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夏季号は創作が1本に、新連載2本スタート! 新刊をめぐる評論と対談も。〈「小説TRIPPER」2024年夏季号ラインナップ紹介〉

 2024年6月18日(火)発売予定の「小説トリッパー」2024年夏季号は、高山羽根子さんの創作「パンダ・パシフィカ」を掲載いたします。さらに、武内涼さんによる長編歴史小説「歌川 二人の絵師」と、鴻巣友季子さんによる本格文芸評論「小説、この小さきもの~孤独、共感、個人~」の連載がスタート。また、新刊『ひとつの祖国』までに至る貫井徳郎さんの作品を分析した千街晶之さんの評論、川上弘美さんの新刊『明日、晴れますように 続七夜物語』をめぐる田中慎弥さんとの対談を掲載します。

◆創作

高山羽根子 「パンダ・パシフィカ」

 春先になると花粉症で鼻が利かなくなるモトコは、副業で働くアルバイト先の同僚・村崎さんから自宅で飼う小動物たちの世話を頼まれる。2008年、上野動物園ではパンダのリンリンが亡くなり、中国では大地震と加工食品への毒物混入事件が起きる。命を預かることと奪うこと。この圧倒的な非対称は、私たちの意識に何を残すのか? テロルの時代に抗う、小さく、ささやかな営為を描く問題作、一挙掲載285枚。

◆新連載

武内涼 「歌川 二人の絵師」

 東海道五十三次など当時の日本の情景を描いた武家出身の歌川広重、常識破りの奇想絵で人気を博す歌川國芳――切磋琢磨しあう好敵手でもある二人の天才は、幕末という時代を反骨精神で席巻していくが……。世情騒がしい幕末を舞台に、現代の状況と重ねて描く長編歴史小説。

鴻巣友季子 「小説、この小さきもの~孤独、共感、個人~」

 私たちは孤独ゆえに小説を生みだし、小説を読み書きするゆえに孤独を深めてきたのかもしれない。物語はいつどのように韻文の詩から散文の小説的なものへと向かっていったのか。「共感性読書」の波が席巻する現在、小説という散文形式の発展を読み解くことで、人間性の核心を考察し、私たちはなぜ物語を必要とするのかを問う本格文芸評論。

◆評論

千街晶之 「この世界の表と裏――『ひとつの祖国』と貫井徳郎論」

 本誌で連載をしていた貫井徳郎さんの最新刊『ひとつの祖国』が5月7日に発売となりました。デビュー作『慟哭』から本作品に至るまでの30年を超える軌跡を、ミステリ評論家の千街晶之さんが精緻に分析をする作家論です。

◆対談 川上弘美×田中慎弥

ファンタジーから日常へ――『明日、晴れますように 続七夜物語』をめぐって

 川上さんによる長編ファンタジー『七夜物語』の続編として書かれた『明日、晴れますように』の刊行記念対談。二つの作品の違いに時代の要請を見出す田中さんの指摘から、ファンタジーという小説の形式について、さらには同時代の作家としていかに時代と向き合いながら小説を書いているかをめぐって対話が展開。大きな広がりを見せる充実の初顔合わせ。