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たんぱく質が「眠りの質を高める」!筋肉量を維持するだけじゃない健康効果

 私たちの体は60%が水分。そして、残りの40%のうち半分程度をたんぱく質が占めている。日本人は、そのたんぱく質の摂取量が不十分だという。
 たんぱく質は、体をつくっている物質の主成分。体を動かしたり、体それぞれの機能を調整する血液やホルモン、酵素などもたんぱく質からできている。早稲田大学の宮地元彦教授監修の『美容・健康・免疫力アップ からだづくりに欠かせない たんぱく質のきほんとレシピBOOK』(朝日新聞出版)が、たんぱく質をとることで得られる健康効果を詳しく解説している。ここでは、よく知られている「フレイル予防(筋肉量の維持)」に加え、「ホルモンバランスを整える」「睡眠の質を高める」という効果について、紹介したい。

監修:宮地元彦/料理:ほりえさちこ『美容・健康・免疫力アップ からだづくりに欠かせない たんぱく質のきほんとレシピBOOK』(朝日新聞出版)
監修:宮地元彦/料理:ほりえさちこ『美容・健康・免疫力アップ からだづくりに欠かせない たんぱく質のきほんとレシピBOOK』(朝日新聞出版)

■筋肉量を維持してフレイルを予防

 たんぱく質を意識してとっていると、筋肉量の低下を防ぐことができる。筋肉量が増えると血行が促進され、冷えや肩凝り、腰痛なども改善されるほか、基礎代謝量も上がるため、ダイエットにも効果的。また、筋肉量を蓄えておくと高齢になったときに筋肉の減少が抑えられ、フレイルやサルコペニアの防止になる。元気で生き生きと過ごせる時間、つまり健康寿命が延びるわけだ。

 重要なのが、たんぱく質をとるタイミング。食事と食事の時間があけばあくほど、たんぱく質が足りなくなり、筋肉が分解されてしまう。1日の必要量をいっぺんにとっても、効果は半減。1日3回の食事に分けてとる必要がある。とくに、夕食のあとは10時間以上たんぱく質をとっていないことになるので、朝食ではたっぷりとって、不足を補いたい。

 たんぱく質を多く含む食材で朝食に適しているのは、消化のよい卵や納豆、豆腐。目覚めたばかりの胃腸にもやさしい。昼食なら、カロリーはそれほど気にしなくてもいいので、筋肉をつくるBCAAが豊富な肉類を積極的に取り入れて。スパゲッティなど、たんぱく質を含む穀類もおすすめだ。カロリーを控えめにしたい夕食には、DH、EPといった良質な脂質を含む魚介類や、豆腐などの植物性たんぱく質を中心に。肉類は脂質の少ない部位を選ぶといい。

■ホルモンの働きをスムーズにする

 体内のさまざまな器官から分泌され、体の機能を調節しているホルモン。たんぱく質はホルモンの材料ともなっているため、たんぱく質を十分にとることでホルモンがスムーズに働き、体調が整っていく。とくにホルモンの働きの影響を受けやすいのが女性。エストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンのバランスによって、定期的に月経やそれに伴う体調変化が起こる仕組みになっているからだ。

写真:キッチンミノル

 ホルモンバランスが乱れると、月経前症候群や生理不順のほか、自律神経が影響を受けることで、頭痛や動悸、のぼせといった不調が起こる場合もある。さらに更年期にはホルモンバランスが乱れやすくなり、こうした症状が表れることが多くみられる。女性ホルモンの材料であるたんぱく質に加え、コレステロールも適度に補給し、ホルモン変化の影響を少しでも減らしていきたい。

 大豆や豆腐、油揚げ、厚揚げなどの大豆製品には、女性ホルモンの一つであるエストロゲンと似た働きをする「大豆イソフラボン」が豊富。低カロリーな植物性たんぱく質を補う意味でも、積極的に活用したい。また、女性ホルモンのもとになるコレステロールは肉、魚、乳製品、卵の動物性たんぱく質に豊富。カロリーが高いと敬遠しがちだが、まったくとらないとホルモンがきちんとつくられなくなる。適度にとるようにしたい。

■メンタルも睡眠の質も高めてくれる

 脳内で神経伝達物質として働いている、ドーパミン、セロトニンなどのホルモンもたんぱく質からつくられている。ドーパミンは意欲や幸福感をもたらすホルモン。幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは、精神を安定させて不安を抑える働きのほか、睡眠ホルモン「メラトニン」の材料になり、眠りに導く役割も持っている。たんぱく質をきちんととることで、これらのホルモンもつくられやすくなり、ストレスに強くなったり、よく眠れるようになるなどの効果が期待できる。

 ここで注目したい成分が「トリプトファン」。大豆製品や乳製品、ナッツに含まれるトリプトファンは必須アミノ酸の一つで、セロトニンの材料。眠りに関与するメラトニンはセロトニンからつくられるため、摂取することで睡眠の改善も期待できる。動物性たんぱく質に含まれるBCAAは、トリプトファンが脳に取り込まれるのを邪魔する性質があるが、炭水化物、まぐろや鶏ささみ、鶏レバーなどに豊富なビタミンB6を一緒にとることで、その働きを抑えることができる。

(構成:生活・文化編集部 森香織)