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謝罪されたときに使いたい 相手をポジティブにする“ちょい足し”言葉

 コミュニケーション―で悩みがある人に試してほしいのが、「ちょい足しことば」です。TBSアナウンサーとして活躍後、アナウンサーや有名企業などの重役から新入社員まで、さまざまなビジネスの現場でコミュニケーション法を伝授してきた今井登茂子さんが提案するのは、「いつも使っている表現に、ひとこと足すだけ」というシンプルな方法。著書『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)でも紹介した、おわびをしてきた相手の気持ちを軽くする“おわび受け”のちょい足しことばを、一部を抜粋・改編してお届けします。
(タイトル画像:Wirestock / iStock / Getty Images Plus)

今井登茂子『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)
今井登茂子『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)

■慰めというより、驚きで伝える

 謝罪するとき、人はたいがい、とても落ち込んでいます。相手は怒っているかな、許してくれるかなと焦りも感じます。

「迷惑」の度合いにもよりますが、「お互いさまだな」というようなことであれば、相手のそんな気持ちを軽くするひとことをちょい足ししてみてください。さらに責めるのはもってのほか。温かい言葉で返せば、あなたの品も伝わります

 なかでも、いちばんのおすすめは、「どうして?」です。

Aさん:すっかり遅い時間になってしまって申し訳ありません!
Bさん:Aさんが謝ることではないですよ。

\ここでちょい足し/

Bさん:どうして? Aさんが謝ることではないですよ。

 あなたが謝罪したときを想像してみてください。「どうして?」をちょい足しされるだけで、一瞬で気持ちが軽くなる気がしませんか?

 以前、自分の勘違いを一生懸命にわびる後輩に対して、「どうして謝るの? 僕にも落ち度があったし、謝ることないんだよ」とごく自然に「どうして?」ということばを使っている男性の姿を見て、とても新鮮に感じました。この光景を目撃して以来、私のお気に入りのちょい足しことばになりました。

「どうして?」は、言い方によっては詰問のようになりますし、相手に不満や反発の意を表したいときによく使われます。でも、相手の気持ちをやわらげ、フォローすることばにもなるのです。

 そして、相手を慰めるというよりは、謝るべき理由がないのに謝られてびっくりした!というような驚きとして伝えることで、相手の気持ちもより軽くなります。

 そういえば、私が結婚しても仕事を続けたいと言ったとき、夫は「えっ、どうして(そんなこと聞くの)? 結婚したら幅が広がって、もっといい仕事ができると思うよ」と言ってくれました。今の時代ではこんな会話は想像できないかもしれませんが、私は、この「どうして?」に支えられて、現在があるのだなと実感しています。

 おわびされる理由がありませんよ、という気持ちを伝えるひとことです。

今井登茂子さん(写真:本人提供)

■誰だって相手に多少の迷惑をかけながら生きている

 次に紹介するのは、相手のミスやうっかりで迷惑をかけられて謝罪されたり、急な業務が舞い込んだ同僚の仕事を手伝ってあげておわびとお礼を言われたときなどに、相手の気持ちを早急に軽くできることば、「お互いさまですから」

Aさん:つい、愚痴ばかり聞いていただいてしまって、すみませんでした。
Bさん:お気になさらないでください。

\ここでちょい足し/

Bさん:お気になさらないでください。お互いさまですから。

「よそゆき」の言葉のように感じるかもしれませんが、家族や友人にも「お互いさまですから」を使ってみてください。私と夫も、よく言い合っていました。心配性な私は、このひとことを言ってもらうと、スーッと安心感で満たされるのです。

 ただ、ひとつ注意点があります。時と場合、関係性にもよりますが、基本的には、目上の人には使わないほうがいいでしょう。立場が対等だという印象を受けるので、生意気に感じられてしまうかもしれません。

■「失敗を糧にして!」というエールの意味も

 次は、後輩や部下、一緒に仕事をしているチームの仲間がミスをしたときに使いたいひとこと「気づけてよかった」です。

Aさん:発注書の数字、1ケタ間違えていました。すみません!
Bさん:記入時に、確認しなければいけませんね。

\ここでちょい足し/

Bさん:気づけてよかった。記入時に、確認しなければいけませんね。

 最初からミスが無いほうがいいに越したことはないのですが、途中で気づいて、大事に至ることなく深い傷になるのも回避できたことはよかったと考えたいものです。

 さらに、このちょい足しことばを口にすることで、相手の心を穏やかにするだけでなく、あなた自身も怒りや落ち込みがやわらいで、前を向いて考えようと思えるのではないでしょうか。

 失敗を反省したうえで、今後にポジティブに生かす力は、成長への最強の武器となります。つまり、そのひとことが落ち込む相手に「もうちょっと早く気づく努力ができたかもしれない」と、考えを転換させるきっかけとなるかもしれないのです。

 言うまでもありませんが、このことばも目上の人に対して使うのは、「上から目線」の印象を与えますので控えるのがいいでしょう。

 相手が言われてホッとすることばは、きっとあなた自身も温かな気持ちにしてくれます。ぜひ、気にいった言葉から試してみてください。

(構成/三宅智佳)