酷い腰痛持ちが昔ネットで話題になっていた針治療に行った話

一度ギックリ腰をやった日から、定期的に"ギックリカウント"が訪れる。時が来て爆発すると突然崩れ落ち、四つん這いから1ミリも動けないで大号泣をするモンスターが誕生する。

そのモンスターは言語を「痛い」と「ごめんなさい」しか覚えていない。何に謝ってるのかは知らない。
そしてタチの悪い事に、このギックリカウントが始まると爆発は回避できない。99.9%爆発する。というか今のところ100%爆発する。不意な動きでビクッとする。ふとした動作に対して脳がNOって言ってる(面白い事言ってるけど本気のやつだよ)

2019年12月、ついにギックリカウントが始まった。何をしてても痛い。日に日に痛みが増して立ってても座っててもすごく痛い。最終的に寝ていられなくなる。
爆発直前に、昔Twitterで話題になっていた"一発で嘘みたいに治る鍼治療"に行く決意をした。
鍼治療もネットの話題性もあまり信じてないタイプだから、この痛みを治せるならやってみろって気持ちとネタになるなぁって気持ちがすこーしだけあったけど、正直なところ痛すぎて藁にもすがる思いだった。

結論を言うと、確実に痛みは鎮静化されます。多分だけど余程重症だったり病気じゃない限りは普通に治りそう。
これを書いてる今だって腰ってそんなに痛かったっけ？とか思うレベルなので忘れる前に書き殴る、以下長文。

当日予約は朝7時半から受け付けてるらしく、時間ぴったりに電話。予約はスムーズにとれたけどTwitterで話題になってクレーム客、ばっくれる客が多いのか、なんとなく「一発で治らない可能性だってあるからな？」みたいな「ばっくれないでよ？」みたいな威圧をひしひしと感じる。

20歳から付き合ってきた慢性腰痛を消し去れなんて思ってない。ただこのカウントを止めてくれるなら、欲を言えばそれなりに動ける程度にしてくれたら、痛くて我慢してたビール飲めるし映画観れるしゲームもできる。それでいい。
そもそも鍼信者ではない私は、これ以上綺麗な斜もないなってくらい斜に構えた態度で予約の時間に病院へ行くと、そのまま治療室に通された。ベット3、4個くらいでカーテンで仕切られてる。
助手？の優しそうな女性に「これに着替えてください」と治療着を渡されカーテンを閉められる。
上の服は薄手ならそのままでいいとの事で、治療着の中身はヒートテックとパンツと靴下という『早春の一人暮らし女の帰宅後』みたいになる。
着替え終わった事を告げると、うつ伏せになってと指示をされた。
うつ伏せ！？無理！痛い死ぬ！！！！って言っても誰も聞いてくれないから、もう二度と立てない覚悟を決めてうつ伏せになったところで先生が登場した。
ここまでが拍子抜けする位スムーズな流れ作業で、(多分人によっては嫌かもしれない)個人的には最高のテンポ。ただ、そこで先生の顔を一度もまともに見ていない事に気付く。ちょっと気になったけど腰痛持ちに"振り返る"という行為は死を意味するから、もう身をまかすしかない。

後ろから聞こえる「どこが痛いのー？」って問いに対し、「腰が‥」と答え、「どういう時に痛む？」って問いに「何をしてても‥」と答えたら問診が終わった。これには流石にちょっと不安を覚えて「ぎ、ギックリ持ちで」とか「た、立ち上がる時が特に‥」とかなんやかんや付け足したけど、特に返事もなく治療が始まる。

人生初鍼。注射で痛いって思った事がないし、なんなら注射嫌いな人も鍼は痛くないって言うし、鍼はクセになるって友人も多いから気分的にはリラックスしてた。
3秒後に思いっ切り「い゛ッッッッ！？」って叫んだよ。誰だよ痛くないって言ったやつ。何本刺したか覚えてないけど1本毎に声が出たわ。腰より喉の心配したわ。
「これはひどいね〜」とか「今まで何の治療もしてこなかったの！？」とか「1回じゃとれないかも」とか言われたけど、こちとらそれどころじゃない。
過去も未来もどうだって良い。今を生きる事に精一杯。もはや生死をかけた戦いだった。無情にも突き刺される鍼。あまりの恐怖で「これは何本刺しても治らない！！」って叫んで逃げたいけど次々に刺されるせいで「い゛ッッッッ」か「はっふん…」しか声が出せない。てか腰も鍼も痛くて物理的にも逃げられない。

鍼を刺し終わった後は運動の後くらいグッタリしてきた。シーズン初の日帰りスノボの夜くらいのグッタリ感。せめて痛みを楽にしたくて、早く鍼を抜いてくれ〜って切に願ったけど、もちろん届くこともなく「電気流すね」とかサラッと言ってくる。
は、は、ははははは鍼メッタ刺ししてでででで電気を流す！？何言ってんの！？サイコパスなの！？って思ったけど、ここまで来たらもう焼くなり煮るなり好きにしてくれ感。

助手の女性に「痛い？先生に刺し直してもらう？そんなに痛いなら無理しなくても‥」って優しく声をかけてもらって天使に見えた。けど、多分この痛みは私が問題な気もする。刺し直しも嫌だし、この痛さがクセになれば勝ちだと信じて断ると、電気治療中にさらけ出されたパンツと靴下と鍼がメッタ刺しされてる情けない下半身にタオルをかけてくれた。ありがとうエンジェル。

