伊香保旅行記 2022/8
憧れの伊香保
ロバート・ブルームという画家を知っているでしょうか。
彼が1890年代に日本を訪れた時に見た光景を描いた『飴屋』という作品を初めて見た時、当時の息遣いを感じる筆致に感動しました。
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この絵は一部、彼が伊香保で目にした景色をもとに描いたと言われています。
googleで調べると、明治期伊香保の石段街の興味を唆る写真も出てきます。コロナでそれほど遠くに行く気にもなれなかったので、この絵と写真の情緒的な温泉街を勝手にイメージして、先日伊香保に行ってきました。
結論:リサーチ不足
アクセス
東京駅から上越新幹線で高崎へ1時間ほど。
高崎から渋川駅へ在来線で30分ほど。
渋川駅から伊香保温泉まで、駅前の関越交通バスで30分ほどでしょうか。
行きは高崎で30分ほど待ちましたが、思いのほかスムーズに石段街付近まで到着しました。
※渋川〜高崎間の電車は1時間に一本の時間帯もあるので注意。上野、大宮との間では特急草津号も走っています。
渋川駅のバス停は改札出てすぐに案内があるので、迷うことはないでしょう。
伊香保温泉付近のバス停は複数あり、
石段街に一番近いのは終点「伊香保温泉」でした。バス停からすぐ、上州の山々の雄大な姿が広がっています。
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廃墟街
流石に明治の木造家屋が残っているとは思っていませんでしたが、なんとなく草津的な温泉街の小規模版を想像しながら石段街の方へ行くと…
廃墟だ!
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スナック?タイ語?
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こんな大小の廃墟が残っているとは驚きでした。
しかもスナックのキャラが濃い。
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伊香保は明治を求めて行くところではなく、昭和を求めて行くところでした。
廃墟好きにはたまらないでしょう。
それにしてもなんだか予想外の雰囲気を感じて調べてみると、2000年代は外国系スナックが大量にあり、タイから騙されて連れてこられた女性が強制売春させられていたことが発覚したこともあって大量摘発されたそう。
ネットの記事やブログを見ると、まだそういうところも残っているみたいですが……歌舞伎町や2丁目の中を通ることはあるにせよ触れずに育ってきた自分。無知を反省します。
そもそも江戸から飯盛女という人々がいたように、昭和の温泉街といえば風俗・歓楽街だったみたいですが、時も令和とはいえ平成生まれの自分は浄化された温泉街しか知らなかったのでした。なんなら射的場が何軒もある温泉街も知らず、昭和の空気を感じます。渋川駅からの道中、思ったより建物が多い。世田谷の一部より多いと思っていましたが、そちらに現役のストリップ劇場もあるらしい。
賑わう石段街
ストリップはともかく、人身売買…日本の闇を考えつつ石段の方に行くと、大学生や家族づれが多く賑わっていました。石段の光景は明治の写真と似つつ、雰囲気は熱海に若干似ています。ポップな新しい装いの店もあり、廃墟との対比が面白いです。
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夕飯を食べられる店は数軒しかなく、弱気な二十代が入りやすい店は1軒しかなかったので、夕食は宿で食べることをおすすめします。
宿の温泉は確かにいい湯で、普段シャワーしかしない身としては、とても癒されました。だだっ広い和室に布団というのもたまにはいいもの。壁は思ったより薄い。夜中にそういう声が聞こえた気もしましたが、考えすぎでしょう。
和ホラーの舞台になりそう
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自然観光
翌朝、伊香保神社に寄り、読んだことのないイニシャルDのマンホール写真を撮った後、石段を降りてロープウェイの駅へ向かいます。
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石段は300段以上あり、なかなか往復はキツイので、下るルートでの観光を考えました。
ロープウェイの駅はバス停の近くにあり、割とすぐ便が来ます。
大人は往復830円(2022/8時点)。ロープウェイからの眺めも中々よく、展望台に行くのみであれば、トータル1時間かからないくらいなので、おすすめです。
展望台からの眺め
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山の上には森林公園もあるみたいです。誰もいない快適さに散策しかけましたが、クマ出没の看板を見つけ、ビビって家族づれを追いかけ、引き返しました。
ロープウェイ降りたところで警告しないと、手遅れにならないだろうか。
歴史観光
石段街の下の方には、個人的な歴史観光スポットが3つあります。
関所徳冨蘆花記念文学館、ハワイ王国公使別邸です。
関所は復元らしく、火縄銃や甲冑、文書の原本・コピーが展示されていました。甲冑、特にキャプションなかったけど、いつの時代なんだろう。
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徳冨蘆花記念文学館は、蘆花の生涯についての展示を見たり、蘆花が亡くなった家の中を歩けます。関所のすぐ近くの大きな旅館が蘆花を世話したらしく、蘆花を幼年期に見たお爺さんが話しているVTRを最初に視聴します。慶応の主治医の反対を振り切って伊香保に来たり、伊香保愛が凄かったらしい。展示は、蘇峰との微妙な関係、妻の寛容さ、キリスト教との関係が面白かったです。気弱、内向的で幼稚、癇癪持ち。胸に刺さる辛口のキャプションです。
蘆花終焉の家は補修されているのか綺麗でしたが、当時の写真そのままの構造が残っているようでした。どことなく生活感があり、このまま親戚の集いが始まるような雰囲気もありました。
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個人的に一番面白かったのは、ハワイ王国公使別邸です。
ハワイ王国公使とは、ベンジャミン・フランクリン直系の子孫、ロバート・アルウィンです。ここで展示を見るまで全く名前を知らなかったのですが、ハワイへの移民を推進し、日本で公に認められた、初のアメリカ人と日本人の国際結婚をしています。伊香保を愛してこの別邸を建て、娘が日曜学校を開き、その縁で伊香保ではハワイアン・フェスティバルがあるそう。
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別邸の隣には小さな博物館があり、アルウィン家由来の家具や手紙、移民に関する資料が展示されています。移民の雇用契約内容が思ったより詳細にちゃんと書かれており、日英の文に違いがなさそう。ハワイ王国との関係など気になるところもありましたが、そもそもアルウィンを知らなかった人間としては、とても面白い展示でした。キャプションも日英両方あった。
総括:関所に解説が欲しい
この後、石段街から離れて、竹久夢二記念館に行きました。数多くの夢二作品が見られるので、ファンの方にはおすすめです。
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個人的には、関東大震災発生時の夢二のスクラップやスケッチが興味深かったです。当時の新聞の一面、都民としては他人事に思えないですね…。
まとめ:伊香保へいこう
初日はやや来たことを後悔しかけましたが、温泉、廃墟や自然や博物館・美術館と楽しみました。明治と昭和の息づかいを感じに伊香保へ行こう。因みに、伊香保はイニシャルDの聖地らしく、舞台巡りのアプリを入れておけば、関所や石段街でAR写真が撮れます。伊香保は満足したな…と思いましたが、イニシャルDにはまることがもしあれば、それは再訪の時ですね。
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