。誰にでもできることじゃないですよ。

 このちょい足しことばは、「ほめの程度」は大きい部類に入り、言われた相手は、じんわり熱いものがこみ上げるメッセージです。でも、口にしてみるとわかるのですが、不思議なことに、とても軽やかに発することができるのです。

 能力やセンスに対してだけでなく、たとえば、会議後に乱れた椅子を整えている人、毎日お弁当を作ってきている人、夏休みを使って災害ボランティアに行ってきた人など、感心・称賛したくなる努力や気づかいにも使ってみてください。

 類義語としては、「あなたにしかできないことです」などもあります。あなただからこそできたスペシャルなこと、というたっぷりの称賛を、ぜひ相手に伝えてあげてください。

 今回紹介した“ちょい足しことば”は、さりげなく会話に加えられたら、すごく好印象なものばかりです。いやみのない「ほめ」のちょい足しことばを、ぜひ活用してみてくださいね。

(構成/三宅智佳)