『納税、のち、ヘラクレスメス のべつ考える日々』発売!! 巻末収録の品田遊さん×古賀及子さん対談「日記を毎日書くふたり」冒頭公開
●対談 品田遊×古賀及子 日記を毎日書くふたり
目的なく日記を毎日投稿しているのって怖いですよね
●古賀及子(以下、古賀) 日記の本を出してから、すっかり日記枠の人になってしまいました。品田さんは、そもそもどうして日記を書き始めたんですか?
●品田遊(以下、品田) Twitterに140字以内で自分の考えを書くことに自分が慣れ過ぎてしまっているなと思ったんです。拡散に直結しないような場所で、画用紙に描くような散文を好き勝手に書きたくて始めました。最初は不定期で書こうかなと思っていたけれど、そうすると今日は書く日、今日は書かない日って頭で考えなきゃいけないから、毎日書くより難しいんですよね。毎日なら頭じゃなくて身体で書けるんです。古賀さんはずっと日記を書かれていたんですか?
●(古賀) 紙の日記を書いたことは1回もないんですよ。インターネットで日記を公開するようになったのは、きっと三日坊主で終わるだろうけどやってみようという軽い気持ちだったかな。日記を毎日公開することでどうなりたいという目的も、はじめはなかった。目的がないのに毎日日記を書き続けていることって、客観的に考えると怖いですよね。
●(品田) そうですよね。日記を始めて半年ぐらいのときに、何のためにやっているのかは不問にしようと決めたようなところがあります。目的を定めちゃうと観光名所を巡る旅行みたいになってしまう気がして。「謎に日記を書いている」という設定にしてしまおうと。「前提として、こいつは毎日謎に日記を書いている。そして……」のもう「そして」だけ考えるようにしちゃおうかな、と。
●(古賀) それは、身体で日記を毎日書き続けていることに繋がるような気がします。
●(品田) 食事の記録をとったり体温を測ったりするのと同じ感覚で日記を書いているのかもしれません。そうすると、明らかに体調の悪い日がわかるんです。誤字脱字が明らかに増えたり、内容も暗い方向に行きがちだったり、自覚できないバイオグラフィーのようなものが文字に反映される気がします。古賀さんもそうですか?
●(古賀) 私は毎日絶好調なんですよ。日記を書くようになったら、毎日書かないと書けないなって私も気づいて、毎日書くようになったらどんどん上手くなって。私はそれまで上手くできることがなかったんです。スポーツも語学も苦手だし、勉強もできなかった。でも日記だけはすごく上手く書けるなって気づいたんです。よく誰でも1個は上手くできることがあるって言うけれど、私はそれが日記なんじゃないかと思うぐらいに。私にとっては自分を奮い立たせるものになっています。こんな日もあるけど、私、日記は上手く書けちゃうんですけどねってすごく元気になる。
●(品田) 私は逆ですね! 「自分はもしかしたらすごいのではないか」って気持ちが、日記を書くことで完全になくなりました。同じことをしているのに……。ただ、そのおかげで自分に変な期待をしないで済むようにもなりました。毎日テキストを打っていたら7日間の平均はこれくらい、1年の平均値はこれくらいってわかってくるので。その平均値が65点だったら、200点とか300点を出せる日はまあない。だからラクになったという面もあります。
●(古賀) もっと面白くならなきゃと思わなくていいってことですね。私はもっと上手くなろうとしているし、なっている実感があるんですよね。でもそれは、それくらい日記に縋って、日記というブイに摑まっているからそう思っちゃっているのかもしれないです。
面白いことをこれから言うんですけれど……、私、私自身に日記をつけていることを秘密にしているんです。
●(品田) 面白い!
●(古賀) そうでしょ。私は私が家族とどんなコミュニケーションをするか、どんなことを考えているかっていう在り様を観察して日記を書いている。私に日記を書いていることがバレると邪念が生じて演じ始めちゃうから、秘密にしています。
●(品田) その捉え方も私と逆です。私の日記は邪念が書いています。流れゆく時間を生きている自分というものが希薄なんですよね。たとえば、映画を観ている間もずっと感想を考えているので、その映画を観ているときに自分が何を考えているのかわからない。今まさに目の前で生成されている現実に何かを思っている自分は空洞なのに、それについて書こうとしている自分は滅茶苦茶活発に動いていて、変だなあと思います。
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