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IVEの『Supernova Love』|炎上に反論したり共感したり

恥を偲んで告白すると、
私は『Supernova Love』のMVを最初に見たとき、

(あれ…聞いたことある、これ。)

(絶対に聞いたことある…)

と思いながらも気づかなかった。
後ろで見ていた母が、

「これ、あれやん。坂本龍一の、あれやん」

と言うので、
「あ、あれや! あれ何だっけ…!」

「「戦場のメリークリスマス!!」」

やっと思い出し声を揃えて叫んだ。

私の無教養をお詫びしたい。

その後、Xでこれが炎上していることを知った。


炎上への反論①「安っぽいラブソングにするな」だと!?

まず安っぽいラブソングで何がいけないんですか?

戦争の曲だというけど、
戦場のメリークリスマスは、
確かに舞台は戦争だが、
描かれていたのは人間と愛のはずだ。

歌詞をつけたらラブソングになるだろ、そりゃ。
戦争を舞台とした映画の歌だからって、
歌詞に「いくさばの〜」とか入れる方がおかしいからな。
戦争の歌ってなんだよそれ、軍歌かよ。

むしろ、シンプルな歌詞のラブソングにしてくれて良かったと思うよ。
ゴテゴテと濃い内容を載せられたらそっちの方が嫌でしょ。

炎上への反論②ナショナリズムに利用していい曲じゃないだろ?

坂本龍一が「日本の宝」だから、
それを韓国アイドルのものされて腹が立つとか、

映画が戦争を舞台にしているからといって、
「日本と韓国は戦争で和解してないのに」
「歴史問題で和解していない韓国が日本の戦争の歌を使うなんて」
しまいには
「日本軍に文句言ってる韓国が〜」
とか言い出す人が散見される。
あのね、
戦場のメリークリスマス見てないでしょ絶対。

あれは日本軍の軍人と、
敵国であるイギリスの捕虜の愛の物語なんだよ。

ナショナリズムに利用する方がよほど、リスペクトに欠けてると思うよ。

炎上への反論③生前サンプリングを許可しなかったなんてことはない

「坂本龍一は生前サンプリングを許可していなかったのに、死後に飛びついてサンプリングするなんて倫理に外れている!」

まず生前サンプリングを許可していなかったということはない。
むしろ坂本龍一はサンプリングしまくるし、
そういうの寛大なタイプ。

デマを流すのもデマを信じるのもやめよう。

ただ、いくら寛大とはいえ、
許可は取らないといけない。

死後なので本人に許可は取れないし、
死後すぐに出たというのはちょっと感じが悪い。

しかしそういうことはよくある。

生前、どんなにアレンジやリミックスを拒否していた作曲家でも、
死んだら容赦なくアレンジされるし、
勝手に歌詞をつけられる。

坂本さんは生前、そういうことに厳格なほうではなかった。
分かることはそれだけだ。

炎上への共感①「なんか違う」よな、分かるよ。

気に食わないのは歌詞や曲の出来じゃないだろ。
あれだろ、なんか。
なんかちがうんだよな。
わかるよ。
なんかちがうよな〜。

戦場のメリークリスマスといえばやっぱりさ。
おごそかなピアノとヴァイオリンのイメージよ。
しっとりした、切ない、泣きそうになる雰囲気よ。

ってまあ、最初戦メリの旋律だって気づかなかった私が何言っても無駄だけどさ。

もうちょっとなんか、あるだろ?
上手くやってほしかったよな〜

炎上への共感②有名な曲を選ぶのはダサい


こういうのはもっと無名の曲を選んだ方が皆に受け入れられるんじゃないかな?
坂本龍一の曲の中でも、日本の一般大衆が知らないような曲だったら、歓迎されたんじゃないかな。

アレンジするならやっぱり、
「無名だけどキラリと光るもの」
をキラキラに磨き上げて出してほしいわけよ。

すでにバチバチに光っているものをアレンジしても、それは乗っかっているだけなのよ。
これはデヴィッド・ゲッタって人の怠慢じゃないかな?

私は音楽に疎いから知らないけど、めちゃくちゃ有名な人らしい。
だったらもっと腕を見せつけてくれよ、なあ。
超有名な曲を使ってサンプリングはダサいって。

要するに、この曲を聴いて抱くマイナスな感情の正体は、
「なんかちげえ」
「なんかダセエ」
みたいな、倫理で説明できない感情なのだ。

それでもみんな「なんかイヤ!!」じゃなくて、
どうにか正当な批判みたいな形を取りたいから、
無理やり論理をこねくり回して、「批判」しているとしか思えない。

実際は倫理に外れているわけではなく、ただオモンナイなだけ。

炎上への共感③MVに坂本龍一の名前がなかった

「MVにクレジットがないとはどういうことだ!!」
「世界にこの曲が坂本龍一の曲ではなくIVEの曲として広まってしまうじゃないか!!」

これは、さすがに分かるかも。
もうちょっと坂本龍一の名前を前面に出してほしかったよね。
音源のクレジットに名前が入っているのは知ってるけど、皆はそこまで見ないからさ。

MVだけ見てたら、最後の方に出てくるこのおじさんが全部作ったみたいじゃん。

デヴィット・ゲッタさん

せめてMVの最後に
「坂本龍一さんを追悼して」
とか一言、入れてくれるだけでも違ったんじゃないかな。

私は原曲者、原作者をとことんリスペクトしてほしい派だから、
これはちょっといただけなかったかな。
(炎上後、クレジットに名前が追加されたらしいけど)

でもK-POPっていつもそうじゃん。
作曲家のことなんか皆、気にしないじゃん。
(そもそも共同制作が多いってこともあるだろうけど)
いつもはパクリ上等って感じじゃん。
大衆が制作サイドの人間にあまりリスペクトがないことに、いつもイライラしてきた身としては、
なんで今更、クリエイターのことを気にして大騒ぎするのか分からない。
坂本龍一が有名人だから?
坂本龍一が日本人だから?
坂本龍一が有名で、日本人で、「国民の誇り」だから?
しょうもないなあ。

いつもそれくらいの熱量で、クリエイター陣をリスペクトしろって大騒ぎしてほしいものですわ。

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