
「からだを売る」
「なんで風俗なんてやってるの?」
悪夢のような時間が終わり、
穢れきった身体を洗っていると、
同じく穢らわしく薄汚い中年男の声が聞こえる。
「死ね」と心で呟いた。
この仕事を始めてもう数年経つ。
客層は様々だ。
心まで醜悪な凡夫や、
自分のような若い男が来て嬉しいだろうと
傲慢な態度を取る学生。
社会の塵芥を煮詰めたような人間ばかりだった。
彼らは一様に、なぜ今の仕事をしたのかを
聞きたがる。
仮に、「借金があるから」
「親の介護で金が足りないから」
嘯いたところで、彼らは一様に他の仕事を
薦めるくせに一銭も支払ってくれたことはない。
自らの性欲を発散させた後、先程の憐憫など素振りも見せず、何事も無かったように帰っていく。
愚劣な質問をしてきた男も、交通事故で死んだ
父の遺産全てを、新興宗教へ寄付した挙句、
借金まで作って私に肩代わりさせた母も。
そんな奴等に人生を壊された私も、
全部、誰かが殺して欲しい。