しばらく耐えていると先生と共に運命の瞬間が訪れた。噂によると鍼を抜けば天国が待っているらしい。エンジェルとも出会ったし期待ができる。
いや、白状するとこの痛さで鍼抜いて痛くなぁ〜い⭐︎なんて３億%ねぇだろｗって思ってた。そして、いざ鍼を抜いたら・・・！！！

めっちゃ痛い。

鍼が抜き終わった後ブルブルするマッサージ機でブルブルされて、「立って」って言われる。

いや、待ってごめんめっっっちゃ痛い。

立ちあがるのにも一苦労。時間をかけてやっとの思いで立ち上がり、すごく痛いって伝えると、返ってきた言葉は「前屈して！」

だからサイコパスなの！？

ドマゾ根性で必死にやったけど3センチも曲げられてないのが自分でわかる。正直悪化したと言っても過言じゃない。数時間前の私なら5センチはかたかった。

「どこが痛い？指一本で指して」とか言われても、まじでどこが痛いのかわからないくらい痛い。思わず5本指で指したら「1本で！」ってちょっと怒られたアラサー女。
はにかむ暇もなくもう一回前屈させられて、痛いところを指さしたらそこに鍼を刺されてすぐに抜かれた。
今思い返すと何このシステム！？ってツッコミそうなところだけど、私が思わず発した言葉は「うわｗｗえっうわうわｗｗｗ何これ！？えっｗ何これ！？ｗｗｗうへへへへｗｗ」

何を言ってるのかわからないと思うけど、急に前屈ができた。目の前のベッドに手がついた。
他にもあるなら指差してって言われ、横に倒してーとか後ろに倒してーって3周くらいした。終わった頃には腰がめっちゃ軽かった。

料金は8000円。腰痛が完治かと言われれば話は別だけど普通に歩ける。これはお釣りが出るわ！とルンルンで出勤したら事件が起きた。

病院を後にして5時間後くらいに爆発レベルの痛みに襲われた。本当に急性のあれ。
調べたら好転反応らしい。……うっそつけ！そんな、私ハッピーな四文字熟語ですぅ〜⭐︎みたいなワードに誤魔化されるほど馬鹿じゃない。そんじょそこらの痛みじゃないぞまじで！そこそこ長い尺で鍼の痛みを書いたけど、あんな痛みはこれに比べたら鼻くそだわ鼻くそ。
まともに座ってられない、だからといって立ってもいられない。何より歩けない。一歩踏み出すのに3秒はかかる。

ただ一つ奇妙なのが、腰痛じゃ決して出来ない動きができる。四つん這いモンスターは生まれなかったし、普通に振り返れる。振り返ったまま手を伸ばすオプションをつけても余裕。荷物を地面に下ろせるし普通に寝っ転がれる。
痛みも何か変。めちゃくちゃ痛いんだけど、なんだろう腰が抜けてるというか砕けてるって言い方のがしっくり来る。文字で表すと「びゃ」って感じの痛さ。生まれて初めての現象を前にどうしていいのかわからず、とりあえず3日くらい様子をみてみる事にした。
どうせ爆発直前だったし勉強になったから勿論クレームを付ける気なんてないけど、3日経ってもどうする事も出来なかったら、こういう患者もいますって事だけ伝えてどうすればいいのか聞こう。温めていいのか冷やした方がいいのかもわからん……とか考えながら布団の中でえぐえぐ泣いて、気付いたら眠っていたらしく何事もないように訪れる朝。

絶ッッ好調でした。

いやすげぇな好転反応！ほら、寝起きってさ、あいたたたって言いながらゆっくり横に転がってうつ伏せに近い状態に持っていって腕の力を使ってゆっくり起き上がらないといけないじゃん！？

なんかね、スッ て。
それはもうスマートにスッ‥て起き上がったよ。ギックリカウントとか関係なしに、腰痛持ちになってからこんなにスッて起き上がったの初めてかもしれない。あまりにも自然に起きれて、一瞬痛くない事に気付かなかった。
座る・立つの動作も余裕。筋肉痛的な重さはあるけど、痛みがない。普通に歩けるしなんなら走れる。物を落としたらすぐに拾える。歯磨きのペッする時と便座に腰掛ける時は腰曲げたら死ぬからスクワット状態がデフォなのに普通に腰からいける。
そういうふとした動作が出来る事に感動して泣きそうになった。

何をしても全く痛くないかって言われたら嘘になる。12時間以上寝ると痛い。それでも私にとっては、普通に生きるのに支障が出ない事が重要だし、むしろギックリモードに入っていない状態で行ったら人生変わるのでは？とさえ思った。確実に私の人生には幸せが足された。
だからと言って鍼治療を信じるかと聞かれたら不思議といまだに微妙で、自信を持って他人に勧められるかと聞かれたら間違いなくNO。大声上げて宣伝する気もない。でも、また腰痛に襲われた時、私は間違いなくあそこに行く。
てか肩とか首もやばいから重症化する前に行こうかな……。
何はともあれサイコパスかと思ってごめんなさい。結局一回もまともに顔見てないけど、先生、鍼、本当にありがとう！