「脳トレ」の川島研究室考案!無理なくできる“脱スマホ習慣”【スマホはどこまで脳を壊すか】
■私たちの生活はオンラインなしには成り立たないのか?
本書では、オンライン習慣が持つリスクについて、科学的、医学的な根拠となる研究の結果をご紹介しながら明らかにしました。
オンラインでは前頭前野がはたらかず、ものを覚えることができなくなり、誰かと心を通わせることもできません。幼いころからオンライン習慣を続けてしまうと、学力が下がり、脳の発達も止まってしまいます。大人になってからもオンライン頼りの生活で前頭前野をサボらせ続けてしまうと、少しずつ脳がむしばまれていき、使わない機能から失われていってしまいます。
脳が最も発達する幼少期から、脳を使って機能を維持していくべき成人期までを通して、オンライン習慣を送ってきた人たちが65歳を迎えたとき、認知症になってしまう可能性が高くなるという最悪の未来まで見えてきています。
そんなリスクだらけのオンライン習慣と、21世紀を生きる私たちはどのように付き合っていけばいいのでしょうか。
考え方は至って単純です。オンライン習慣のリスクを遠ざけたいなら、インターネットを使わなければいいわけです。
とはいえ、口で言うのは簡単ですが、実行に移すのは難しいものです。オンライン習慣にリスクがあることをわかっていながらも、なかなかやめられないという方々が多いのではないでしょうか。偉そうなことを言うからには、まずは自分がやって見せなくては説得力がありません。そこで自分を実験台にして、脱オンライン習慣が本当に可能なのか、実験をしてみることにしました。
実験の様子は本書に詳しく書きましたが、実際に脱オンライン生活を体験してみるとたくさんの気づきがありました。私たちの普段の生活がいかにオンライン頼りになっていたのかを痛感しました。
■今日からできる脱オンライン習慣のススメ
私の実体験も踏まえて、みなさんに脱オンライン習慣の取り入れ方をご提案します。
まずはいまの自分にどれだけオンライン習慣がついてしまっているのか把握することがスタート地点になります。みなさんも、少なくとも平日と休日の1日ずつで構いませんので、自分自身の生活の記録を取ってみてください。
いまの状態がわかったら、続いてそれぞれのオンライン習慣が必要不可欠なものなのか、他のアナログな方法に置き換えられないのかを考えます。参考までに、【表1】で私と担当編集者が実験を通じて把握できたオンライン習慣と脱オンライン生活をご紹介します。
オンライン習慣のうち、必要不可欠なものは残します。必要不可欠とまではいえなくても、置き換えた場合のメリットとデメリットを天秤にかけて、デメリットの方が大きければ、そのまま維持しても差し支えないでしょう。
仕分けのポイントは二つあります。一つはオンラインでなければ絶対にできないことなのかどうかです。海外など遠くに住んでいる人と頻繁にやりとりを行なうということは、オンラインでしかできません。また、ニュース速報など情報を即座に得られることもオンラインの特権です。
もう一つは、楽をしても差し支えない行動かどうかです。脳に負荷をかけて発達を促すことが必要である、勉強などの学習に関わる行動は決してオンラインに置き換えるべきではありません。また、相手の気持ちを推し量ったり自分の感情を制御したりする前頭前野の機能が必要な、コミュニケーションに関わる行動も、オンラインには置き換えられません。
反対に、お店での会計や公共交通機関の支払いは楽をしても差し支えない行動なので、スマホ決済などは維持する価値があると思います。
ここまでできたら、最後に実践です。まずは平日と休日、それぞれ1日ずつで構いませんので、脱オンライン生活を体験してみてください。実際に取り組んでみて、改めてオンライン習慣の取捨選択を行ないましょう。アナログな方法に置き換えてみて問題なかったものは、そのまま続けましょう。逆に使えなくなって著しく不便に感じたものは復活させます。
ちなみに私がアナログの方法に置き換えたのは、スマホのアラーム、ネットニュース、インターネット動画です。
みなさんも自分のオンライン習慣を顧みて、取捨選択してみてください。この方法であれば、一人ひとりに個別化された最適な脱オンライン習慣を無理なく作ることができます。