見出し画像

「手みやげ」は季節の先取りでランクアップ! 和文化研究家が教える選ぶポイント

 和文化研究家で、All About「 暮らしの歳時記」ガイドを務める三浦康子さんは、「東京 手みやげと贈り物【最新版】」(アサヒオリジナル/朝日新聞出版)の中で、手みやげ選びのポイントに「季節」を挙げている。
「日本の四季を感じさせる贈り物は、目上の人や少しかしこまった場面にもぴったりのアイテム。旬の食材や花をテーマにしたもの、日本の年中行事にまつわるものをチョイスすれば、相手に手渡すときの会話が弾むこと間違いなしです」と三浦さんは話す。肝要なのは、「少しだけ季節を先取りする」こと。ムックから、そのノウハウを紹介したい。

「東京 手みやげと贈り物【最新版】」(アサヒオリジナル/朝日新聞出版)
「東京 手みやげと贈り物【最新版】」(アサヒオリジナル/朝日新聞出版)

■山笑う春/3~5月

 花が咲き、鳥は歌い、草木が芽吹くこの時季は、雛祭り、お花見、入学、端午の節句など、華やかで夢が広がる行事が続く。桜ひとつとっても、桜の花や桜の葉の塩漬けを用いた菓子や、桜をモチーフにしたスイーツがたくさんあり、選ぶのも楽しい。

le pepin の「フルール ドゥ ボンボン ブーケ」(6 本入り648 円)

 例えば、le pepin の「フルール ドゥ ボンボン ブーケ」(6 本入り648 円)は、自家製ナッツペーストを抹茶、ミルク、ストロベリーのチョコでコーティングした、ロリポップ型チョコレート。花束のような包装のこのお菓子を、花々が咲き始めるタイミングで訪れる卒業や入学のお祝いに添えるのはどうだろう。向島長命寺桜もちの「桜もち」(1 個250 円)は、隅田川沿いの名物として300年以上も受け継がれ続ける春の風物詩。北海道産小豆餡を薄皮餅で挟み、塩漬けにしたオオシマザクラの葉で包んでいる。桜の花が散る前に届けたい贈り物だ。

■山滴る夏/6~8月

とらやの「水無月(みなづき)」(1個270円)

 6月限定の和菓子、とらやの「水無月みなづき」(1個270円)は、今年前半の穢れを祓う「夏越しの祓」の行事食で暑気払いにぴったり。七夕には天の川を、梅雨には紫陽花のように雨が似合うモチーフの菓子を贈ると、受け取るほうもテンションがあがるはず。

 鳩サブレーで知られる老舗和菓子店・豊島屋の「あじさいだより」(1箱972円)は、毎年紫陽花の季節にだけ販売される限定アイテム。色とりどりの金平糖で紫陽花を表現した涼しげなお菓子だ。梅雨が明けて夏本番となってからは、冷やして食べたいゼリーや水羊羹などがおすすめ。ほかの季節と異なり、夏の贈り物で大切なのは、暑さに配慮すること。涼しげで風流な見た目やすっきりとしたのど越しを届けたい。

■山粧う秋/9~11月

 重陽の節句(菊の節句)に十五夜と十三夜のお月見、紅葉狩り……。秋色に染まるこの時季は、風雅な風物詩にまつわる品を選ぶといいだろう。この時季ならではの菓銘に注目するのもいい。菊、きせ綿、萩、竜田、錦、雁といった言葉がキーワードで、竜田姫といえば紅葉を司る秋の女神を表す。実りの秋を味わうのもおすすめ。定番の芋・栗・南瓜のほか、葡萄や梨、林檎といったフルーツを取り入れた品も季節感がある。

 ポロモジーの「フルーツバー」(4 個入り1296 円)は、メイプルシュガー、ワインやブランデー、チョコレートなどの素材と、フルーツの食感を楽しむ4種のベイクドケーキ。パッケージも中身もフルーツ感満点。実りの秋を実感できるお菓子だ。たねやの「栗名月」(5 個入り864 円)は、口どけのよい時雨生地で黄身あんを包み蜜づけの栗を一粒のせ愛らしく仕上げた栗名月。十三夜の名月を表現した、手みやげにぴったりのお菓子だ。

■山眠る冬/12~2月

 木々の葉は落ち、動物たちは冬眠して春にそなえる。人々は新年の準備をして正月を祝い、節分で福を呼び込んで、立春を迎える。12月は冬至やクリスマス、一年の感謝を表すものを。1月はめでたさに満ちたものを。2月は節分や立春、寒中見舞いにまつわるものを選びたい。

 相手の顔を思い浮かべながら、好みや人数構成に配慮して、その季節限定のもの、自分ではなかなか購入しないもの、珍しさや驚きのあるものを選ぶと、ホリデーシーズンにぴったりの、気の利いた手みやげになる。

鶴屋吉信の「福ハ内」(13 個入り3564 円)

 銀座菊廼舎きくのやの「冨貴寄ふきよせことほぐ」(2484 円)は、赤富士や鯛の干菓子、金平糖などがぎっしり入った、華やかで目にも楽しい一品。年始のご挨拶にぴったりだ。「ありがとう」などのメッセージ入りの冨貴寄もある。 鶴屋吉信の「福ハ内」(13 個入り3564 円)は、桝を表す秋田杉の木箱に、お多福豆の形をした焼き菓子が入った和菓子。冬を代表する晴れやかな縁起菓だ。“福を贈る手みやげ”として、年明けの時期に活躍してくれる。

和文化研究家の三浦康子さん。「行事育」の提唱者としても知られる。著書に『季節を愉しむ366日』(朝日新聞出版)など

 日本では季節を先取りするのが粋とされ、過ぎた季節を引きずるのは野暮だと言われている。三浦さんは言う。「一足先に季節を届けるつもりで手みやげを選ぶと、話も弾むでしょう」。

(構成:生活・文化編集部 白方美樹)