第2話 電気椅子 前編
セット強制キャンセル事件から数ヵ月後、私たちは頻繁にセットをするようになっていた。
主な面子は、かもしんさん(第1話で参加表明してくれた)、あっさじーんさん、私の三人だ。
セットは四人麻雀ではなく三麻、しかも東天紅が多かった。
「東天紅」という名は麻雀打ちなら誰でも聞いたことがあるだろう。リーチ、メンゼン、バンバン・・・、のように役だけを数える。
要は、符計算ができないお猿さんでもわかる麻雀風ゲームである。我々にはぴったりだ。
アガったときの平均点数は15点程度。積載量は1点につき20気持ちポイントほどで行なっていた。
70気持ちポイントで、だいたいガリガリ君を1本もらったくらいのお気持ちである。だいたいそういうこと。
この日のセットは特殊ルールを採用した。それは「白マイティ」である。
白マイティとは、四枚入っている白を常時オールマイティ牌として使用できるトンデモルールなのだが、慣れてくるとコレがやたら面白い。
なんと言ってもすぐにテンパイするし、すぐにアガれる。四人麻雀みたいに「あ~今日の晩ごはんなに食べようかな~」なんて考える暇は生まれない。
一局清算システムで、これを気が狂うか気持ちポイントが弾けるまで延々と続ける。
特にあっさじーんさんはこの白マイティにハマった。彼だけは最初から狂いながらどハマりしていた。
「あさじんさんどうですか?四麻とは違うけど、なかなか面白いでしょう?」
彼は答えない。血眼になって手牌に集中している。よっぽど楽しいんだな。
彼はツモる前に数十秒単位で長考することがたびたびあった。アレが来たらコレを切る、などと先々のことを考えているのだろう。
私は暇すぎて「あ~今日の晩ごはんなに食べようかな~」などと考えていた。
「あさじんさん、楽しんでくれるのは嬉しいんだけど、できたら悩む前にツモってほしいな」
私はそう言って手を伸ばし、ツモ牌を彼の手元に置いてあげた。介護士なのだからこれくらい当然だよね。
「おおっっ!!!!????」
どうやらマイティ牌をツモったらしい。
「ええっ?!?!おおっっ??!!」
痙攣しだした。テンパイだ。
かもしんさんは椅子から転げ落ちそうな勢いで爆笑している。
私はグリーンマイルのジョン・コーフィを思い出して涙が止まらなかった・・・。
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【 第3話 電気椅子 中編 】