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京中華の元祖といわれる「支那料理ハマムラ」の系譜に連なる3名店と名物料理を一挙紹介!

 1924年創業の「支那料理ハマムラ」。ここが、京都で初めての中華料理店だとされる。料理長を務めた広東省出身のこう華吉かきち氏は、当時脂っこいと不評だった中華料理を、にんにくや香辛料を控え、だしを効かせることで京都人好みの味にアレンジ。あっさりとやさしい味わいの中華は、またたく間に花街に浸透することとなった。戦後に独立した高氏は次々と名店を手掛け、数多くの弟子たちが今もその味を受け継いでいる。

「毎日でも食べることができる中華料理」として、京都の人々に親しまれる“京都中華”は、広東料理ベースの「鳳舞系」に対し、北京料理ベースの「盛京系」という二大系譜が存在ある。『東京・大阪 名店の味が再現できる! ひみつの町中華レシピ』(朝日新聞出版)から、高氏の系譜に連なる「鳳舞系」3店と、はるまきやカラシソバなど京都中華の名物を紹介したい。

朝日新聞出版編著『東京・大阪 名店の味が再現できる! ひみつの町中華レシピ』
朝日新聞出版編著『東京・大阪 名店の味が再現できる! ひみつの町中華レシピ』

■広東御料理 竹香たけかの「はるまき」

広東御料理 竹香の「はるまき」990円。卵入りの皮の中にはタケノコ、しいたけ、カニ身などを炒めた具材がぎっしり。好みで辛子しょう油をつけて(写真は2人前)/撮影 田村和成

 祇園の一等地という場所柄、舞妓さんや芸妓さんが訪れることも多い「広東御料理 竹香」。にんにくや香辛料など匂いの強いものや脂を控えた、やさしい味わいの料理が中心の名店だ。なかでも、1966年の創業以来、変わらず愛される「はるまき」は、来店客の9割が注文する名物。一口サイズにカットし、食べやすさにも配慮している。初代のこだわりが詰まった料理は今も花街の人々を魅了している。

鳳舞楼ほうまいろうの「カラシソバ」

鳳舞楼の「カラシソバ」1100円。カラシ酢じょう油の爽やかな香りが食欲をそそる。レタスは後半に投入し、シャキシャキ感を出す/撮影 田村和成

 2009年に惜しまれつつ閉店した『鳳舞』。京都中華の祖とされる、高氏自身が手掛けた店だ。鳳舞楼は、直系の弟子の一人が2015年に開店。味と技を受け継いだ鳳舞の名物カラシソバは、京都中華を代表するメニューとして全国から注目を集めている。

 カラシソバとは、酢で溶いたからしを絡めた餡かけ麺。鳳舞系で唯一となる鳳舞楼の自家製麺は、当時、麺作りを担当していた鳳舞楼の店主が研究を重ね、2種の小麦粉をブレンドしたもの。オリーブオイルを加えた食感もよく、鶏ガラ・昆布スープの旨味あふれる餡との絡みも抜群だ。伝統を守りながらも日々進化を続ける逸品をぜひ味わってほしい。

■芙蓉園の「鳳凰蛋ほうおうたん

芙蓉園の「鳳凰蛋」880円。火の通りを均一にするために胸肉を使用。厚みのある淡路島産の玉ねぎの甘さも際立つ/撮影 村瀬高司

 京都中華の基礎をつくった高氏が、「支那料理ハマムラ」から独立した後、2軒目に開いた『第一樓』で料理長を務めた弟子が1955年に創業。現在は、二代目夫婦が暖簾を守り、広東料理を軸に季節の素材を取り入れた料理を提供している。

「鳳凰蛋」と呼ばれる名物の玉子料理は、開店当時に慌ただしいランチタイムの時短メニューとして初代が考案したものだという。毎日丁寧にとる鶏ガラスープと玉子で鶏肉と玉ねぎをとじた一品は、シンプルながらやさしい甘さととろとろ食感がクセになる味だ。

 高氏がこの世を去ったのは1979年。すでに四十余年が経つが、その味はいまも、多くの人々に愛されている。

(構成/ライター・岡田あさみ、生活・文化編集部)

■町中華の次は町洋食! 2023年11月7日発売

朝日新聞出版編著『東京・大阪 名店の味が再現できる! ひみつの町洋食レシピ』
朝日新聞出版編著『東京・大阪 名店の味が再現できる! ひみつの町洋食レシピ』