問題の入手方法から勉強方法まで…クイズ王が教える「クイズのトレーニング」方法
「クイズが趣味です」というような話をすると、「クイズが趣味って、具体的に何をするんですか?」「クイズの勉強の本とか見たことないんですが、特別なテキストとかあるんですか?」など、いろんな質問を受けます。「クイズの勉強」「クイズのトレーニング」とは一体どのようなものか、一端をご紹介します。
まずは、多くの強豪プレーヤーが実践している「過去に出題された問題の読み込み」から見ていきましょう。プレーヤー間では「座学」と呼ばれることが多いです。クイズの世界には、何十年も前から繰り返し出題されてきた「ベタ問題」が存在します。有名なものをいくつか紹介します。
「不動産広告の徒歩1分は何メートルを指す?」
「1円切手の肖像に描かれる、郵便や切手という言葉を考案した人物は誰?」
「間口が狭く、奥行きが細長い家屋を、ある生き物の名前を使って何の寝床という?」
「ベートーベンが完成させた唯一のオペラは何?」
「競馬や競輪などの公営競技に共通する、1枠の枠番の色は何色?」
答えは順に「80メートル」「前島密」「うなぎの寝床」「フィデリオ」「白」です。この5問は、基本中の基本といえる問題です。クイズが得意な人ならほとんど正解できるでしょう。例えば「パネルクイズ アタック25 next」の予選では、これらの問題が今でもよく出題され、クイズの経験の有無によって差がつく問題になると推察します。
「ベタ問題のマスター」とは、このような「よく出る問題」をフルカバーすることを指します。資格試験の対策のように、丸覚えしてしまうことが多いです。それでは、そのようなベタ問題は、一体何問ほどあるのでしょうか。
昔は1万問ほどと言われていましたが、今は趣味・生活の多様化で出題範囲が広がったことや、情報化社会で多くの情報を容易に拾えるようになったため、1万問から格段に増えた気がします。特にクイズにかけられる時間に比較的余裕がある学生は競技レベルが近年飛躍的に向上し、「abc」のようなトップ大会では、予選通過者のほとんどが数万問を覚えている状況と察します。このような傾向があるため、受験勉強(特に膨大な量の記憶)が得意な出場者(一般的に高偏差値帯の大学生)が上位に来る傾向があります。
さて、初心者や、クイズに触れたことがない方は「ベタ問題が網羅されている問題集はどこで手に入るのか」「大量の問題をどのようにマスターするのか」という2つの疑問が出てくると思います。順に解説していきましょう。
■「クイズの問題」の入手方法
インターネットが普及する以前は、「クイズの問題」を手に入れる能力の高さが、クイズ力に直結していました。私は関西の大学に通っていましたが、関東の大会の問題を入手するため、先輩から貸してもらった問題集(すでにコピー済みのもの)をコンビニでコピーすることもしばしばありました。問題を手に入れるためには、そうしたコネを利用したり、遠征してクイズ大会の会場で問題集を購入したりしなければなりません。一般の方には難しい、高難度の行為でした。
今では、さまざまな方法で問題集を手に入れることができます。書店で売っている市販のクイズ本は、アマゾンなどのネットショッピングサイトでも、手に入れることができます。1990年代には『クイズは創造力』『史上最強のクイズ王決定戦公式問題集』(ともに全3巻)など、情報センター出版局から、古典的ベタ問題が大量に掲載された問題集が多く出版されました。今でも、メルカリなどで、出品されることがあります。
現在の主流は「インターネット通販」です。その代表格が「クイズ宅配便(通称Q宅)」と「BOOTH」です。両者とも電子書籍で大量のクイズ問題集を取り扱っています。クイズ愛好者が、所属しているクイズサークルやクイズ研究会で出題した自作問題をPDF形式で販売していることが多いです。Q宅さんでは、紙で製本されたクイズ問題集も販売されています。
インターネット上で無料公開されているクイズ問題もあります。基本問題の宝庫である「abc」の過去問は第1回から第12回まで公開(2023年3月現在)されていますし、過去問をランダムで表示する「abc/EQIDEN Search」というサイトも存在します。ネットにつながっていれば、1万問以上の基本問題にいつでも触れることができ、クイズの勉強にも使えます。初心者が仲間内で早押しクイズを行うときにも、問題に困りません。他にも、QuizKnockの「常識Kncok」などでもクイズの頻出問題が大量に公開されています。
■既出問題の勉強方法
さまざまな方法があり、当人に合わせたメソッドを採用するといいでしょう。アナログなやり方として、紙に印刷した問題の、重要そうなキーワードを蛍光ペンでマークし、補完知識を余白に書く方法があります。私はこの方法をとっています。今では、スマートフォンを使った暗記アプリが複数あります。わかる問題とわからない問題を指先で右、左とスワイプして解き、わからない問題が時間を置いて出題されるものを使用している方が多いです。「Ankiを毎日200問回している」などは、この数年、よく聞かれるワードとなりました。
(文:通信社スポーツ記者・オープン大会「勝抜杯」主催者 三木智隆/構成:生活・文化編集部)