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優秀な人が理不尽でも笑顔で「ノープロブレム」と答える深い理由
周囲に、あなたの時間・エネルギー・タイミングを奪う人はいないだろうか? 『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(田村耕太郎著/朝日新聞出版)から、理不尽で不愉快な存在との対処法を一部抜粋で解説する。(タイトル画像:RyanKing999 / iStock / Getty Images Plus)
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■感情が一定していることが高評価に
人生において、心を落ち着かせて平静であることは非常に大事だ。しかし、理屈でなく、感情で動く人間は多い。あなたが冷静になろうとしても、非論理的な言い分で、感情的につめられると言い合いになり、気まずい雰囲気になってしまうこともあるだろう。特にアホとの関係において発生しがちな心配事だ。そのような場合には、どう対処すればよいのだろうか。
まずは、「気にしない」ことにしよう。平常運転が一番だ。険悪になる必要は全くないし、異常に気を使って過去を埋め合わせようとすることもよくない。人間は「忘れる動物」だ。相手も忘れる。しかし、険悪な〝嫌い〞オーラを出し続けたり、必要以上に気を使って下手に出たりすると、忘れてもらえなくなってしまう。
そこで、気まずくなった関係を気に病むのではなく、まずは自分の成果を出すことに集中しよう。成果を出したり、成果を出すべく奮闘したりする姿で一目置かせよう。そうすれば過去のことは忘れやすくなり、あなたの印象はさらによくなるばかりだ。
ひょっとしたら、会社の評価を受けて、その人をコントロールできる立場にあなたの方が早くなるかもしれない。何より、仕事を頑張れば、あなた自身がその一件を早く忘れられる。あんなことをひきずっていたのはアホだったなあと思いなおすようになるだろう。
済んだことは忘れることだ。あまりに理不尽なら不満顔になるのも仕方ないだろう。ただ、今後は「世の中は理不尽さにあふれている」と思いなおすことだ。それが当たり前という前提に立てばいい。私自身について言えば、そんな理不尽な状況は起こって当たり前と思っているから、泰然と構えている。
海外にいると日本とは違う意味で、理不尽なことしかおきない。そんなことでいちいち感情を乱していては「頼りないやつ」「感情をコントロールできない弱い人間」の烙印をおされてしまう。
世界共通で高い評価を受けるには「あいつはいつも感情が一定」と思われることだ。そうすれば人徳があり、能力に自信がある人物と思われ、理不尽な人間から大人物まで、評価してくれる一方となる。
何か理不尽なことを言われても、笑顔で「ノープロブレム」「ははは、そんなこともあるよ」と受け流し、あるいは、「指摘してくれてありがとう」と嫌味なくお礼を言おう。
理不尽な目にあっても、陰口は厳禁。そして、陰口はどんな形であれ伝搬をコントロールしようとしても難しい。必ず相手に伝わり、相手の憎しみは倍増する。全く何のプラスにもならない。自分の人間としての器の小ささを宣伝するようなものだからだ。嫌な気分を発散するなら、陰口ではなく「ガス抜き」をするようにしよう。
ガス抜きのためにすべきことは、忘れること、本業に集中すること、友人や家族と楽しい時間を過ごすこと、奮発してすごくおいしいものを食べること。これらでだいたい見事にガス抜きできる。そうでないなら、自分なりのガス抜き方法を見つけ出すといい。
物事は主観的なとらえ方が全てだ。人生には理不尽しかないと悟れば、たいていのことは我慢できるし、アホの存在を頭から消し去ることができるだろう。
■メタ認知で心を落ち着かせる
それでも、どうしてもアホに心乱されることもあるだろう。そのような場合には、「幽体離脱」をしてみよう。
メジャーで投打に大活躍の大谷選手は、2021年にホームラン王を最後まで争った。厳しい戦いを最後まで走り抜いたが、報道によると好調の要因の一つとしてベンチでタブレット端末が使用可能になったことがあるそうだ。2020年以前は、ベンチのビデオルームで自身の投球や打席を映像で見てフォームを確認することが禁止されていたという。
メジャーリーグ中継を見ていると、大谷選手が打席や投球の合間にタブレットを入念に見ていることがよくある。あれは相手の投手の配球や打者の成績とともに、自分のフォームを確認しているのだ。調子がいい時にはフォームを維持し、悪い時にはいい時に合わせてフォームを整える。そのためには、映像を見るだけではダメだ。自分を客観視する時間が必要だし、客観視する時間を大事な決断や行動の前に持つことが大事だ。
そういえば、私も今までよりゴルフの上達がスムーズに感じるが、それは自分のスイングを常に即ビデオで確認できる個人レッスンを受けるようになったからだ。自分の動きが自分の想像とはどう違うのかということを確認してアプローチできたら、修正は速い。
人生において自分の能力を最大限に活かし、それを拡張するには、幽体離脱つまりメタ認知が不可欠ということだ。それはアホに対しても、同じ。
アホとの不毛なやり取りに心が乱されたら、客観的に上から眺めよう。「ああ怒っているなあ」「怖がっているなあ」と気づくのが第一歩となる。
そしていったん深呼吸してゆっくり6つ数える。ゆっくり6つ数えるうちに感情は人間を支配する力を失う。そこでもう一度目的に立ち返ろう。
感情が揺さぶられた原因を思い直し、それをどう最適な決断やそれに基づく正確な行動に活かせるのか、上からビデオカメラで自分を見ている様子を頭に浮かべよう。イメージとしては、自分の心や体が自分の思う通りに動かせているか、自分が自分から抜け出して上から横からビデオ映像を眺めるように確認する。
これで、アホに対峙した時も普段の自分と同じように接することができる。