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今日も暑くなりますね

7月最後の日曜日、朝9時半。真昼ほどではないにしろすでに夏の太陽はその本領を発揮しようとしていました。僕は午前中は図書館で過ごそうと自転車でやってきました。
ここのところ仕事をこなせどこなせど終わらず、次から次へとやってくる催促のようなものに疲れ果てています。それだけならまだしもどの仕事の結果も満足できるものではなく、著しく自信が低下していました。このまま働いていて誰かの役に立てるのだろうか、むしろ妨害しているのではないだろうか、だとしたらこれからどう生きていけばいいのだろうか…。
またあの鬱症状が密かに近づいてきているようで今にも崖から転げ落ちそうなところにいる気分です。それでも今日も仕事を何もしないのは危険だと思って図書館に来たのでした。

駐輪場には整理係の男性が──、長袖長ズボンの作業服、野球帽とマスク、そして首にはタオルという出で立ちでいました。熱中症の危険が叫ばれる昨今の夏、外で自転車を整理するという仕事は並大抵のことではないな…と思います。

公共の駐輪場での整理係の方はもうかなり昔からいます。その多くは高齢の男性のようです。これはあくまでも僕の体験と印象ですが一様に表情が硬く感じられ、時には少し強い口調で利用者に指示をしたり、あるいは係員同士で命令口調で指示をしていたりという姿を見ていて、僕は駐輪場に停めるとき少し身構えてしまいます。

今朝、駐輪場に入ったとき、係の方はややランダムに置かれた自転車を一台一台少しずつ移動して間隔を詰めて整理しているところでした。僕がその最後尾と思われるところの手前まで行くとその方と目が合いました。帽子とマスクをのせいか、あまり表情はなく、印象としてはどちらかというと(やはり)ちょっと厳しさを感じました。正直に言うと、僕は心の中であまり関わりたくない気持ちがあったと思います。
その方は僕を見て手振りで「どうぞ」と停める場所へ誘導してくれたのですが、その仕草にはどことなく柔らかさを感じさせる動きがありました。そして、僕がタイヤにチェーン鍵をかけていると背中から「今日も暑くなりますね」と声が。鍵をかけ終えた僕は身体を起こしながら「もう既に暑いですよ」と返し、また目が合ったところで「嫌になっちゃいますね」と。
お互い苦笑いに近いような笑みを浮かべ、そこで僕は「失礼します」と立ち去りました。

駐輪場から図書館の入り口に向かう途中、僕は自分の気分が少し良くなっていることに気づきました。それは、いうまでもなく係の方とのちょっとした会話でした。あの方が僕に声をかけてくれ、僕はそれに応えた。その内容はとるにたらないものです。でも確実に僕の一日にさわやかな影響を与えてくれたのでした。

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