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【8コマ人類史】「浮気は人間の本能」そんな言い訳を人類“進化”の観点で論破する

 浮気がばれて、「これは確実に子孫を残したいと思う人間の本能」などとのたまう人もいるようですが、それは昔から続く「デマ」。浮気をした人にとって都合のいい勘違いです。『ざっくりわかる8コマ人類史』(監修・更科功、まんが・木下晋也/朝日新聞出版)では、そんな人類にまつわる謎や疑問や迷信を、8コマまんがでざっくりゆる~く解説。今回は、浮気の言い訳を進化の観点から論破します。

監修・更科功/まんが・木下晋也『ざっくりわかる 8コマ人類史』(朝日新聞出版)
監修・更科功/まんが・木下晋也『ざっくりわかる 8コマ人類史』(朝日新聞出版)

 酔っ払ったノリスケがフラフラと歩いて、妻のタイコと子のイクラのために寿司折を持ち帰る――。漫画『サザエさん』で定着した酔っ払いおじさんのトラディショナルなスタイルですが、実は人類の祖先も同じようなことをしていたようです。

 人類最大の特徴は、直立二足歩行です。直立二足歩行ができる生物は、長い進化のなかでも人類しかいません。

 では、複数の類人猿がいるなかで、なぜ人類だけが直立二足歩行を進化させたのか。その理由として考えられるのが、「オスが家族を養うのに直立二足歩行が有利に働いた」という説(食料運搬仮説)です。

 現在、日本をはじめとする多くの国は「一夫一妻制」をとっていますが、法律で定められる前から人類の祖先は、一夫一妻制でした。これは、類人猿では珍しいケース。例えばチンパンジーは乱婚ですし、ゴリラはたいてい一夫多妻制です。人類が、一夫一妻制になった理由は定かではありませんが、他の類人猿に比べて育児に労力がかかるからなど、いくつかの説があります。

 メスが未熟な子を抱えて、食料を探し回るのは困難でしょう。そのためオスは、自然と家族に食料を運ぶようになりました。その際、四足歩行だと、少量の食べ物をくわえることしかできないので、えさ場とすみかを何度も往復しなければなりません。一方、直立二足歩行であれば、一度にたくさんの食べ物を両手に抱えることができます。そのため効率的に食料を収集でき、生存や繁殖においても有利だったと考えられるのです。

 仮に人類が乱婚だった場合、オスは自分の子どもを見分けられないので、メスや子に食料を運ぶ行動が進化しません。

 しかし一夫一妻制なら、ほぼ確実に自分の子であるため、「より多くの食料を運搬できる能力」が、自分の遺伝子を残し増やすことにも強く結びつくのです。食料運搬仮説は、人類が類人猿から分かれ進化した理由として、現在最も有力な説となっています。

©Shinya Kinoshita/Cork

「複数の相手と子孫を残したいと思うのが人間の本能」

 そんな浮気の言い訳、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?

 もうお分かりのように、進化の観点から見れば、この言い訳は説得力が弱いのです。一人のパートナーと絆を育むのが、人類の原点といえるでしょう。

 もちろん、霊長類の中にも、テナガザルのように一夫一妻的なペアを作る種はいます。ただし、人類以外の種はペアごとに離れて暮らしていて、集団の中でペアを作ったのは、人類が初めてでした。

 また、類人猿の場合、一夫多妻でも多夫多妻でも一夫一妻でも、メスは子育てをします。ただ、オスが子育てに参加するかどうかは、場合によって違います。人類は一夫一妻になることで、オスも子育てに参加するようになったと考えられているのです。

(構成/ライター 澤田憲/生活・文化編集部 野村美絵)