浅葱色の覚書「2/3月(さんぶんのにがつ)の感動たち。」
もう8月が終わる。一年の2/3が終わる。そんな2/3月に触れ、最高だった作品たちと、その感想、感動。
・ロロ「飽きてから」
"うんこを我慢しているみたいな曇天"から始まる。曇天な登場人物の「飽きるまで」と「飽きてから」を短歌と演劇で描く。
観る人には、「あの人たちを曇天にしているモノは何なのだろう」と考えてほしいなと思いました。なんだか制作サイドみたいなことを言ってしまいましたけども。友達やパートナーとのトラブルだけに留まらない、もっともっと根深い、この世界が抱える問題が雪之や青や、しっぽを苦しめている。(NEXT コナン's ヒント!「家父長制」「ロマンチックラブイデオロギー」「結婚」「資本主義」「その人のペースに構わず無機質に流れる日々」「ハラスメント」「その他いろんな問題」!)
因みに、私が一番好きだったキャラクターは、しっぽ。あっけらかんとしているのだけれど、ものすごく戦っている。「おふくろの味」という言葉が嫌いで、「ジャンルで括らないと気が済まない人」にウッとなってしまうあたり、「わかるぞう…!」と噛みしめていました。
だから雨が降ってくれてよかった。溜まったモノを吐き出すように、排泄するように雨が降ってくれた。
多分、しっぽはまたフラっと居なくなったり、フラっと帰ってきたりするんだと思う。それがいい。そのための雨降りだった。
飽きた人、飽きられた人が、(もしかしたら飽きていない人も、)抱えたモヤモヤに向き合う様がロロらしく描かれていてとてもよかった。「飽きる」って確か「いっぱいになる」みたいな意味もあるよね。(古文で「飽く」ってあったよね。)いっぱいになるのも、いっぱいいっぱいになるのも「飽きる」ってことだろうか。そんな日々の中、"0.5倍速で映画を観る"という反逆は、なかなかクールですな。
飽きるっていいこと?わるいこと?どちらでもない?こうやって定義しようとするのも陳腐だね。
まぁなんにせよ。
飽きてから、いかに向き合うが大切だ。
・Fontaines D.C.「Romance」
やっとリリースされた!From アイルランドのドープでクールなバンド、Fontaines D.C.の新譜。
先行配信されていた「Starburster」や「Favourite」ですでに期待大だったが、そんな期待をゆうに超えて最高でした。
今年リリースされた柴田聡子の傑作、「Your Favorite Things」もそうだったが、1曲目で「誘(いざな)ってくる」アルバムが、わたくし大好きである。1曲目「Romance」の圧倒的圧倒でアルバムの世界に入り込む感覚がたまらない。
彼らは"Maybe romance is a place for me and you."と歌う。Romanceが居場所なのだ。このモヤつくことだらけの世界において、人との関係や夢、ロマン、或いは、このRomanceというアルバムが逃げ場なのだということだろう。「逃げる」って「向き合っていない」と見做されがちだけれど、必ずしもそうではないと思う。私もnoteで何度か主張しているが、逃げることも、向き合うことの一つになり得ると思う。でも、やはりどこかに後ろめたさも感じてしまう。このアルバムからも、そんな闇病みのイメージを感じる。悪い夢を見ているかのようだ。でもそれはデイヴィッド・リンチの映画のような、艶やかで居心地の良ささえ感じるような悪夢。この夢を深く潜った先に何があるだろうか。
・スチャダラパー「サマージャム ’95」
「え?今更?」って感じだろうけど、よかったんだもん。サウンドのチルさ、リフレインの気持ちよさはもちろん最高で、なんてったって私が感動したのは「え、これ”スチャダラの曲”じゃん!」となったからだ。もうちょっと噛み砕いていうと、「スチャダラのよさフル活用じゃん!スチャダラじゃなきゃダメな曲じゃん!」ってな感じである。
マッチョなヒップホップ像と距離を置いた、所謂、ゆるいナードなヒップホップを3人でつくりあげてきた彼ら。
日常のなんてことないトークのごとく詞と、2人のやりとり。ファミレスで頬杖つきながら、どこも見ずに口からふわふわと言葉が漏れているだけみたいな、あってもなくてもいいような、でもなぜだか幸福感に溢れたみたいなやりとり。それがトラック、詞、マイクリレーという形式、どれにも必然性を持たせた上で、この名曲をつくりあげている。よい。
ロロにせよ、Fontainesにせよ、スチャにせよ、この世界との向き合い方はさまざまだということだ。私も模索し続ける葉月。いい夏だぜ。