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仲が良いね、とか言われ


割と言われて来た。社交辞令かもしれない。

わたしたちは、いつもその言葉がピンと来ないのですほろほろ。



1.何をいつもそんなに話しているのか不思議よ?


シニア向けマンションの1階には大浴場があって、女子たちはそこで情報交換してる。

脱衣所で、いつも親切にしてくれるおばあさんがかのじょに話した。

「玄関のドアのしまりが悪いの」。

1階のコンシェルジュが何でも相談に乗ってくれるので、おばあさんは”相談”しに行った。

コンシェルの中には、つっけんどんな職員もいる。

いいえ、そんなはずありません!と開口一番に言われてしまったそうだ。

各部屋は玄関ドアからなにから何まで24時間監視していますっ。開きっぱなしなら、とうにアラームがなってるはずです!

でも、実際、ドアの締まりが悪いのだ。


コンシェルジュは諭すばかりだった。段々と、おばあさんはコンシェルに叱られてるような気になっていったという。

「わたしがコンシェルなら、そうですか、後で見に行かせますで終わりにしちゃうけどなぁ。

監視システムのことなんかウダウダ言うなんてしないです。何が正しいかなんていう話、面倒だもの。」

とかのじょはおばあさんに言い、付け加えた。

「きっと彼なら激怒しますよ。

ほんとに閉まらないのかどうかなんて議論するなっ、先ず相談に乗るというのが本来だろ、コンシェルの仕事だろ!って」


「ええー、そんな激しい旦那さんなの?

大人しそうだし、ほら、いつ見かけても二人でよく話してるじゃない?」

「いえ、これは違うってなったら、彼、激怒します」。

(いや、そんなほんとのことを、、他人様にばらさんでもよかろうに・・)


「そうなの?わたし、ほんとに不思議なのよ。いつも何話してるのかなって思ってたの。

そんなに二人で話すことってあるのかしらって。」


80過ぎのおばあさんの旦那さんはもう亡くなっているけど、夫婦で話すってなかったという。

おばあさん、続けた。

「わたしが、何か言うじゃない。そしたら夫は返事もしなかったわ。

聞いているのか、関心ないのか、無視ね。だから、夫婦ってどこもそうかと思ってたわ。

でも、あなたたちは違ったの。

バスを待ってる時も、バスの中も、スーパーに居る時も、道を散歩してる時も、とにかくあなたたちはずっと二人で何か話してる。

いったい、ふたりで何をそんなに話すことがあろんだろうって、ずーっと不思議だったのよ」。

(おお、、誰も見てないとわたし油断してた)

たしかに、いつもどちらかが口を開いている。いったい、わたしたちは何をそんなに話しているん?



2.あなたのせいなのだ


お風呂から帰って来て、かのじょがそんな話をした。

「何話してるのって、いったい何話してるんだろうね?」と、わたし。

「あなたは、よくわたしに問うわ。もちろん、わたしも何故?と言う。思ったこともすぐに口に出すけど。」


かのじょはADHD気質満載のひと。

27歳の時に初めて見た時から、その集中力はすごい。

でも、集中先以外が完全脱落してしまう様は今も変わらない。

他がおざなりになる。よくポカを仕出かす。ずっと不思議ちゃんのまま。

方やわたしも、何でだろう?と思うと確かめたくなる。むかし、研究職だった。不思議くんのままなのか。

ということで、いつもお互いが相手に何かを聞いている。

何でだろう?どうしてなんだろう?って。

純粋に不思議に思う。なので、ただ聞いている。


聞くには大事な前提がある。

プライドが異常に高くて、かつ傷付き易いこの繊細くんに対して、かのじょは一切、上から目線しないのです。

誰に対しても、決めつけない。バカにもしない。

わたしは、反論されたことも命令も批判も、された覚えがまったく無いのですほろほろ。


例えば、誰かにあなたが相談したとする。アドバイスを受けたとする。

と、そこにはどうしても、わたし教える者、あなた聞く者という上下関係が出来きます。

自分から相談したからって、アドバイスを聞くと聞いた方はどこかが面白く無い。

いわんや、頼まれもしないのに、先生や親や上司から”アドバイス”されたら、面白くない。

かのじょは、出来ないことが山の様にある人だから、アドバイスさえしない。意見はいう。

わたしが頼まれないアドバイスをしたら?

それはあなたの考えね、でも、わたしは違うわというスタンスを貫ける。


話すことは手段でしかない。

おばあさんだって、どういう関係なの?と言いたいのだろう。

でも、それを聞かれても、わたしたちは「普通にそのまま話してます」としか答えられない。

ラブラブ?いえいえ、もう何十年もツガイになってるから、相手は見慣れている。

が、その相手が、いつまでも見慣れない質問をしてくる。ええ”-っていう問いをする。

不思議ちゃんは時々、天から降ろされたように”お告げ”もスラスラのたまう。

ええ”-って、わやしはのけぞる。


わたしは、きっとあなたと話すことが嬉しいのだ。(あなたがわたしをどう思ってるかは分からないけど)

決め付けること無く、いくつになってもあしながおじさんのジュディであり、赤毛のアンであるあなたの魂に触れていたいのだろう。

でも、オノロケではないと思う。

常に少女のままの人。妻となっても母となっても年老いても、まったく変わらなかった人。

世界が期待する役割を演じられないのです。

淡々と自分を見ているので、なり切れない。

そんな稀有(けう)な人って、わたしの好奇心がモリモリしちゃう。

決めつけ激しく、怒ってばかりな男が、女子並みに話好きなのは、あなたのせいだ。



3.わたしは誰と行く?


