シュファの言葉に思うこと
雑誌『marie claire』の台湾版『美麗佳人』に載せられた、シュファのインタビュー記事が話題だ。
原文は中国語(台湾華語)なので、下に日本語訳を載せました。
※太字がシュファの言葉で、それ以外は全て記者の言葉であることに注意してください。
7年という歳月は、一人の人生を変えることができ、また一つのグループを変容させ再生させることもできます。もし「感情」が波動だとすれば、シュファにとって、感情は一時的な波ではなく、日常生活に潜む微細な変化です。この競争の激しいアイドル業界で、シュファは感情をコントロールすることを学びました。外界がどんなに波立とうとも、彼女はいつも微笑みで乗り越え、感情を静かに収め、自分のリズムの中に溶け込ませています。そして、彼女の正義感、強靭さ、透明感は、彼女を美しく、比類のない存在にしています。
ふと気がつくと心の片隅に触れる一曲はありませんか?それは密かにしまっておいた思い出なのか、それともずっとなりたかった自分なのか?第2世代のグループから韓流に夢中になったベテランファンとして、私はMZ世代の才能あふれる波の中で、ファンとアイドルの関係について何度も考えています。かつて、アイドルは手の届かない理想であり、舞台の上に伝説のように高くかかげられていました。今では、アイドルはもはや「手の届かない目標」ではなく、舞台やSNSを通じて交流でき、感じ取ることのできる具体的な存在となっています。
初心にせよ、情熱にせよ、日々の生活の中で忘れられやすいものです。私たちは、自分がどれほどこのことが好きだったのかを忘れてしまうかもしれません。しかし、感覚は消えても、記憶は常にそこにあり、ある瞬間に刺激されると、その感覚はすぐに呼び覚まされるのです。
2024年末、(G)I-DLEは大型授賞式の舞台に連続して登場しました。Melon Music Award(通称MMA)の授賞式で、メンバーたちは丹念に構成されたソロパフォーマンスのメドレーを通じて、彼女たちの7年の道のりに注釈を加えました。「2024年を振り返って、最も印象に残っているのはMMAのステージです。それは私たちのデビュー7年間の成長を映し出すものでした。結局は私たちの作品で、一生の思い出として残るものなので、メンバーそれぞれが多くの意見を出し合い、PDも真摯に耳を傾けて企画してくれました。」
シュファの口調は落ち着いていますが、作品完成後の満足感は隠しきれません。その夜、彼女たちは涙と抱擁の中で「Record of the year」大賞を獲得し、音楽とステージで自分たちを証明し、7年間の奮闘の結晶と未来の無限の可能性を実証しました。
そして年末の大型ステージと言えば、2024 MAMA Awards(通称MAMA)で(G)I-DLEが100人のダンスチームを率いて世界を震撼させたことも忘れられません。ステージ上で光を放つ彼女たちは注目の的でしたが、ステージ裏の話も同様に面白く、シュファは少し子供っぽい調子で興味深いエピソードを共有してくれました:
「私たちは蛍光グリーンの衣装を着て、暗い会場で特に目立っていました。ステージ前に、他のアイドルの友達たちがチャットルームで『あれ、光っている人たちの集団がいるけど、誰?』って聞いてきて。私たちは言えなくて、『私たちも分からないよ~』って知らんふりをしました。」
「アイドルとして、この職業をどのように見ていますか?この言葉をどのように定義しますか?」
シュファは少し考えて、落ち着いた口調で答えます:
「アイドルとファンは、お互いを理解し合う関係であるべきだと思います。」
彼女は言葉の一つ一つが空気の中にはっきりと落ちていくように、ゆっくりと話を続けます:
「アイドルの現実はパッケージされたものであり、誰もが自分のキャラクターを持っています。スクリーンの前の姿を見ても、プライベートでは必ず違う一面があることを理解しなければなりません。しかし同時に、アイドルとファンの関係は運命的な導きのようなものです。大海の中で、あなたがその人の中に好きな特質を見出し、自然と引き寄せられる。暗闇の中で、私たちはお互いを見つけ合うのです。」
