一般社団法人 再生医療安全推進機構 公式ブログ 「再生医療相談室」 リュウニャン

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最近の記事

【第8回】再生医療 幹細胞シリーズ ~④人工多能性幹細胞(iPS細胞)~

前回のブログでは、ES細胞(胚性幹細胞)についてご紹介しました。 ES細胞は、受精卵から得られる多能性を持つ細胞であり、体のあらゆる細胞に分化できる能力を持っています。しかし、ES細胞は受精卵を使用するため、生命の尊厳に関わる倫理的な問題や、移植時に免疫拒絶反応が生じるリスクが課題として残されています。 今回は、これらの課題を克服するための新たなアプローチとして注目されているiPS細胞(人工多能性幹細胞)についてお話しします。 iPS細胞は、患者自身の体細胞から作られるため

    • 【第7回】再生医療 幹細胞シリーズ ~③胚性幹細胞(ES細胞)~

      前回までのブログでは、まず「細胞とは何か?」という基本的なところから出発し、次に幹細胞の特性についてお話しました。 今回からは、分化能力という観点から、まずは高い分化能力を持つES細胞(胚性幹細胞)から紹介していきます。 ES細胞は、再生医療や基礎研究の分野で重要な役割を果たしています。これらの細胞は、すべての体細胞に分化する能力を持ち、組織や臓器の修復、さらには新しい治療法の開発において画期的な可能性を秘めています。 このシリーズでは、ES細胞に続いて、iPS細胞、間葉

      • 【第6回】再生医療 幹細胞シリーズ ~②幹細胞の特性~

        幹細胞は、現代の生物学や医学において最も注目されている細胞の一つです。その理由は、幹細胞が持つ「多分化能」と「自己複製能」にあります。これらの特性により、幹細胞は再生医療や細胞治療の分野で大きな可能性を秘めています。今回は、幹細胞の基本概念からその特性について詳しく掘り下げていきます。 幹細胞とは何か幹細胞とは、まだ特定の細胞に分化していない未分化の細胞です。これらの細胞は、自己複製能力と分化能力を持っています。 これらの特性により、幹細胞は新しい細胞を供給し、損傷した組織

        • 【第5回】再生医療 幹細胞シリーズ ~①細胞と分子生物学の基礎~

          こんにちは。リュウニャンです。 今回から始まる「幹細胞シリーズ」では、私たちの体を作り、修復し、時には驚くべき治癒力を発揮する「幹細胞」について、一般の方々にも分かりやすくご紹介していきます。幹細胞は、私たちの体の中で特別な役割を果たし、再生医療や病気の治療において革新的な進展をもたらす鍵となっています。 このシリーズでは、まず幹細胞の基本的な知識から始め、その応用や最新の研究動向についても触れていきます。専門用語をできるだけ使わず、日常の言葉でお伝えすることを心がけていま

          【第4回】再生医療における視力障害の報告と注意喚起 ~後編 凍結細胞のまま提供するのは大丈夫?~

          前回は細胞凍結保存液としてのDMSOについて説明しましたが、今回はこのような有害事象に対していくつかの問題点についてお話していきます。 なぜ大手企業であるロート製薬が製造した幹細胞製品にDMSOが残っていますか?ロート製薬のような大手企業が製造する幹細胞製品にDMSOが残っていることは驚くべき事実です。 上場企業として、株主利益の最大化を目指す必要があります。このため、製造コストの削減と効率化が常に求められます。 DMSOを使用した細胞保存は、比較的コスト効果が高く、保存効

          【第4回】再生医療における視力障害の報告と注意喚起 ~後編 凍結細胞のまま提供するのは大丈夫?~

          【第3回】再生医療における視力障害の報告と注意喚起 ~前編 細胞凍結保存液としてのDMSO~

          再生医療の分野では、細胞を投与する自由診療が注目されていますが、一部で副作用が報告されるケースも存在します。 最近、ロート製薬(大阪市)が製造した脂肪由来の間葉系幹細胞の投与に関連して、視力障害が発生したことが明らかになりました。この問題についての調査結果と今後の対策について解説します。 視力障害の報告とその原因ロート製薬が関係医療機関に配布した注意喚起の文書によると、昨年11月から今年3月にかけて、東京のクリニックで更年期障害や卵巣の機能低下を改善する目的で同社の幹細胞が

          【第3回】再生医療における視力障害の報告と注意喚起 ~前編 細胞凍結保存液としてのDMSO~

          【第2回】再生医療抗加齢学会学術総会 山下准教授発表レポート

          4月13日に東京の日本橋で第一回 再生医療抗加齢学会 学術総会を開催しました。 岡山大学の山下准教授から「ALS患者に対する新たな幹細胞(Muse細胞)を用いた治療法の開発」という発表についてご紹介させていただきます。 ALSの成因と現状 筋萎縮性側索硬化症(ALS)という名前から見ると筋肉の病気だと考えますが、実際の成因は運動ニューロンの変性と減少です。非常に残念ですが、現在の療法は症状進行の抑制だけで、根治の療法はありません。 様々な既存の療法の中、自家由来間葉系幹細胞

          【第2回】再生医療抗加齢学会学術総会 山下准教授発表レポート

          【第1回】再生医療抗加齢学会学術総会 島村教授発表レポート

          4月13日に東京の日本橋で第一回 再生医療抗加齢学会 学術総会を開催しました。 私も複数のシンポジウムに参加して色々と面白い情報が集められました。 一番印象深い内容は大阪大学の島村教授から「脳梗塞における新規治療法開発の展望 幹細胞を中心に」をテーマとした発表です。 脳梗塞について 脳梗塞という単語を聞くと、一番直感的な治療法は血栓の融解及び破損した血管の修復だと思いますが、教授の発表により、脳梗塞治療において炎症抑制も非常に重要だと今回勉強になりました。 脳梗塞とは、脳の