今朝もお風呂場に行くと、そのおばあさんが他の人と話していた。

あけっぴろげな性格だそうだ。かのじょは聞き耳立てた。で、こんな話をしていたという。

「今日ね、わたしのカレンダーに”ジャズ”って書かれてたの。乗るバスが何時かも書いてある。

確かに、ジャズなら行くって言ったような気はするのね。

でも、誰と行くのかが書いてないの、思い出せないの。いったい、わたしは誰と行くのかしら?」


聞いていた相手が言った。

「でも、まぁ、約束は約束だから、その時間にバス乗り場に行けば分かるんじゃないの?

誘った相手はあなたを見つけて、さあ、行きましょうってなるわよ、きっと。大丈夫よ、心配いらないわ。」


「でも、ほら、バス乗り場にはいろんな知り合いがいるはずなの。

ひとりがわたしに話し掛けて来たとしても、それが今日のお相手じゃないかもしれないわ。

あなた、ジャズに行く?って、いちいちわたしが相手に確認するのもへんじゃない。

そうこうするうちに、また、別な人がきっと挨拶してくるわ。

いかにも、さあ、これから行きましょう、みたいな雰囲気だったらどうしよう。。。」


これを横で聞いてたかのじょは、ぜひ、その続き、後日教えてください!!って思ったそうだ。

で、わたしに付け足した。

「ねっ、お風呂場って面白いわ。わたし、面白い話って大好きっ」

真面目な話しかできないに男に、そう言った。


かのじょはこの世界に「面白いことはないかしら」と探して生きている。

わたしに報告してくれるときは、「あのね、こんな面白い話があったの」と前置きする。

自分の悲しい話だって、笑いながら話す。

笑いを食して生きている。いや、人を傷つけたくないんだろう。

自虐ネタはかのじょの鉄板だ。


わたしは、書く文章のネタばかり探している。

ネタ源の1つであるかのじょの話も興味深く聞く。

ふつうの夫は、聞けば夫のお役が済むから、聞いてるフリぐらいで済ます。

でも、わたしは、そうはいかない。

聞いた話をあなたに伝達しなければならない。

かなり気合が違う。そこらへんの男とは違うっ!

途中で話が分からなくなったら、かのじょに確認するし、補完してくれるよう促す。

可笑しかったら、一緒に笑ってる。続きが出て来るかもしれない。

しろうとなりに、書くってたいへんなんだ。

かのじょはこの世界で面白い話を探し、わたしは有意義な話を探している。

探す人は、求める人だ。

おばあさんの夫は、妻に食事と洗濯以外をもう求めなかったんだろう。



4.ずっと続く前提


何度も触れていますが、ペアが継続するってたった1つの前提があればいいとわたしは思ってる。

好みも興味も何もかもがまったく違っても、ケンカばかりしても、継続する条件ってある。

それは、たった1点、相手に対する尊敬がある、ということでしょう。


外見、知性やお金や健康、そして思いやり、ユーモアを相手が持っていても、続かないのです。

一瞬にして、軽蔑、嫌悪があなたを乗っ取ってしまうから。

有利な条件がフルセット揃っていても、かなり続けられない。やっぱり他人だから。

もし損得勘定で割り切れるなら形式的には続くだろうけど、そこに会話は起こらない。


続くのは、相手を1点でリスペクトしているからだと思う。

この人、ダメダメなんだけど、ほんとに優しいのとか、

どうしようもなく不器用だけど、自分をとことん誤魔化さずに誠実であろうとするとか。

もし、尊敬できる1点があるのなら、そこが担保する。

それは相手があなたに与えてくれるものではないからです。

あなたが相手に信を置くのですから、相手に依存しないモノなのです。


わたしの自慢話のように聞こえたでしょうが、

わたしはかのじょが、わたしに依存しないということで話を締めくくりたい。


出来ないことがいっぱいで、いつもポカばかりしている人です。

目がずれるから文字が読めないし、右手と左手の対応速度がぜんぜん違う。

目の前のことしか集中できない。(ADHDでしょう)

でも、経済的にも精神的にもわたしに依存しようとはしないのです。

わたしに、期待というものをしない。

自分にできることをしている。面白いことを探してはこころ慰めている。

かのじょは、究極、自分が絶対の孤独であることを理解している。

誰かで、あるいは外のモノでその孤独を埋め合わせることはできないと知っている。

わたしたちがラブラブなのでもなく、相性が良かったからでもない。

わたしは身に帯びた孤独を精一杯生きようといつも諦めない人をどうしても尊敬してしまう。

しかも、こうしてネタまで運んでくれる。


P.S.

Upした写真は七五三の孫。かのじょによく似ている。

ということで、彼女もこれから波乱の海を渡るんでしょうねぇ。。


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