1日3時間以上のスマホ使用で、勉強も睡眠も台なしに【スマホはどこまで脳を壊すか】
■使用時間が長くなるほど学力がどんどん低く
スマホの使用習慣は、子どもたちの学力にどのような影響を与えているでしょうか?
【図1】は、スマホ等の使用時間と学力の関係を表しています。縦軸は標準学力検査から算出した偏差値で、平均点の子どもたちの値が50になります。横軸には、平日における勉強以外の目的でのスマホ等の使用時間をとっています。
実際の質問項目は、「ふだん(月曜から金曜日)、勉強以外で1日当たりどれくらいの時間、インターネット接続ができる機器(スマホ・タブレット・音楽プレーヤー・ゲーム機など)を使っていますか」というものでした。パソコンやタブレットなどスマホ以外の機器を使用したインターネット接続も含まれていますが、実態はスマホの使用が大半なので、以降は代表して「スマホ等」の使用時間と表現することにします。
グラフはスマホ等を持っているが「全く使わない」、「1時間未満」使用と、緩やかに高くなっています。ここまでの結果を見ると、「あれ? 子どもにスマホを持たせた方がよいのかな?」と、思われた方もいるかもしれません。結果の見方には、少し注意が必要になります。
この結果の説明として、私たちは二つの可能性を考えています。一つは、スマホ等を「持っていない」グループには、経済的な理由で持たせることができないご家庭も含まれている可能性があるということです。悲しい現実ですが、家庭の経済状況と子どもたちの学力には、相関関係があることが明らかになっています。この点が「持っていない」と「全く使わない」の間の学力の差につながっている可能性があります。
もう一つ、スマホ等の使用が「1時間未満」の学力が高い理由としては、自分の意志で「1時間未満」に抑えられる子どもたちが含まれている可能性があります。楽しくて誘惑の多い魅力的なスマホに依存することなく、自律的に使いこなすことができている。そんな自己管理能力の高い子どもたちが一定数含まれているのではないかと考えています。
そしてグラフは「1時間未満」を山の頂点として、使用時間が長くなるほど、どんどんと学力が低くなっていく様子が見てとれます。このように、1時間以上のスマホ等使用が学力に悪影響を与えていることが明らかになったのです。
■スマホ等を3時間以上使っている子どもは成績が平均未満!
スマホ等の使用時間が長い子どもたちの学力が低い理由として、スマホ等を使用するために睡眠の時間が削られてしまっているという可能性が考えられます。また、当然のことですが、勉強をたくさん頑張っている子どもたちの方が良い成績を修めていると考えられます。同様の理由から、スマホ等の使用によって勉強時間が削られてしまっている可能性も考慮する必要があります。
そこで私たちは、スマホ等の使用について「全く使わない」「1時間未満」「1~2時間」「2~3時間」「3時間以上」と回答した子どもたちについて、それぞれ勉強・睡眠時間と成績の関係を解析しました。ここでは詳しい説明は省きますが、「1時間未満」と回答した子どもたちと、「3時間以上」と回答した子どもたちの解析結果を表したグラフをご紹介します。
「1時間未満」の子どもたちのグラフでは平均以上の成績を表す棒が多数を占めています。一方、衝撃的なのは「3時間以上」の結果です。灰色の棒が1本も残りませんでした。この結果からわかることは、スマホ等を1日3時間以上使用している子どもたちは、どれだけ勉強を頑張っていても、きちんと睡眠時間を確保していたとしても、成績が平均未満に沈んでしまっているということです。
つまり、スマホ等を長時間使用している子どもたちは、勉強時間や睡眠時間が削られてしまうから学力が低いという、私たちの最初の仮説は証明されませんでした。この結果から、スマホ等の使用は子どもたちの学力に直接的な悪影響を与えているという可能性が高まってきたのです。