「好き」という気持ちは、それぞれが人の海の中で拾い上げた小石のようなものです。最初はその輝きに惹かれますが、本当の重みと質感は、手のひらに載せてじっくりと感じ取ってはじめて理解できるのです。誰かのファンになることも一つの選択です。この繋がりを持った以上、スクリーンの前の輝きは、無数の磨き上げを経て私たちの前に現れたものだと理解し、私たちが目にするのは、往々にしてその最も眩しい光なのだと知るべきです。
20代のアイドルの口から出たこのような言葉は、やや成熟しすぎているように見えるかもしれませんが、それだけに一層誠実さが感じられます。彼女の口調は高圧的な説教ではなく、むしろ同世代の友人が自然な形で、これまでの道のりで得た気づきを共有しているかのようです。
「だから理性的なファン活動が重要で、アイドルを人生のすべてにしないでください。最高の関係とは、お互いを理解し、尊重し合うことです。」
アイドルはファンにとって、疲れた生活の中の一筋の光のような存在です。メロディとリズムで乱れた魂を癒し、心の中の希望を灯し、より良い自分へと励ましてくれます。そして私たちの間の最も美しい距離とは、おそらく人の海の中で静かにあなたを愛することなのかもしれません。
アイドルとして、シュファは自分の感情や生活の細々としたことをファンと共有することにすでに慣れていますが、実際にはこの関係の中で、彼女もまた受け手の一人です。四方八方から寄せられる愛と反応を受け取る存在なのです。ファンサイン会は、彼女が特に感動を覚える瞬間です。
「世界各地からのネボボ(ファン)が、私たちに会うために特別に飛んできてくれて、この旅がどれほど大変なことか分かっています。サイン会の時間は限られているので、私たちの前に来ると、準備してきたものを見せたくて急いでしまいます。言葉の壁があっても、一生懸命韓国語のメモをたくさん書いて、韓国語で気持ちを伝え、励ましの言葉をくれます。実は、私たちに会いに来てくれただけでも感動なのに、こんなに心を込めて話しかけてくれて、本当に感謝しています。」
しかし、この関係は感動だけではありません。時には言葉では表現しがたい「後遺症」が隠されていることもあります。私が、アイドルに会った後に空虚感や消耗感を感じるファンがいると聞いたことがあるか尋ねると、シュファは少し驚いた様子を見せた後、自分の考えを共有してくれました:
「実はコンサートだけでなく、以前の私も、達成感のある何かを成し遂げた後には、そういう空虚感を感じていました。でも後になって理解したのは、それは幸せの頂点に達したからこそ、感情に自然と落差が生まれるということです。」
彼女はさらに、深く心に響いた言葉を引用します:
「あなたは今持っているものすべてに感謝しない限り、永遠に満足することはないでしょう。」
幸せの幕引きは消え去ることではなく、こう教えてくれているのです:
「知足常楽※、この瞬間で十分だと。アイドルにとって、ファンもまた別の光なのではないでしょうか?一つ一つの優しい反響、輝かしい瞬間の一つ一つが、ファンと共に残した輝く足跡なのです。」
※知足常楽:中国の古い格言。足るを知る心があれば(現状に満足できれば)、常に楽しく楽に生きられるという意味。
7年の旅路の中で、ファンの支えはシュファの強い後ろ盾となり、メンバーたちは彼女の最も親密なパートナーとなりました。
「私たちはすでに友人や家族を超えた関係です。私たちは戦友であり、一つの体なのです」
時間の経過とともに、メンバー間の暗黙の了解も徐々に昇華していきました。
「誰にでも敏感になる時があります。メンバーがプレッシャーを感じているのを察したら、紙にハートを描いて渡します。すると相手は面白がって笑い出して、心が少しリラックスするんです。」
このような繊細な気遣いは、シュファが愛情を表現する方法であり、彼女たちの間の無言の了解事項でもあります。
2025年が静かに訪れる中、シュファの視線はすでにステージを超えて、未来への期待と野心に満ちています。演技という新しい分野について、シュファは自身の願望を隠すことなく語ります:
