よるがお

知性の体たらくと沈黙

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最近の記事

モナリザでないことの証言

午前3時に目を瞑って、久しぶりにとったアルコールのおかげですぐに眠れた。 日付を越える時、雨は止み、夜を一層深くしていた。法律に遵守して発言すると、タバコと酒を身体に入れることが合法化した。この日に書くのは3年目だ。二十歳になった。なってしまった。二十代として書く時に発生する重みみたいなものが怖くて仕方ないと感じている。嫌いな人間に対して、いなくなってしまえ、とすぐに心の中で唱えることで生まれる罪悪が以前よりドロドロしている。 できれば関わりたくないと思っている人間からメ

    • もしも俺らが弾丸なら

      もしも俺らが弾丸なら もしも君が弾丸なら銃口から出てゆくみたいなつまらない想像は前提として、誰の胸元に食い込むか。もしくは頭か。そんなことを考えちゃいないか。俺は火薬の匂いだけが気掛かりであとは被害者面しているだろうし、彼女は別の銃口に入る妄想なんかに時間を使っているし、彼には月を打ち殺す夢がある。でも、そんなことはどうだっていいのさ。想像が想像を呼び込むなんてのは当たり前さ。ただ俺は、もしも、もしもの話だ。もしも俺らが弾丸なら。もしも俺らが弾丸ならさ。泣くだけで一日が消えて

      • あるいはimpermeabilityにおいて

        ある夜の不浸透性。 君は薄い膜に覆われている。帷が落ちて青に染まったとき、君の不浸透性は揺らいだ。まるで胎児だった。母親という不浸透性に覆われていたような。そうしてやがて君にとっての夜は母親になった。 くちなしの不浸透性。 木漏れ日が射している。朝露に濡れていたはずだった。きっと昔は。色に音はつきものだ。だから、くちなしの白は音がしないという形容の音がした。その不浸透性をもってして。しばらくして雨が降った。甘い匂いを伴って、いつからか僕らはくちなしの音を忘れてしまった。

        • n-bunaが好きだという話

          空はずっと青かったはずで、彼の音楽をただ美しいと思っていたのに、いつからかどうにも音楽を消費している感覚が抜けなかった。どこかの神経がおかしかったんじゃなく、ただ僕は2014、15年のn-bunaが好きなだけだった。今日、四年前に彼が独り言みたいに話す声を聴いて、懐かしさに苦しくなった。彼の声を思い出しながら久しぶりにボカロを聴いたら泣きそうになってしまった。ヨルシカを始めてからすぐはあまり変わってなかったように思う。ただ、彼がゆっくり変わっていくのは彼の音楽を何年も聴いてる

          或る日、或る時、或る人の

          詩を書くことで救われる自己があるならいくらでも書いてみせるのに、僕は所詮傷跡の描写しかできない。パイン飴の向こうでは彼女の笑顔も最強になる。ドーナツでもそうだし、シングルレコード盤でもそうだ。そういうのに敵わない言葉ってのは薄情だと思う。言葉が美しいんじゃなく、その言葉を放った人物、その言葉を受け取る人物、景色、昆虫、思い出、本当に美しいのはそれらで、言葉は糸電話の糸でしかないし、手紙の宛先でしかない。なくてはいけないけれど、本物には敵わない。糸電話の声だったり、手紙の内容だ

          或る日、或る時、或る人の

          例えばをキスで終わらせる話

          郵便受けはいつも誰かの気持ちを受け止めている。 彼は男の子で彼女は女の子だった。説明は多分それだけで十分だった。それ以上に補足するなら彼はパンクロックが好きで彼女はクラシックが好きだった。例えばで話し始めるとどんな結末も結局、例えばなんだよなぁ…とぼやく彼の隣で、それは言葉の上澄だけ、でも感覚の伴う例えばは本物じゃない?と彼女は笑ってキスをする。そういうのが積み重なり始めると、もはや崩れる想像をする方が難しい。彼らはそのまま抱き合って穏やかな夜を永遠にしたが、朝になって彼女

          例えばをキスで終わらせる話

          『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』について

          運命というものが仮にあったとして、出会うべくして出会っていたかつての恋人を僕らは忘れていないだろうか。4月のある晴れた朝、原宿の裏通りで100パーセントの女の子とすれ違う、そんなささやかな出来事はふとした瞬間にやってくるのだろう。 この話は記憶という僕らが一つ信頼している機能の揺らぎをボーイミーツガールと組み合わせた掌編である。 物語は「僕」が4月のある晴れた朝、原宿の裏通りで100パーセントの女の子とすれ違うところから始まる。そして、僕はすれ違う直前に彼女にどんな言葉を

          『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』について

          僕の文学に永遠を埋めたい

          「幸せな時ってどんな時?」と聞いても上手く答えられなかった恋人に「じゃあ頭の中が空っぽになるのはどんな時?」と聞いたら「パン屋さんの前を通る時」と返された日から、毎朝二人でフランスパンを切って頬張るのが日課である。 退廃的な作品を見ながらレモネードをちびちび飲んでいる彼女が優しさを蹴飛ばす想像をするのがまさしくお家デートというやつなんだと僕は思った。 喉が焼けていく感覚をじりじりと意識しながら彼女が呷る夜の夏風になりたかった。 夜は眠らない。長いまつ毛が揺れる。喧騒が遠

