小論文試験で「まずやるべきこと」と「必要な癖」とは
■「聞かれていること」の整理から始める
今道:小論文の問題を手にしたとき、まずやるべきことは「問題を読むこと」です。要点を分かってもらうために、ごくごく簡単な出題と解答例を示します。
今道:これは聞いていることがいくつありますか。
もとゆき:二つありますか……?
今道:これはやや難しいですが、直接書くように指示されていることは一つです。「今後日本の教育はどう変わっていくべきか」です。但し、それを書く上での条件として、「グローバル化の進展を踏まえ」という指示がある状態です。
もとゆき:「踏まえ」ってどういう意味でしたっけ。
今道:「踏」という漢字から分かるように、もともとは「踏んづける」という意味ですが、そこから意味が広がって、「このことをしっかり頭に入れて、その上に立って書きなさい」とか、そういった意味になりますね。
もとゆき:なるほど。「グローバル化が進展していることを頭にしっかり入れて、その上に立って、今後日本の教育はどう変わっていくべきか、述べなさい」と。
今道:そうです。出題が「今後日本の教育はどう変わっていくべきか述べなさい」だけであれば、例えば「少人数学級にして、ひとり一人の子どもに目が行き届くようにすべきだ」とか、「子どもたちの読解力が落ちているので、国語教育に力を入れるべきだ」とか、いろいろな解答が考えられます。しかし、「グローバル化の進展を踏まえ」という条件がつけられているわけですから、「グローバル化の進展」を意識した話でなければいけないです。
今道:この解答の場合は「グローバル化が進展するから、英語や各国の文化を学ぶことに力を入れるべきだ」と、出題の条件をきちんと理解して書けています。
もとゆき:こういう出題は多いですか。
今道:よくありますね。「課題文の主張を踏まえて、あなたの意見を述べなさい」「人口減少社会であることを踏まえて、今後の街づくりはどうあるべきか述べなさい」「職場の活性化にどう取り組むか、係長としての役割を踏まえて述べなさい」など、頻繁に出題されます。
もとゆき:出題が複雑になってくると益々理解できなくなりそうです。
今道:だからこそ、どんなときも出題の意図をきちっと理解する癖をつけて下さい。
■複雑な問題も分析すれば理解できる
今道:もう少し複雑な問題を見てみましょう。
今道:教員採用試験に出そうな問題ですが、まずは、聞いていることがいくつあるか整理しましょう。
もとゆき:少し難しいですね……。聞いていることは「子どもたちの社会性を育むことの意義を指摘」「教員としてその育成にどのように取り組んで行くか」の二つですね。「小学校に即した内容にすること」も、聞いていることですか。
今道:「小学校に即した内容にすること」は、答案を書くときの条件ですね。
答えるべきことを整理すると、
1「子どもたちの社会性を育むことの意義を指摘」
2「教員としてその育成にどのように取り組んで行くか」
*解答の条件「小学校に即した内容にすること」
こうなります。直接書くことは1、2ですが、解答する上での条件として「小学校に即した内容にする」があるということです。
もとゆき:「即した」とは?
今道:「きちっと一致させる」とか、そういう意味ですね。「踏まえる」と似ています。この場合「小学校」にきちっと合わせた内容にしなければいけないです。
もとゆき:答案のどこでそれを意識すれば良いのですか。
今道:解答では二番目に「教員としてその育成にどのように取り組んで行くか」を書きますよね。この時、中学校が対象になるような「社会性の育成」を書いても駄目で、小学校にふさわしい内容にしなければ駄目だということです。それともう一つ気をつけたいキーワードがあります。
もとゆき:「社会性」ですよね。
今道:お見事、その通りです。「社会性がある人・ない人」といった使い方をしますが、要は「他の人と関わってうまくやっていける」とか、そういった意味ですよね。小学校での社会性の育成であれば、余り難しい指導はできないですから、ごく基本的な挨拶の励行とか、そういうところから始めるべきでしょう。そこを押さえた上で、こんな答案にしたらどうでしょう。
今道:上記の答案では、―<>で囲んだ部分で、1「子どもたちの社会性を育むことの意義を指摘」に答え、そのあとの部分で、2「教員としてその育成にどのように取り組んで行くか」に答えています。さらに、取り組みが小学校向けのごく初歩的な内容で書かれています。
もとゆき:きっちり出題の指示を満たしていますね。
今道:問題が複雑になればなるほど、何が問われているのかしっかり分析して、それに沿って答えることが大事です。