言葉、織物


三浦しをんさん作『舟を編む』を読み終わった。どうやらこの作品は映画化や漫画化もしていて、かなり有名な作品らしかった。知っている人からはなぜ今更!?と言う声があったが、本に今更とかないから。そういう派閥に所属している。古事記とかも授業中にやるでしょ、あれと一緒です。古典とか言うけど、好きな人は好きだし、研究している人にとっては今更とかじゃないから。
いきなりのネタバレで恐縮だが、題名の「舟」とは、辞典のことを指している。また、「編む」とは編集から来ている言葉ではないかと思っている。そこは辞書を使えよという話ではあるが。作中で、「辞書は言葉の海を渡る舟だ」という発言があるとおり、辞書づくりの話だ。
結論から言うと、今読んで良かったと思える作品である。図書館から借りてきてもらったのだが、どうしても手に入れたいため、退院したら購入したい。この本が発行されたのは2011年だから、私が小学6年生のときに出版された本だ。そのときにイキって読まなくてよかったなと思う。
また、作中での言葉が持つ魅力が述べられている場面では、私も似たような感情を覚えたこともあった。高校の頃に放送部に所属しており、その頃に言葉が持つ力にひどく惹かれたことがある。同じ意味でも、言い方一つで全然違う伝え方になるし、ニュアンスも変わる。私はアナウンス部門に出場していたため、自分の足で取材に行き、原稿を完成させ、大会ではその原稿を自分の声で伝えるという活動をしていた。何が一番大変だったかと考えると、やはり原稿作りだった。伝えたいことは大まかに決まっていて、「こういうことを言いたい!」のはある程度ある。しかし、それを伝えるための語彙を知らない。辞書やインターネットを駆使し、先生たちに聞いて回ったことが懐かしい。そのことを一気に思い出させるような場面であった。大変だけど、そこが楽しい。言葉の魔力に取り憑かれていた時期かもしれない。
今でも、そういうときはたまにある。私の仲のいい友人が授業中に言葉を発するとき、私はいつもドキドキする。ドキドキ、というと妖しい感じがするが、その友人の使う言葉や語彙が魅力的で、私の中には無い言い回しをする。思わず本人に言ったこともあるくらいである。
『舟を編む』は、そんなことを思い出させてくれた本である。私も今後も、言葉を紡いで行きたい。さながら海の中を泳ぐ魚になりたい。

いいなと思ったら応援しよう!