梅雨の功績 ~北海道からの沖縄移住記 2020年5月~
つやつやの白い蕾が美しい月桃(ゲットウ)がそこかしこで咲いて、人生で二度目の梅雨がきた。一度でも経験している分、今年はきっともう少し上手に乗り越えられる。
洗濯物は外で干せる日が一日でもあると思わないこと(ちなみに沖縄は北海道と違い冬こそ乾燥した強い風が吹き、外干しに向いている)、髪の毛はまっすぐでいてくれると思わないこと、北海道では見たことのない足のたくさんある虫が出てくるかもしれないこと…
北海道では知り得なかったことを沖縄でたくさん知った。知れてよかった。
住む場所や、仕事を変えるという時は、もちろんそれなりに色々なことを考えて、誰に従うでもなく自分で決めてきたけれど、それを決めるに至ったのは偶然というか、「たまたま」の力が大きい。
多分人間の人生には「あの時あの出来事がなければ自分は今ここにはいなかった」ということだらけな上に、「あの時のあの出来事」は、人との出会いや、災害や、親の離婚のような、自分ではコントロールしようのない出来事ばかりだ。
それでもきっと、その結果今歩んでいる道は、納得のいかないことばかりではないはずだ。
今は新型コロナウィルスの蔓延が多くの人にとってそんな人生の転機になっているのだろう。歴史を学び想像力を養い、こんな事態を予測してドンと構えていられればよかったけど、残念ながら見知ってることの範囲くらいでしか私たちは想定できない。長年かけて準備したことや、歩み始めたばかりの道を前に、途方に暮れている人がたくさんいるはず。
でもこの「たまたま」発生した感染症の大流行を経験した後の私たちは、反省や後悔や悲しみの後に、今までは想像もしなかった場所に立って誰も見たことのない景色を手に入れるのかもしれない。それがいつか「たまたまの功績」になるように、学ぶことをやめず考え抜き悩み抜き、そして生き抜くしかない。
たまたまの功績によって、私にも梅雨への耐性が少しずつ備わっていく。風通しを良くしてカビと格闘し、予想もつかない展開と亜熱帯の気候をサバイブしていく。
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