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遺産が「一軒家」のみの場合、どうやって分割したら良いのか?【夏休みに親子で話したい相続・贈与の超基本】

 2021年の司法統計によると、相続トラブルがもっとも多いのは、相続財産が5000万円以下のケース。相続財産は現金・預金だけではなく、分割が難しい土地や建物も含まれる。
 相続専門の税理士法人「ベンチャーサポート相続税理士法人」の古尾谷裕昭代表税理士が監修した『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない 相続・贈与の超基本』(朝日新聞出版)は、遺産分割や節税で損をしないための基礎知識を網羅している。
 相続でよくあるトラブルの一つ「財産が持ち家しかなくて、分割できない!」ケースについて、本書から抜粋して解説したい。
(タイトル画像:Andrii Yalanskyi / iStock / Getty Images Plus)

古尾谷裕昭監修『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない 相続・贈与の超基本』(朝日新聞出版)
古尾谷裕昭監修『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない 相続・贈与の超基本』(朝日新聞出版)

 相続の対象となる財産が持ち家だけという場合、複数の相続人で所有権を分割することもできるが、持ち家を利用しない相続人の同意は得にくいのが普通だ。売却してお金に換えてから分割する方法もあるが、売りたくない、あるいは売れないということもあるだろう。

 亡くなった父の遺産は、住んでいた土地と家屋のみ。高齢の母は、このまま住み続けたいので売却したくないと言う。だが、一人息子も自分の相続分がほしいという場合、持ち家、つまり土地と家屋をどう分割するのかは、難しい問題だ。

 解決法の一つは、相続人のうちの1人(上記のケースでは母)が、該当の土地・家屋のすべてを相続し、そのほかの相続人(上記のケースでは一人息子)に対して代償金を支払う、というやり方だ。代償金の額は土地・家屋の評価額から算出すればいい。

「代償分割」を選択すれば、財産である土地・家屋をそのままの形で残しながら、相続人の間で分配することができる(イラスト ハザマチヒロ)

「配偶者居住権」を活用して、被相続人の配偶者(上記のケースでは母)が持ち家に住み続けられるようにする方法もある。遺言書の記載に基づいて、または遺産分割協議で合意が得られれば、配偶者は亡くなるまでの居住権を得て、ほかの相続人(上記のケースでは一人息子)は所有権を相続する。ただし、所有権を相続した相続人は、配偶者に対して家賃を請求したり、立ち退きを要求したりすることはできない。

遺産が土地・家屋のみの場合、お金に換えて相続人の間で分割する「換価分割」のほかに、「代償分割」と「配偶者居住権」を利用する場合がある(イラスト ハザマチヒロ)

 財産の分割に関しては、親世代が元気なうちに話し合って決めておくことで、無用なトラブルを回避したい。

(構成:生活・文化編集部 上原千穂)