「今年は演技にも挑戦して、自分の年齢に合った役柄に挑戦したいです。」
ホラー映画であれ、恋愛ドラマや学園ドラマであれ、彼女はすべての挑戦を受け入れる準備ができています。音楽については、さらなる高みを目指したいと考えています:
「音楽面でさらなる成果が出せたら素晴らしいですね!」
キャリア以外にも、シュファは自身の生活における小さな目標も設定しています:
「水泳を習得し、健康を維持すること」というこの決意は、彼女が毎日を新たに始める原動力となり、新年に無限の可能性をもたらしています。
記事は以上です。
シュファの言葉の中で、
もしかしたら勇気が必要だったかもしれない言葉は、
アイドルの現実はパッケージされたものであり、誰もが自分のキャラクターを持っています。スクリーンの前の姿を見ても、プライベートでは必ず違う一面があることを理解しなければならない。
理性的なファン活動が重要で、アイドルを人生のすべてにしないでください
というあたりだろうか。
とはいっても、これらの言葉は、
アイドルの言葉としては少々、異例でも、
これまでの(G)I-DLEとシュファを追ってきた人には、
「シュファらしい言葉」として
特に驚きもなく、静かな感動とともに受け入れられたと思う。
「私はアイドルである前に一人の人間だ」
というシュファの考えは
これまで何度も、繰り返し語られてきたものだから。
それでも私は、
このシュファの言葉に一言でいえば感激した。
それは、
シュファがどれだけファンを愛しているか
ということが伝わってきたから。
もちろんこれらの言葉が、
「あまりこっちばかり見るなよ」
という突き放しの言葉であると解釈することは可能だ。でも、
そういう言葉ではないとシュファを知っている人なら分かると思う。
シュファは元から、自分の考えをしっかり持っている人だから、
今更そんな話をする必要もないけど、
でも、アイドル業界で「自分を貫く」ことが、
どれだけ大変であるかは想像に難くないし、
楽に生きる道をとるなら
自分の考えを捨てるか、
ファンや大衆に心を鎖ざし、
自分の考えを隠しておくほうが得策だ。
シュファは去年7月に(事実無根の)熱愛報道が出たとき、Instagramのストーリーにこのような文章を投稿した。
「人生はときに困難だ。評判は常に外部から与えられる。ただ、私は一人の人間だということを忘れるな。
あなたの価値は貴重で本物だ。さまざまな声の奴隷になる必要はない。私たちは、人生という道をただ通り過ぎる存在にすぎない。
最後には何も持っていけない。人生は限られている。全ての愛と優しさに感謝する。悪意をもって邪魔をしないで。」
このときはシュファが
体調不良で休止していた直後だったこともあって、
なんだかちょっと心配したりもした。
(もちろん余計なお世話だとは思うけど。)
というのも、
シュファが自分の考えがしっかりあるために、
それがシュファ自身をかえって苦しめることになるのではないか、という気がした。
それでも再契約を経て、
今回のインタビュー記事を読んで、
シュファの考えや意思が、
アイドルであるシュファを攻撃することなく、
アイドルという職業、
ファンとの関係を肯定するものとして、
シュファの人生を安全に守ってくれるものだと分かった。
シュファは、
「アイドルとしての自分は、
人間としての自分の全てではない」
という事実を明確に示しながら、
というより、示すことで、
ファンに対してどこまでも正直であろうとしてくれているのだ。
人気や名声のためだけなら、
ひたすら「パッケージ」を演じることもできる。
あえて種明かしをすること。
「アイドルを人生の全てにしないでください」と明言すること。
それは、時として熱狂的なファンに淋しい気持ちを抱かせることかもしれないが、
シュファはその淋しさに付け込むことより、
ファンとの関係が破綻しないことを選びつづけた。
それがシュファの誠実さであり、勇気であり、
アイドルとしてファンに示せる、
これ以上ない「愛」であると感じる。