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いつも自分が犠牲に…働くお母さんが涙“お片付けのプロ”が作った「自分だけの部屋」

 子どもの進学や就職、リモートワークの増加などにより生活環境が大きく変わり、「部屋を片付けたい!」と思っている方も多いのでは? でも毎日疲労困憊……というお母さんたちに、多忙な方やシニアに向けて数々の革命的な提案をしてきた古堅純子が解く、片付けよりも大切な「いやし」の空間の大切さについて、『なぜかワクワクする片づけの新常識』より抜粋してお届けします。

 片づけは、捨てるのがゴールではありません。好きなモノを生かす暮らし、幸せな暮らしをつくるのがゴールです。

 こんな例がありました。まだ手のかかる男女の兄妹がいる共働きのお宅です。

 家の中は子どもたちのおもちゃや洗濯物、食べ残しのお菓子や保育園の道具などが散乱していました。

 子どもたちのお父さんは仕事が忙しく、深夜近くにならないと家に帰れません。必然的に定時退社できるお母さんに、家事、子育てすべての負担がのしかかっていたのです。

 お母さんが家事育児に奮闘している痕跡はあちらこちらに見受けられましたが、いかんせん、子どもたちのパワーに圧倒され、力つきてしまった様子です。

三本目ビフォア

写真説明)【Before】片づけきれずに何年も放置された収納部屋のモノ(著者提供)

 私はその家の家事動線を整え、最小限の労力で家事ができるよう、家事の仕組みを整えました。でもここでふれたいのは、そのことではなく、疲労困憊していたお母さんが、疲れをいやせる安らぎの空間をつくったことについてです。

 その家のある部屋にマンガ本が積み上げられているのを、私は発見しました。

「マンガが好きなんですね?」と聞いてみると、お母さんが恥ずかしそうに「マンガ本、多いですよね。これでもけっこう捨てたんです」と言うのです。

 私はちょっと驚いて「でもマンガ、好きなんですよね? どうして捨てたんですか?」と聞くと、「だって、こんなにいっぱいあったら、しまう場所もないし」と答えます。

 お母さんは、ずっと自分を犠牲にしていたのです。家の中がぐちゃぐちゃで、リビングにはモノがあふれていて、片づけなきゃと思うのですが、フルタイムで働いていて、思うようにそれができない。

 しかたないので、少しでもモノを減らそうとして、自分の大好きなマンガ本を捨てていたのです。

「でもマンガが大事で、マンガが大好きなのに、どうして捨てなきゃいけないの? あなたは子どものためだけに人生を生きているわけではないですよね。子どものためにどうして自分の大好きなモノをあきらめるんですか? それでは悲しすぎます。マンガ本をしまう場所をつくりましょうよ?」

 最初、お母さんの反応は半信半疑でした。

■大好きなマンガ本を捨てずに、読書部屋をつくる

 マンガ本の場所を探して、家の中をあちこち見て回ると、屋根裏に収納部屋があるのを発見しました。

 そこには引っ越しのときに入れっぱなしにしていた段ボールや使っていないモノたちがいっぱい入っていました。「ここにあるのは、大好きなモノですか?」と聞くと、「いえ、そんなことはありません。何が入っているかもわからないし」と答えるので、「じゃあ、それ、一回おろしましょう」と、収納部屋の段ボールやモノたちを全部外に出してみました。

三本目アフター

写真説明)【After】大好きなモノに囲まれた、一人で落ち着ける空間に(著者提供)

 すると収納部屋が、小さな一人暮らしの部屋くらいはある広さだったことがわかったのです。

「ここをマンガ部屋にしましょう」と私が提案すると、お母さんはびっくりして「マンガなんか、いいんですか?」と不安そうな顔をします。「だって、マンガが大好きなんですよね。たまにはゆっくりマンガを読む一人の時間がほしくないですか?」と聞くと、「はい、ほしいです。だからいつも、電車の中で『やっと一人になれた』とほっとしています」と答えるのです。

「電車の中?」と私は思いました。「意味がわかりません。電車の中じゃなくて、自分の家の中にそれがあったらうれしいでしょ?」

 そして屋根裏の収納部屋にマンガ本をみんな上げて、壁一面に並べて、座いすと_照明を置いてみました。すると、マンガ喫茶より素敵なこぢんまりしたマンガ部屋ができあがったのです。

 お母さんは自分だけの部屋ができたのを見て、うれしくて、泣きだしてしまいました。

 こんなふうに、大好きなモノで囲まれた空間をつくると、幸せにすごせる時間が生まれます。「うちには収納部屋なんてない!」「そんなに部屋数はない!」と言う人でも大丈夫です。ひと部屋がなければ、片隅でもかまいません。 リビングのはしに自分の好きなモノだけを置いたスペースをつくるだけでも、夢が現実になります。