          僕の文学に永遠を埋めたい

          燦々午后

          あるいは昨日、または一昨年。散り散りになっていく度に光って棚引く螺旋状の幹線道路。テールランプが早く来いと誘っている。メーターが振り切れた瞬間に僕は夏の縁側で足をぶらぶらさせている。空は無限に高く、足裏と地面は小学五年生の距離を保っている。 山から冷たい空気が流れてくる。僕は坂道を下っている。パンクしかけの後輪のタイヤのせいでうまくスピードが上がらない。三段階しか上がらないギアを最大限重くして目一杯ペダルを回すけど、すぐ軽くなる。あと20秒でこの坂道も平坦になる。加速しない

          ティーンの蹄は青々と

          何か書かなければいけないと思った。19になった。去年が昨日みたいだと思った。18と19、そこには365日の溝があって、8760時間の距離があって、525600分の連続的な僕がいる。アナログな僕が。人生の一分を映画の一コマと考えたら525600コマの僕が早送りで作品になっている。変わり映えないコマをいくつ消費したんだろう、僕は。立ち止まっていたら胸が淡く揺れ動くだけ。18から19はそんな単調にコマ送りされるティーンネイジャーだった。 何も嬉しくない。俺はテレキャスが欲しい。喉

          ティーンの蹄は青々と

          秘密裏のプロセッシング彼女

          秘密をつくっている。たくさん隠している。もう何が秘密で何が秘密じゃないのかわからなくなってくる。存在まで秘密にしたくなって初めて死を選ぶんだ、きっと。高校生の頃、女の子が折れた翼で夏空を飛ぼうとした。夜間飛行は上手くできずに、堕天使の横顔はぐしゃりと熱風、掻き消して鮮血。フィルムを回す、1902年。声帯はまだない。必要なもののために重ねた動悸の数や無意味で非適量なティアドロップ。彼女の丸顔が微粒子で構成されている。輪郭はまるでプロセッシング。存在は海底撈月。

          秘密裏のプロセッシング彼女

          茹だるような夏を口に含んで

          トイレに篭って文章を打ち込む。加速する夏。正午、昼にぶら下がって茹だる。終末があるなら今がいいなんて思う。うーうーうーうー。イヤホンから『水星』が流れる。行き違いの浮遊感、想像力の限界、運命の不存在証明、プラトンはディスコードに揺蕩っている。僕はあくびの延長で深呼吸をする。二度、吸う。再三、吐く。夏が、肺を満たして口まで溢れる。息を止める。夏を口に含む。鼻から溢れる。視界には逃げ水が、僕はそれを追いかけて中学の時のスピード感で秒針を滑る。想像を止める、文字が止まる、指を止める

          茹だるような夏を口に含んで

          スピードと円環

          深夜二時半頃になると幽霊が出没しやすいという誰から聞いたのかも忘れたような迷信を、その時間になると思い出す。人は眠気を遠くから誘おうとすればするほど遠ざかり、宇宙について考えを巡らし始め、ぐるぐると回転する脳みそのイメージだけを加速させ、最終的になにもすることがなくなると、浜に打ち上げられたクラゲのように萎び、それをゼリーと形容されるようにあっさりと詩をつくるようになる。つまり僕は今、照明を落として布団の中でインターネットと打ち解けている。 君の足の甲に浮き出てる血管が囲ん

          スピードと円環

          ただ、夏だけは本物である

          とある大学生の独白的スペースを半波整流波形のフーリエ級数展開をしながら聴いていた。22時から日付を越えるまで、彼女の、夜と親和性の高い声色を僕は心地よく思っていた。スペース然りライブ然り、もっと生活に近しい事柄で言うと誰かとの会話において、その場で他者の言葉が持つエネルギーは大きい。瞬間速度で理解より先に感情を動かしたなら、その言葉は美しいがそれは突発的なエネルギーに過ぎない。しかし、理解の先にある感情をも揺り動かすならそれは本物の美しさであると思う。そして、彼女の言葉にはそ

          ただ、夏だけは本物である

          とある詩人のTさんへ

          すごく怖い人です、あなたは。 けれど、とても好きでちまちまツイートを眺めては偏食気味な信仰を強めていくばかりです。私はそう思っていますが、あなたは「なんで私はこんな人に好かれてるの」と思っているんじゃないかなと考えています。もしくは、私の存在をとっくに忘れてしまったかもしれない。でも、ツイートから溢れる教養とか、サブカルに喧嘩売ってそうな姿勢とか、純粋な美しさには容易く傾倒してしまっていることとか、聡明な女の子が好きなこととか、喫茶店で簡単に好きを語っちゃうこととか、それから

          とある詩人のTさんへ

          月曜、真昼を飛ばして行く

          友人をご飯に誘った。GWで学校もないため、ランチタイムにコスパ最強のからあげ定食を提供してくれる居酒屋の前で待ち合わせることにした。そのメールを送ったのが土曜の夜で、時間を決めたのが月曜の朝。僕は時間を打ち込んで二度寝の海に飛び込んでしまったきり、なかなか浮上できなかった。息を吸えたのが待ち合わせ時間の五分前で、三秒心の中で悟って、五秒謝り、メールで「十分ぐらい遅れる。ほんまに申し訳ない」と送った。顔を洗って、歯を磨いて、服を着て、それを三分でこなす。水を飲んで、ヘルメットを

          月曜、真昼を飛ばして行く