パパはどこに行ったのかしら
昨晩、姉からスマホに電話が。いつもはLINEでのやりとりなのに、これは緊急に違いない。すぐに母のことが脳裏に浮かぶ。
「どうした?」
「ママが変になって。あの遺骨はパパの骨ではないって、また言っているの。しまいには怒って手がつけられない」
母は以前から父の遺骨は父のものではない、という主張を繰りかえしてきた。僕はネットでいろいろ調べ、葬儀会社、火葬場に電話で確認をした。火葬場は火葬の日の記録を調べてくれ「間違ってはいません」との返事だった。僕も姉も取り間違えるなんてことはありえない、と思いつつ、それでも調べてみないと母の気持ちもおさまらないだろう…という考えだった。
それから半年近く。母はまだ納得していないのだった。
「あの時、火葬場でおかしいと係の人に言わなかった私がバカだった」
「パパはあんな細い骨じゃない」
「だいたい人のカタチで骨が残っていなかった」
「パパはどこに行ったのかしら」
泣きながら、同時に怒りながら、ベッド代わりに使っているソファに蹲る。抱き寄せても拒まれ、あなたは自分の家に帰りなさい、と。
母の中ではまだ父は死んでいないのだろう。父の生前、認知症が進んだ父への自分の関わり方、振る舞いを悔やんでいるのかもしれない。
今、僕らはどうしたら、この苦しみに向き合えるのだろうか。母のドリーミングに合流できるだろうか。
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