冬号は創作が3本と充実、豪華対談も実現。長期連載2本が堂々完結!<「小説TRIPPER」2022年冬季号ラインナップ紹介>
◆創作
江國香織 「川のある街Ⅱ」
川の流れる小さな地方の市街地。海に面したその一帯を縄張りにするカラスたち一羽一羽の生態と、彼らが生息している同じ土地を舞台に、先祖代々暮らすもの、地縁から離れようとするもの、旅で訪れたもの、そして子どもたち――街にかかわる人々とカラスたちの姿を同じ質量で描く野心作。前作「川のある街」につづくシリーズ第二作。
王谷晶 「君の六月は凍る」
7月の初めにわたしはその事実を知り、30年会っていない君のことを、そして君が住み続け、わたしが離れてしまった故郷の光景を思う。みんなが知り合いのこの小さな町で、君はいつもひとりでうろついていた――哀切を込めて描かれるふたりの出会い、交流の鮮烈な記憶。
森絵都 「あした天気に」
うだつの上がらない会社員の一平は、ある日何気なく作ったてるてる坊主から不思議な出来事に巻き込まれ始める。久々の帰省、そして”あの日”以来となる高校の同級生・小春との再会に、一平の心は揺れ……。読めば心はればれ、晴天の青空のように爽快で愛らしい傑作短編。
◆対談
辻村深月×加藤シゲアキ
朝日文庫創刊45周年を記念して、この秋に著作を文庫化した著者二人によるスペシャル対談! 文庫化された『傲慢と善良』『できることならスティードで』をお互いにどう読んだのか、また文庫化の意義から創作活動についてまで、広く語り合う。
◆連載完結
小川公代 「世界文学をケアで読み解く」
現代人が失いつつある「他者へのケア」は、以前にもまして注目されている。最終回は「死者の魂に思いを馳せる――想像力のいつくしみ」。ノーベル文学賞受賞者のトニ・モリスンの『ビラヴド』、目下映画化でも話題になっている平野啓一郎『ある男』、石牟礼道子『苦海浄土』、ドリス・レッシングの『夕映えの道 よき隣人の日記』をあつかう。
藤井義允 「擬人化する人間――脱人間主義的文学プログラム」
朝井リョウ、村田沙耶香、平野啓一郎、古川日出男、羽田圭介、又吉直樹、加藤シゲアキら2010年代に発表された文学作品を、1991年生まれの新鋭の書き手が「人擬き」という感覚を手がかりに、読み解いてきた文芸評論の最終回では、アーティスト・米津玄師の作品を俎上に載せる。所与として情報化社会を生きる世代にとっての「文学」の意味を問う。