早く退院したい
2023/07/22
入院してから1週間が経った。世間的に精神科、というとやはりまだ尻込みするような響きなのだろうか。私の通っている病院では、珍しく未成年者の治療もしているところらしい。確かに通院していて感じたのは、意外に学生服を着ている人が多いということだった。思春期、モラトリアム、という言葉が頭をよぎる。様々な悩みや抱えているものはあるだろう。同時に、親と一緒に通えるのは素晴らしいことだとも思った。私の母は、病院を嫌った。おそらく祖母の影響で、金がかかるからか何なのかわからないが、1つ言えることは世間体を気にしているところだった。はじめて精神科に行って薬をもらって帰ってきたときに母が言った言葉は、「薬をもらうっていうことは、貴女は病気なの!どうして精神科なんか行ったの。」という嘆きの言葉だった。私はその日、主治医と話ができて、薬をもらって安心できたのに。母の嘆きは心配というよりも、私が病気である、ということが嫌で放った言葉だった。
精神科入院は、入院したいといえばすることができた。憲法に定められている法律通り、私達は精神を安定して健やかな生活を送るという権利があるらしい。患者さんは様々な人がいて、私は自分から入院したいといったのに、これじゃ1週間ももたないと思った。なんというか、入院している患者さんたちの言動は、母を思い出した。叫んだり、大きな声で泣いたり、ずっと独り言を呟いている人もいた。それら全てが母の一部であるように思える。
しばらく忘れていた母の姿を私は見た。死にたいと思う余裕もなかった。母だ。母なのである。酒を飲んでいた母。酔っ払ってどこかの誰かに電話して、携帯越しに叫んでいた。ときには大声で泣き、部屋の前の廊下を通ると、泣いている母の声が聞こえたりした。
早く実家に帰りたいと思った。父は、私が正月やら盆やら実家にきて「帰ってきた~」とくつろぐと、毎回、「帰ってきたと思うか。ここが実家だと思うか。」と問うてきた。責めているわけではない。感慨深い、という感じである。でも思う。小学3年生にランドセル一つ背負って出ていった実家だ。父が一人で住んでいる家は、私の実家だ。今は長姉家の猫が居候中で、この子がまたかわいい。次姉家のウーパールーパーとこえびたちも居候中だ。退院したらその子たちに会えることが楽しみである。早く退院したい。帰りたい。そう思いながら、1週間が過ぎた。